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カテゴリ:Audio of Dreams( 1 )

Audio of Dreams/JBLの夢告とJBL 4345と5次元スワンとMcIntosh MC275とMemories of Youとビートニク・ガールとKT-88


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これからここに書きしめすのはオーディオにおけるField of Dreamsである。いわば、Audio of Dreams. カネはかかるがえられるものはほとんどない。なにがしかの夢が完成し、再生されるだけである。ある種の満足なら少しはあるかもしれない。

Play, Play it again something. For Memories of You, Play it again, As time goes by.

Say it ain't so, JBL! (嘘だと言ってくれ、JBL!)

夢を完成し、実現し、再生すればJBLはやってくる。Audio of Dreams

夢は確実に粉々に砕け散るが、新しい夢を何度でもみればいい。In da Tokyo DaZone Raccoon Lagoon 2QQ7

なつかしい痛みだわ。ずっと前に忘れていた。でも、あなたを見たとき時間だけ後もどりしたの。失った夢だけが美しく見えるのはなぜかしら? 過ぎ去ったやさしさも今は甘い記憶。Sweet Memories…Tacassy Machaan

McIntoshのロゴがプリントされた真空管(出力管KT88×4, ミニチュア管12AX7×3, 同12AT7×4)を実装した1961年第1世代オリジナルのMcIntosh MC275でベニー・グッドマンのMemories of Youのモノーラル盤を聴くことが長年の夢だった。


JBL(James Bullough Lansing)の夢告により、オーディオの冥府魔道を再現し、再生することになった。今から40年近くも前に血道をあげた音世界を再現し、当時の機材、当時のソースを再生するのである。里程標/Milestoneは光悦のJade Platinum. Reference SourceはMiles DavisのMilestonesだ。

手始めに五味康祐/菅野沖彦/瀬川冬樹/江川三郎/長岡鉄男を召喚した。長岡鉄男には5次元スワンを持参させた。気取り屋A( )Cの傅”Foo Fou Fool”信幸については「おととい来やがれ!」だ。

Accuphaseがカミソリのような分解能と連帯を求めて孤立を恐れない粒立ちと根こそぎ露わにする解像度軍団を引き連れてやってくるフェーズはまだ先である。


プロローグとして付随するType Sputnik Spin-off Vostok 1
McIntosh MC275とMemories of Youとビートニク・ガール

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29歳になる春、奇妙でビートのきいたとびきりの恋がはじまった。恋の相手はビートニク・ガール。2歳年上だった。「恐縮です」と言って現れたビートニク・ガールは、初登場以後、私の前から忽然と姿を消すまで常に私の死角に入りこもうとする油断のならない人物であった。油断はならないがビートニク・ガールは見た目も性格もシマリスに似た愛すべき人物でもあって、いかなる状況下にあっても無条件でデコピン8連発をやらせてくれるところがすごく好きだった。

「あたしはシマリスだけど、あんたはアライグマだね。ぼのぼのは誰にする?」
「ふたりで東京中を走りまわって探そうぜ」
「すてきね! すてきね! アライグマくん」
「シマリス! これでも喰らえ!」

顔を輝かせ、全身を震わせるビートニク・ガールを押さえつけてヘッドロックをかけ、デコピン8連発を3セット喰らわせてやった。ビートニク・ガールは手足をばたばたさせてよろこんだ。白のパンダがやってくるのはまだ何年も先だった。

初めて会った次の日、われわれは千駄ヶ谷のサイクル・ショップで16段変速のロード・レーサーを買った。ビートニク・ガールはチェレステ・ブルーのビアンキを選び、私はミッドナイト・ブルーのデ・ローザを選んだ。もちろん、コンポーネントはカンパニョロのレコードを組みこんだ。このようにして、ビートニク・ガールと私のぼのぼのを探し求めて自転車で東京中を走り回る日々は幕をあけたわけだが、それはまた別の話だ。

ジャック・ケルアックの『路上』が世界中をビートきかせて疾走しはじめた翌年、私は生まれた。ビートニク・ガールが生まれたのはまだ『路上』がフランシス・スコット・フィッツジェラルドの書斎の紫色の揺り籠の中で静かな寝息を立てていた頃だ。アレン・ギンズバーグの蒼白い手が16ビートで揺り籠を揺らしていた。すなわち、われわれは『路上』を挟んで誕生した反逆反骨の前衛サンドウィッチというわけだ。そのことについては、ビートニク・ガールとも意見の一致をみている。

ふたりでひとつ。あるいは、ひとつでふたり。当然、われわれはBLTでおそいJBL風朝食をとるとき、かならずサンドウィッチを食べた。BLTでのおそいJBL風朝食のみならず、われわれはことあるごとに、それどころか、理由も動機もなく、やたらとJBL風サンドウィッチを食べた。おいしくて良心的で気のいいJBL風サンドウィッチばかりだったが、中には箸にも棒にもかからない性格の悪いJBL風サンドウィッチもいた。レタスの歯ごたえがまったくなくて、濡れたセロハン紙みたいだったり、ピクルスがすっぱすぎて安物のビネガーの味しかしなかったり、肝心のパンが岩波文庫味だったりするやつらだ。そういうたちの悪いJBL風サンドウィッチはひと口食べたあと地べたに投げつけ、ふたりで手をつないで思いきりジャンプし、踏みつぶしてやった。そのときの性悪JBL風サンドウィッチどもの湿った悲鳴は天上の音楽に聴こえた。

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私にはビートニク・ガールと出会う以前、はるか昔から、どうしても実現したいちっぽけな夢があった。McIntoshのロゴがプリントされた真空管(出力管KT88×4, ミニチュア管12AX7×3, 同12AT7×4)を実装した1961年第1世代オリジナルのMcIntosh MC275でベニー・グッドマンのMemories of Youのモノーラル盤を聴くこと。それが、私の長年の夢だった。

ベニー・グッドマンのMemories of Youのモノーラル盤はすでにミント・コンディションのものを米国のオークションで入手済みだった。音響機器についてはKSL-2/KRELL(Preamplifier/Control Amplifier)、TD-126/THORENS(Turntable Unit)、そして、The Voice of The Theater-A7/ALTEC(Speaker System)が主役のMcIntosh MC275がやってくるのを待ちかまえていた。

McIntosh MC275は75W/chの管球式のPower Amplifierだ。オリジナルの発売は1961年。私とほぼ同世代である。McIntosh MC275は力強さと温もりをあわせもった音質の素晴らしさもさることながら、とにかく美しかった。そのデザインは一見すると無骨そのものだがステンレス・スティール製の筐体は鏡のごとく完全無比に磨き上げられ、KT88をはじめとする11本の真空管が筐体表面に映りこむところに私は強く魅せられた。

私がMcIntosh MC275の存在を知ったのは17歳、高校2年のときだ。当時の私がMcIntosh MC275を手に入れることは新人DFがリーガ・エスパニョーラの初めての試合でリアル・マドリッド相手にハットトリックを達成するよりも難しかった。その後も経済的に入手できる状況であってもタイミングが合わなかったり、タイミングがよくても財布の中身が空っぽだったりという具合に私とMcIntosh MC275は幸福な関係を築けなかった。

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母親に連れていかれた横浜・伊勢佐木町の裏通りにある小さな映画館で観た『ベニー・グッドマン物語』が、私にとっては初めての映画だった。JAZZという言葉さえ知らない頃である。スティーヴ・アレン演じるベニー・グッドマンが舞台上から恋人にクラリネットの演奏で求婚するシーンには心打たれた。そのときの曲がMemories of Youだった。以来、愛の告白とMemories of Youは私にとっては蝙蝠傘とミシン同様にわかちがたいものとなった。

40年の月日が流れ、いくつもの春やら夏やら秋やら冬やらが去って私の恋と夢ははかなくも消えたが、それでもなお私には聴こえ、見える。私の胸をときめかさずにはおかないビートニク・ガールの少女のような笑い声と笑顔と遠く去ったMcIntosh MC275の甘くせつなく美しくあたかい音と出力管KT88の灯が映りこむ鏡面筐体が。私に残ったのはたった一度だけレコード針を落とされたベニー・グッドマンのビニルのレコードのみだ。それでも、後悔はなにひとつない。

不条理やら無常やらを感じることがなくはないが、いくばくかの記憶をたぐり寄せ、反芻することでたいていのことどもはやりすごせる。夢は確実に粉々に砕け散るが、新しい夢を何度でもみればいい。

サンドウィッチはいまでもよく食べる。だが、BLTには行かない。JBLは今でも好きだし、たまにMJBのアーミー・グリーンに輝くマグナム缶のコーヒーは買うが、飲まずに缶を眺めるだけだ。


Memories of You - Benny Goodman
Sweet Memories - Seiko Matsuda (1983)
JBL 4345 Restored Pair driven by KENRICK's Hi-End DAC, E1-KRS & McIntosh MC275 Original
 
by enzo_morinari | 2019-03-25 12:09 | Audio of Dreams | Trackback | Comments(0)