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神宮前ストリート・バケーション#1 ホームレス・ソルジャー

 
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東京は路地と廃墟と騒ぎと笑いと涙と痛みと怒りの街だ。


渋谷道玄坂から神宮前へ。まともには行かない。路地があれば侵入する。廃墟があれば対峙する。騒ぎがあれば見物するか騒ぎに加わってさらに騒ぎを大きくする。笑っている者がいればいっしょに笑う。歌っている者がいればいっしょに歌う。食べている者がいればすぐ横で指をくわえるか涎を垂らすか分け前を要求するか横取りする。泣いている者がいればいっしょに泣くか涙をぬぐってやるかさらに泣かせるかする。痛みに顔を歪めている者がいれば介抱するか塩を塗りこむかさらに抉るかする。怒っている者がいれば怒りの理由をたずねてみるか理由などおかまいなしにさらに怒らせる。それが吾輩の神宮前ストリート・バケーションだ。

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宮下公園下をくぐり、明治通りに出る。野武士のごとき御面相のホームレス・ソルジャーに一瞥をくれてやる。腹のすわったいい面構えだ。テリトリーを示すのでもあるのか、膨大雑多な物件が植え込みに並べてある。中に真新しいキャップやスヌークなどのストリート系ものがいくつかある。黒地に白い刺繍で「STREET4LIFE」と縫いこまれたキャップを手に取る。ホームレス・ソルジャーがぎろりと吾輩を睨む。

「触るな」
「触られたくなけりゃ隠しとけ」
「ふん。おもしろそうな野郎だ。取って喰っちまいてえぜ」
「ふん。喰えるもんなら喰ってみな。おまえさんのやわな顎で俺様が噛み砕けるかな? おれの歯ごたえはちょいとばかりタフでクールでハードボイルドだぜ」
「気に入ったぜ。欲しけりゃくれてやる」
「おれは乞食じゃねえよ」
「おれもだ。人様に施しなんか受けない。おれは兵士だ。ストリートの兵士なんだ」
「こりゃ、たまげたぜ! 極楽とんぼばかりだと思ってた東京に兵士がいるとはな!」
「ホームレス・ソルジャーと呼ぶがいいさ」
「それならおれはストリート・ソルジャーだ」
「ほっほっほ! ますますおもしろい野郎だ」
「どうだ? これから花見と洒落こまねえか?」
「花見? どこもかしこも腑抜けどもであふれかえってやがるぜ」
「一カ所だけ誰もいない花見の特等席があるぜ。見てみな」
吾輩はホームレス・ソルジャーにそう言って明治通りにかかる歩道橋を指差した。
「おお! あんた、おもしろいだけじゃなくて頭もいいな!」
「まあな」

吾輩とホームレス・ソルジャーは連れ立って歩きだした。途中、セブン-イレブンに寄ってビールと日本酒とウィスキーとマイヤーズ・ラムとビーフィーター・ロンドン・ドライジン47度を買った。歩道橋の真ん中に立つと路地の奥に光のひとかけらさえも射さない小さな公園が見える。若造が3人、桜の木の下で酒盛りをしている。悪だくみもしているにちがいない。吾輩とホームレス・ソルジャーは手始めにビールで乾杯した。プルリングを引き上げるときの音がこれからストリートを、世界をステンシル・ステルス爆撃機で絨毯爆撃する合図とも聴こえた。

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ホームレス・ソルジャーはフラップ・ポケットから認識票をごっそり取り出し、両手の上に広げて見せた。そして、「おまえの認識票だ。好きなのを選べ」と言った。吾輩は「STREET4LIFE」と刻印のある認識票を取った。その瞬間から吾輩は本物のストリート・ソルジャーになった。すでにして戦友も一人いる。古強者の戦友はすぐ横でビールをうまそうに飲んでいる。
 
by enzo_morinari | 2013-03-31 11:23 | 神宮前ストリート・バケーション | Trackback | Comments(0)

概念の洪水#1

 
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 天命は人間再生のために何度でも反転する。

 ギリシャ大使館のある坂道の途中で天命反転ビルヂングの概念工事に出くわして以来、吾輩の大脳辺縁系ならびに大脳新皮質は概念の洪水で溢れかえっている。概念は次から次へと溢れてくる。養老院孟司博士に相談したが答えは実に素っ頓狂なものだった。

「天命反転だ。諦めるしかない。漱石は諦めて則天去私居士となった。そして、『吾輩は猫である』を書いた。君は『吾輩は犬である』を書けばいい。ディオゲネスの犬でもある君にはぴったりだ。素晴らしい整合性だよ。そんなことより、ザザ虫のいいのが手に入ったんだが、今夜あたり一杯どう? 羅生門で」
「羅生門って南麻布のですか?」
「いや、そうじゃなくて。お酒の羅生門。紀州の」
「ああ。あれはいい酒だ。ぜひ」

 そして、吾輩と養老院孟司博士は薄暗く黴臭い研究室を出て天命反転シティの概念工事42工区の視察に向かった。途中、青山1丁目交差点で流行通行止めに遭い、Uターンしたときに荒川修作の死を知らせるメールが入ったが、もはや心はピクリとも動かなかった。当然、涙も出なかった。「これでやっと荒川修作は阿修羅になれたんだ」と思った。意味のメカニズムをまとった切っ先鋭い紡錘形が世界を貫き、薙ぎ倒してしまえばいいとも思った。天命反転シティ概念工事の遠い太鼓とも弾ける泡とも重金属の大洪水とも思える音が少しずつ近づいてくる。

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by enzo_morinari | 2013-03-30 04:32 | 概念の洪水 | Trackback | Comments(0)

虹子のトランク/燐の火のような青く美しい光になって#1

 
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 虹子は隠しごとをしない。うそをつかない。秘密もない。しかし、例外がひとつだけある。「虹子のトランク」だ。虹子は「虹子のトランク」をだれにもさわらせない。さわらせないだけではなくて、見せることもない。吾輩は一度だけ「虹子のトランク」を見たことがある。虹子を尾行し、「虹子のトランク」の隠し場所を探りあてたのだ。

 東京港。品川の海の近くの倉庫街コバルト地区。虹子はコバルト・ブルーだらけの街のひと際コバルト・ブルーな巨大なビルヂングに入っていった。吾輩がいままでに見たこともないような軽快なステップで。吾輩は心臓が口から飛び出しそうになるのを必死でこらえた。なにかある。これは絶対になにかある。逢引き? まさか。コバルト・ブルーな場所で逢引きするなど聞いたこともない。被曝の危険を冒してまで快楽を得ようとする者などいない。秘密の会議? それもありえない。「会議」の類いがいやでハイパー遺伝子工学研究者として将来を嘱望されながら虹子は東大の医科学研究所を辞めたんだから。妄想は次から次へと膨らんでくるが、吾輩はそれらのひとつひとつを叩きつぶした。叩きつぶすたびにコガネムシを踏んづけたような悲鳴が聞こえた。一番ひどい悲鳴を上げたのはエイハブ船長だ。今頃はモービー・ディックに喰いちぎられてバラバラになった死体は冷たい海の底だろう。白いマッコウクジラの大群がそのまわりでスペルマ・ダンスを踊っているのがみえる。

 通りを挟んで向いの陰湿きわまりもない群青色の建物の陰に身を隠して虹子が出てくるのを待った。虹子は正確に42分後に出てきた。ビルヂングに入ったときよりもいくぶんか顔が輝いているように見えた。足取りはさらに軽快になっている。
 吾輩は電信柱の陰から通りを遠ざかる虹子の背中が見えなくなるまで見送り、薄闇の中に虹子が消えるのを確認してからコバルト・ブルーのビルヂングに入った。守衛の爺さんは「内閣情報調査室特別調査官」の身分証をみせ、名刺を一枚くれてやるとすぐに虹子のトランク・ルームに案内してくれた。ある種の権威を振りかざせば、この世界にはプライバシーも個人情報も存在しないも同然だ。「ごゆっくりどうぞ。ぐへへのへ」と言って守衛の爺さんは守衛室に戻って行った。肉付きのいい背中とやや丸めた姿勢と歩き方を見て、爺さんは元刑事であることは容易にわかった。

 エイドリアンニューウェイ・ブルーの扉を押すと錆粉がぱらぱらと落ちてきた。「虹子のトランク」はトランク・ルームの真ん中にあった。「虹子のトランク」が放つ輝きのせいで照明をつける必要はなかった。吾輩は生唾を飲み込んだ。江ノ島のさざえ売りの涙のような味がした。吾輩はしばらく「虹子のトランク」の様子を観察した。コバルト・ブルーの輝きを放っているほかは「虹子のトランク」はいたって紳士的でジェントリーでホワイト・ナイトでエボナイトだった。吾輩はゆっくりと「虹子のトランク」に近づき、つま先でつんつんしてやった。吾輩がつんつんするたびに「虹子のトランク」は「ワンツン、ワンツン」とうれしそうな声をあげた。
 トランクをあけた。「虹子のトランク」の中からはあちこち傷ついたり凹んだりカビが生えたり色褪せてとても年老いてくたびれ果てた「賢治のトランク」が出てきた。そうだ。正真正銘、宮沢賢治のトランクだ。宮沢賢治の法定代理人である吾輩が言うのだからまちがいはない。
「賢治のトランク」は初めのうちじっと吾輩をみつめるだけでぴくりとも動かなかった。1時間ほどのあいだにまばたきを3度しただけだ。「賢治のトランク」が最初に発した言葉は「腹へった。億年兆年億兆年なんにも食べてない。凡愚でスモーク・オン・ザ・ウォーター。キシキシキシ」だ。
 
by enzo_morinari | 2013-03-29 14:18 | 虹子のトランク | Trackback | Comments(0)

8丁目75015番地の朝/彼女のコルドン・ブルー

 
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 パット・メセニーとチャーリー・ヘイデンの『Cinema Paradiso - Love Theme』が静かに終わり、天野清継の『AZURE』がかかる。天野清継の『AZURE』はアジュア・キングフィッシャーが飛翔するアジュール海岸8丁目75015番地の朝にこそふさわしい。部屋には肉の焼けるにおいとさまようオリンポス山の山頂からやってきたさまざまの果実が熟れて放つ濃密なにおいが漂い、舞い踊っている。そして、彼女は思う。
「また失敗だわ。フォアグラとオレンジなんか挟むんじゃなかった。イチジクだけにしておけばよかったのよ。いったい、わたしの本当のコルドン・ブルーはどこ? 第一、朝から肉なんか食べるべきではなかったのよ。まったくあなたはなにもわかっていない。わたしのコルドン・ブルーが消えたのは全部あなたのせいよ。いいこと? 肉はね、肉は追悼と追憶の夜に食べるものと神様が決めたのよ。おぼえておいて!」
 もちろん、いまや彼女のコルドン・ブルーは跡形もなく消えてしまった。もう何年にもなる。

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 彼女のコルドン・ブルー。砂漠をゆく王女と王子の夢の旅路を照らすペルシャン・ブルーでもなく、世界のすべてを焦がし、灼きつくすコバルト・ブルーでもなく、F1大宇宙にひと際まばゆく輝いたエイドリアンニューウェイ・ブルーでもなく、天国へと誘う Pau 'Ole Ka 'I'ini HAPA BLUE でもなく、メローなロスト・ワールドの週末を満たす Ode-To-A-Kudu-Blue でもなく、彼女自身のコルドン・ブルー。

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 それでも、いつかの遠い日の夏、最終の桜木町行きを待つ幻の渋谷駅の1番線ホームからは渋谷川のせせらぎと五島プラネタリウムのときめきが聴こえ、視えるはずだ。アジュア・キングフィッシャーが飛翔するアジュール海岸8丁目75015番地の朝にふさわしい彼女のコルドン・ブルーとともに。それまでは天野清継の『AZURE』を小さな音で、ごくごく小さな音で繰り返し繰り返し聴こう。彼女のコルドン・ブルーなアジュア・キングフィッシャーが飛翔するアジュール海岸8丁目75015番地の夏の朝を追悼し、追憶するために。天野清継は横浜山手・外人墓地前の「絵の樹亭」のクレープが大好きだ。酒は飲めない。

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 Azure - 天野清継
 Ode to a Kudu - George Benson
 Cavatina - HAPA
  
by enzo_morinari | 2013-03-26 12:33 | 彼女のコルドン・ブルー | Trackback | Comments(0)

なにごとかから卒業する世界中のすべての「きみ」へ

 
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 J.P.サルトルは『存在と無』の中で感受性や思考がステレオタイプの人間を「くそまじめな精神」とそやし、もっとも軽蔑唾棄した。「くそまじめな精神」は自己や他者の本質のあらゆることどもを引きずりだそうとする。Aは「信用のおける男」だから信じていい、Bは「卑劣な男」だから付き合ってはならない、Cは「軽薄な男」だから用心しなければならない、という具合だ。

 一人の人間があるときある行為をすることについての仕組みは、実はよくわかっていない。ある行為の「原因」はほぼ無数にあり、追跡不可能であるにもかかわらず、われわれは行為のあとでわずかばかりの要因を「動機」として都合よく抽出し、「それらの動機が行為に駆り立てた」という「お伽噺」をでっちあげて得々としているにすぎない。
 動機ばかりではない。この世界において「解決済み」とみなされている因果律、意志、善悪、自由、存在などの諸概念がいったいなにを意味するかについてはいまだにわかってはいない。哲学することの「善きこと」は世界のほぼすべての事柄、事物、事態、事象は厳密にはなにもわからないのだということを知ることにあるとも言いうる。
 成長し、世界や社会や世間の冷厳冷徹な風雨荒波にさらされていくうちに「善く生きること」「哲学すること」はどうでもよくなり、「とにかく生き延びなくては」というお決まりの文句がすべてを薙ぎたおす。そうならないよういまのうちに気を引き締めておくがいい。得体の知れない不安にさいなまれ、震えているきみに「Bon Voyage!」の言葉とともに、持ち時間に比例して広がる可能性の素晴らしさときみの手中にあるものの大きさと深さと豊かさをいくぶんかの羨ましさとともに告げる。

 サルトル流にいうならば誰でもが否応なく「自由」のただ中に投げ出されている。禍福を他者のせいにするのも自由である。面倒なあれやこれや、あれか・これかを考えずに、あたかも「物」のように自身を固定化していくのも自由である。しかし、そういった類の選択はきみの精神を痩せ細らせる。貧しくする。つまらなくする。きみから真の意味の「自由」を奪ってしまう。「不幸」とはそういうことだ。
「自分はダメ人間なんだ」ときみは嘆く。そして、自分の本質を「ダメ人間」として意識・無意識のうちに決定し、それがきみ自身の「だれにもなりかわりようのない人生」を決定する。その責任はまぎれもなくきみ自身にある。つまり、きみは自分自身で自分を「ダメ人間」として選択したのだと言っていい。そのようなきみは未来永劫にわたって「ダメ人間」だろう。しかし、いったいなにが人間のやり方や行為を決定するかは「そのとき」にならなければわからないとも言いうる。まさに「一寸先は闇」なのだ。だからこそ、「いままで」を完全に絶ち切ってまったく新しいことを選択できるとも言える。

 おとなになるための条件は端的に言って二点である。ひとつは一人立ちすることだ。すなわち、親やその他の保護者の庇護の元から独立することである。社会的に認められる仕事に就き、経済的に独立することだ。もうひとつは他者に依存しない生き方を実現することである。これは自戒の意味もこめて言うが、自分と異質な人々を切り捨てるのではなく、大切にすることはいずれ人生の宝になる。もちろん、きみと異質な彼らは理不尽不条理に敵対もするだろう。彼らとの交流はいくぶんかの困難と困憊をもたらすかもしれない。そうであってもなお、彼らとの関わりはきみを宝石にする。これは経験則だ。

 いつかの遠い日の夏、285714285714粒/secの雨が降る七里ガ浜駐車場レフトサイドで「善きおとな」となったきみに会えるのをたのしみにしている。
 
by enzo_morinari | 2013-03-26 00:00 | 沈黙ノート | Trackback | Comments(0)

空飛ぶ復活スティグ・リンドベリが残した問題点と春の葉っぱ

 
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 グスタフスベリ色の包装紙に包まれていたのはアジュア・キングフィッシャーが飛翔するアジュール海岸8丁目75015番地の朝にこそふさわしいコルドン・ブルーの頑丈な箱だった。箱をこれ見よがしにあけると中から復活スティグ・リンドベリがやや年老いた白夜を背負って出てきた。出てきたとたんに復活スティグ・リンドベリは「やっぱりSPISA RIBBだよにゃあ」と言った。
「BERSAは? ADAMは? SALIXは?」
「BERSAでもADAMでもSALIXでもなくて、やっぱりSPISA RIBBだよにゃあ」

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 復活スティグ・リンドベリはあいかわらすっとぼけた髪型をしていて、やはり、あいかわらずすっとぼけたメガネかけていて、右肩にはチェシャ猫によく似たニーチェ猫が乗っていた。オリジナルのスティグ・リンドベリとちがう点はくわえているパイプがSPISA RIBBとSALIXの模様が交互に描かれた凡愚に変更されているところだ。あんた、作品はマーベラスでインクレディブルでジャギュワ並みにイカしてるけど、やることはジャンク野郎になっちゃったわけ? いくらなんでも筋子でも、凡愚はなかろうよ、凡愚は。吾輩が思うまもなく、スティグ・リンドベリはスウェーデン・コープのKFオリジナルの枯れ葉柄のキッチン・クロスをスーパーマントのようにまとい、あっという間にプチ・フルーツトマトのリゾット地区方面に飛び去った。あとにはやや年老いた白夜とニーチェ猫が残った。やや年老いた白夜はぺしょぺしょと泣き、ニーチェ猫は「ニー」と鳴いた。仕方ないのでニーチェ猫には「チェッ!」と言ってやった。ニーチェ猫は権力への意志を剝きだしにして唸った。

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 吾輩はこれでまたふたつ、厄介事を孕んだ問題を抱え込んでしまった。春はまことに椿事が起こるのに事欠かないシーズンお麩の心にこんにゃく問答の季節だ。問題解決の前に、次の週末はフォーシーズンズに予約を取ることにしよう。額にBERSAのタトゥーを入れたコンシェルジュのマドカちゃんには空飛ぶBERSAのフライング・カップソーサーをお土産に持っていってあげよう。うまくいけばこの春初めての強い南風が吹きつける七里ガ浜駐車場レフト・サイド会議にいっしょに行ってくれるかもしれない。iPod Touchでヘッドフォンをわけあって聴く音楽のリストはすでにつくってある。最新の「M'S FAVORITE SONGS BOOK TAPE」「Mのテープ」だ。タイトルは「葉っぱ」だ。

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by enzo_morinari | 2013-03-25 17:34 | Poisson d'avril | Trackback | Comments(0)

星を継ぐ者の系譜#4 悠々として急げ

 
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 Festina Lente. 悠々として急げ。
 Fluctuat Nec Mergitur. 漂えど沈むな。


 賢者は日々死にゆく。宝玉のごとき賢言を残して。なにもかもが今のうちだ。あとの祭りと気づくのは胸の真ん中あたりがかなり痛む。


 あなたがなにで生計を立てていようとわたしには興味はない。知りたいのはむしろ、あなたがなにに心を痛めているか、そして、憧れとの出会いを夢見る勇気を持っているかどうかだ。

 あなたが何歳であろうとわたしには興味はない。知りたいのはむしろ、あなたが愚か者に見えるのも覚悟のうえであえて愛を、夢を、生きるという冒険を求めるかどうかだ。

 あなたの星座が何座だろうとわたしには興味はない。知りたいのはむしろ、あなたがあなた自身の悲しみの中心に触れたかどうか、そして人生の裏切りによって心を開かれたのか、それとも縮みあがり、さらなる苦痛を恐れて心を閉ざしてしまったかどうかだ。

 わたしの苦痛だろうとあなたの苦痛だろうとかまわない。あなたが苦痛に耐えられるかどうか、その苦痛を隠したり、薄めたり、取り繕ったりするためにじたばたせずにいられるのかどうかを知りたい。

 わたしの喜びだろうとあなたの喜びだろうとかまわない。あなたが喜びとともにいられるのかどうかを知りたい。あなたが野生とともに踊り、手足の先まで歓喜に満ちて、わたしたちに用心せよとか、現実的になれとか、人間の限界を忘れるななどと警告せずにいられるのかどうかを知りたい。

 あなたの話していることが本当かどうか、わたしには興味はない。知りたいのはむしろ、あなたが他人を落胆させることを恐れずに自分に正直になれるのかどうか、そして裏切ったと非難されても耐え、自分自身の魂を裏切らずにいられるのかどうかだ。あなたが誠実で、それゆえに信頼できる人間なのかどうかを知りたい。日常的なものの中に美を見いだすことができるのかどうか、そして自分の生の源は神の存在にあると言えるのかどうか知りたい。

 あなたが失敗に耐え、湖の縁に立って銀色の月の呼びかけに答えることができるのかどうか知りたい。あなたがどこに住んでいようと、どのくらい財産を持っていようとわたしには興味はない。知りたいのはむしろ、悲嘆と絶望の夜のあと、疲れ果て、骨の髄まで打ちのめされて、それでも起きあがり、こどもたちのためにせねばならぬことをなしうるかどうかを知りたい。

 どこで誰といっしょになにをあなたが学んだかわたしには興味がない。知りたいのはむしろ、すべてが崩壊したとき、なにがあなたを内側から支えているかだ。ひとりぼっちでも平気でいられるかどうか、そして孤独なときの自分を本当に好きかどうかを知りたい。

 あなたが何者なのか、どうやってここに来たのかわたしには興味がない。わたしが知りたいのは、あなたがわたしといっしょに炎の中心に立ち、尻込みしないかどうかだ。
 
by enzo_morinari | 2013-03-23 05:20 | 星を継ぐ者の系譜 | Trackback | Comments(2)

星を継ぐ者の系譜#3 俺たちゃ、ドビ兄弟

 
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俺たちゃ、ドビ兄弟。一発、LA仕込みの極太ショットガンぶち込んでやろうか? お好みはスカンクかい? パナマ・レッドでリラックスするかい? それともアカプルコ・ゴールドとシャレこむかい?
 
1974年以降のドビ兄弟は糞だ。「聴いてらんねえ。聴かねえ。聴くな」の三段活用もいいとこだ。待ち合わせは東横線の菊名駅前喫茶店の『キクナ茶屋』ときたもんだ。ドゥービー天国? 笑わせやがらあ! 草食って糞まみれ地獄へ堕ちやがれ! ドビ兄弟は、『The Doobie Brothers』(1971)、『Toulouse Street』(1972)、『The Captain and Me』(1973)の3枚を聴いときゃいい。その他はひと山いくらのガリガリ亡者のこんこんちきだ。手を出すな!

それにしてもだ。トム・ジョンストンがドビりすぎてからだをこわしちまったのが原因だが、いくらなんでもマイケル(クソ)マクドナルドごときのテンプラ野郎はねえだろうがよ。スティーリー・ダン? 銭ゲバやりすぎて黄疸おこしやがった腑抜けのイエロー・スットコドッコイどもめが! ジェフ・バクスターなんぞというペテン師にしてやられたのがかえすがえすも癪にさわるが、まあ、あれだ。禍福はあざなえる縄のごとしだしな。それに食ってかにゃあならねえんだ、SELLOUT、「売れなきゃしょうがねえ」ってことも一理ありだな。メルドーもいいとこだがYO!

2005年2月10日にくたばった芋引きキース・ヌードセンをはじめ、ほかのメンバーのうち4人がすでにアディオス・アミーゴとは、やっぱりドブはほどほどにってこったな。な? そうだろ? 森の漫才師サルーこと跳ねるロゴスの男よ。俺たちも気をつけようぜ。そんで死ぬまで生きようぜ! もちろん、終点のアディオス・アミーゴ駅にむかって爆走する長距離列車の運転士と車掌の俺とおまえだ。生半可なことではすまさねえさ。だがよ、兄弟。俺たちのファッキン・ビートをヒップでハップでバップでロケンロールでシェキナでドープな野郎どもにプッシュできるうちが花ってことだ。なあドビ兄弟の森の漫才師サルーよお。おまえもそう思うだろう?

さて、きょうも一日、よく働いた。しょぼい夜のはじまりだ。草入って、風呂食って、めしをロウチ・クリップでジェット・ストリームして、『Long Train Runnin'』みて、起きるとするか。あれ? なんかヘンだな。俺はもうぶっ飛んじまったのか? やっぱり、アロハの花頭はすんげえや! ストーンする前にカモン&コークするか。でも、こんなストンヘッド状態でまっすぐなラインがひけるのか? ピッチの選手諸君にゴキゲンなゲームをやってもらうためにもしゃんとしなきゃだぜ。そうだ! いとしいいとしいパタゴニア・スカンクのスニッフィちゃんに手伝ってもらおう! スニッフィちゃぁぁぁん、ヤキ経由カルロス・カスタネダ行きの超特急に乗っておいでぇぇぇ!!!

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Third World - Lagos Jump
 
【画像1】奥の赤目プア・ホワイトが吾輩、手前の巨大な缶ピースをスモクしているのが、金輪際、片岡敏郎スモカについては黙して語らぬ森の漫才師サルーこと跳ねるロゴスの男である。

【画像2】新しいタイプのドビ、ノリマキアラレレレレノレを試すカトマンドゥブ在住のケント・ギルドーブ氏(【画像2】についてはケント・ギルドーブ氏本人より画像の削除要請があった。現在、削除が妥当かどうか赤羽の西村ひろゆきと協議中である。「ノリマキアラレレレレノレ」の巻き具合、太さ、具材等が満足できない旨、削除要請の理由が添えられていたことを付記する。同氏はこだわりの「ドビブロ」なのである)。

【警 告】食煙は「社会的健康」に対する悪影響があります。また、「社会的健康」への重大な挑戦を助長することがJHFLから報告されています。まわりの「社会的不健康者および不心得者」からすすめられても、けっして食煙してはいけません。(KC庁生○活○安○全○課が動いちゃうよ。動いちゃうよ。いいの? どうなの? ドーブなの?)
 
by enzo_morinari | 2013-03-22 16:01 | 星を継ぐ者の系譜 | Trackback | Comments(0)

エンゾの背中【1/14】

 
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「夏がはじまるまでにエンゾ・マイオルカ・モリナーリの背中を持ってこい」とウォーレン・オーツ似の大ボスが怒鳴った。雷が1ダースほどもまとめて落ちたような声だった。小ボスどもは一斉に縮みあがった。もちろん、俺もだ。なぜなら、俺がエンゾ・マイオルカ・モリナーリ本人だからだ。だが、この街の連中は誰一人として俺がエンゾ・マイオルカ・モリナーリだとは知らない。

「エンゾの背中の肉をひとかけらでも俺の眼の前に持ってきた奴には100万ブッサリーノくれてやる。キャッシュでな。いいか? キャッシュでだ。ただし、肉は腐っていてはいかんぞ。なにせ、俺はエンゾ・マイオルカ・モリナーリの背中の肉を食わなきゃならんのだからな」

 大ボスは言い終えるとテーブルのシャトー・ムートン・ロッチルドの1958年を大ぶりのグラスになみなみと注ぎ、あかりにしばし透かしたあと、喉をゆっくりと動かしながら飲みほした。口の端からこぼれたワインは俺の血のように思えた。背中がぐきりと痛んだ。夏がはじまるのは2週間後だ。
 
by enzo_morinari | 2013-03-21 20:43 | エンゾの背中 | Trackback | Comments(0)

一千億の屍を越えて/君が消えた日

 
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 君が消えてから2年が経つ。君はいまだにみつからない。でも、僕はまだ君を探してる。探しつづけている。「あきらめろ」と誰もが言う。あきらめられるわけがないだろうが! おまえたちは僕たちの日々のひとかけらだってわかってやしないんだ!

 ときどき、君の声が聴こえる。楽しそうなときもあれば悲しそうなときもあれば苦しそうなときもある。お腹がへっているんじゃないかってときさえある。でも、本当はわかってる。君が2年前に死んでいるんだってことを。それでも、たとえ君が死んでいたとしても、僕には君の声が聴こえる。

 君が消えた日、僕は東京で仕事をしていた。君は北国の春まだ浅い海の景色を描くのだと言ってキャンバスとイーゼルと絵筆と絵具を抱えて上野駅の14番線ホームから東北新幹線に乗った。E2系のピンク色のラインが入った車輌が動きはじめたとき、窓越しに映る君の笑顔はなぜか悲しそうだった。理由はわからないが、とにかく僕には君がとても悲しそうにみえた。見送る僕に向かって君はなにか言おうとして口を動かしかけたけど、結局、君がなにを言おうとしたのかはわからずじまいだった。新幹線が動き出し、君はみるみる小さくなり、そして消えた。

 君はいまどこでなにをしているんだ? なにを感じ、なにを考えているんだ? いまでも絵を描いているのか? あのとき、新幹線の窓越しに君は僕になにを言いたかったんだ? 僕にできることはなにかないのか?

 君がいなくなった日 - 加古隆
 
by enzo_morinari | 2013-03-21 12:13 | 一千億の屍を越えて | Trackback | Comments(0)