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カテゴリ:静寂は殺しのサイン( 3 )

静寂は殺しのサイン/狙う者と狙われる者 アサシンはすぐうしろにいる。

 
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強固な信念を持つアサシンには死神も道をゆずる。

アサシンはどこからともなく現れ、どこへともなく消える。

狙う者はつねに勝者であり、狙われる者はつねに敗者である。

最強の兵士は失うもののない兵士である。失うもののない兵士はすべてを奪う。



群れているやつらをつぶすのは造作もないことだ。一人一人、狙い撃ちすればいい。世界は狙った者が勝つようにできあがっている。狙われた者に逃げ場はない。

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Assassin's Creed
Hitman 2: Silent Assassin
 
by enzo_morinari | 2019-03-25 02:17 | 静寂は殺しのサイン | Trackback | Comments(0)

静寂は殺しのサイン/長く強い痛みとアダージョ・ソステヌートの殺人者

 
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人生はラフマニノフの1小節にも値しない。G-G

アダージョ・ソステヌートの死。息は乱れない。常に平均律を保っている。G-G

嘘とごまかしと裏切りと変節と手のひら返しは断じてゆるさない。親兄弟、女、こども、友人であってもだ。手加減なし容赦なし。逃げても無駄だ。草の根をわけても探しだす。そして、長い時間をかけ、ゆっくりと、考えうるあらゆる種類の苦痛を与える。もがき苦しませ、のたうちまわらせ、むごたらしい死、アダージョ・ソステヌートの死をお見舞いする。それが私のModus Operandiだ。G-G


富士の樹海の近くのアジトに着いたのは夕闇が降りはじめた頃だった。いやな胸騒ぎが続いていたが、地下室に入ると胸騒ぎはきれいさっぱり消えた。男は虫の息だったがかろうじて生きていた。黒幕を聞きだすまで死なれては困る。男にはスカフィズムをはじめとする数々のTortureが待っている。私の趣味の時間、トーチャー・タイムだ。

地下室は完璧な防音処理が施されている。どんな音も外部には漏れない。やりたいことをやりたいだけできる。地下室にはいくつもの拷問具とともにほぼ完璧と言っていい音響設備が備えつけてある。

人生はラフマニノフの1小節にも値しないとひとりごちる。私の口ぐせだ。ひとは私を名うての殺し屋と呼ぶ。私は呼吸するように殺す。私にとって殺戮は呼吸と同じだ。私の殺戮で人口密度はいくぶんか減少し、私の呼吸で地球上の炭酸ガス濃度はわずかに上昇する。それだけの話である。

私は息を吐きだすようにトリガーを引き、息を吸いこむようにナイフを一閃する。私はゆっくりと殺す。手加減なし容赦なしで。眉ひとつ動かさずに。Adagio, Adagio. Non Troppo.

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樹海の樹々が軋む音を聴きながら思う。

「命乞いをするのは人間だけだ。人間以外の生き物は命乞いなどしない。不潔で覚悟なし。それが人間だ。」

人生はラフマニノフの1小節にも値しない。特にラフマニノフのピアノ・コンチェルト第2番 第2楽章の1小節には。当然、グスタフ・マーラーの交響曲第5番 第4楽章 アダージェットにも。チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』にも。

アダージョ・ソステヌートの死。息は乱れない。常に平均律を保っている。Time Keep. Tempo Animato. Keep The Rhythm. I Got Rhythm. ジョージ・ガーシュウィンことジェイコブ・ガーショヴィッツは作り物のような静寂と豊饒に彩られた秋のNYで生まれ、狂った青空がなだれ落ちる夏の初めのLAで死んだ。

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人生に必要なのはリズムとバランスとエアロダイナミクスと確認である。これにいい旋律が加われば言うことなし。だが、ことはそうそううまくはいかない。変奏がある。どこのだれとも知らぬ馬の骨のせいで。チャーリー・パーカーが死んだのだって、元をただせばディジー・ガレスピーの変奏と変節に巻きこまれたからだ。No Confirmation, No Life.

スピーカーはイタリアの老練な家具職人が丹精をこめて作りあげたSonus FaberのAida. ジュゼッぺ・ヴェルティのオペラに登場するエチオピアの王女の名を冠した美しいスピーカー。イタリアのクラフトマンシップが生み出した傑作。音楽を奏でる宝石だ。リラの形状をしたRed Violin仕上げのエンクロージャーが艶かしく輝いている。明るくも気怠く儚く物憂げな古代ギリシアの街中にたゆたうように流れたリラの音色が聴こえてきそうだ。クレモナの偉大なリュータイオたち、アマーティやストラディヴァリやグァルネリも聞き惚れることだろう。CDプレイヤーはLinn CD12で、CardasのClear Beyondを使ってKrell KSLとウェスタン・エレクトリック社製のKT88をチュービングしたMcintosh MC275につないである。バイアンプ駆動。スピーカー・ケーブルにはEsotericの7N-S20000 MEXCELを奢ってある。

マイクロ精機の超重量級砲金製ターンテーブルがストリング・ドライヴによってゆっくりと回転している。ターンテーブル・ユニットSX8000+モーター・ユニットRY5400の最強無敵の組み合わせ。軸受部に無振動エアベアリング機構を採用したターンテーブルは回転しているにもかかわらず、静止しているようだ。ターンテーブル・ユニットのフレームとモーター・ユニットとパワー・ユニットは味わい深いブルーで統一されている。トーンアームはGraham EngineeringのPhantom II Supreme. ピックアップは光悦のBlue Lace Agate Platinum.

豊饒かつ優雅、そして峻烈。私の "仕事”の作法流儀 と寸分たがわない。いささかの迷いも狂いもためらいもない。精緻にして明晰。パーフェクトなノックアウト。たぶん、私は気づかないうちに世界を支配する極意を手に入れたか、万人から気づかれずに搾取するための美学を身につけたかしたんだろう。

ターンテーブルにはドイツ・グラモフォン盤のカラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニカー『グスタフ・マーラー 交響曲第5番』がのっている。

何年の録音だろうか。中学の音楽室で聴いたおぼえがある。放課後、クラーク・ケント似の音楽教師が聴かせてくれた。第4楽章の美しい緩徐の旋律に聴き惚れる。

仕事の前にはいつもマーラーの『交響曲第5番 第4楽章 アダージェット』かラフマニノフの『ピアノ協奏曲 第2番 第2楽章 アダージョ・ソステヌート』を聴く。そして考える。問う。"人生に確証はあるか? 啓示と福音に耳をすましているか?" と。仕事が無事終わったらナタリー・ドゥセが歌うラフマニノフの『ヴォカリーズ』を聴く。あとにはなにも残らない。残さない。後腐れなし。そんなふうにして、私は人生の日々の景色をよくする。

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弟子が問う。

「次のマークはどこのどいつですか?」
「おまえだと言ったら?」
「究極のオーディオ装置で戦慄の叙情を聴けたんですから心残りはありませんよ。できれば、1970年録音のウラジミール・アシュケナージとアンドレ・プレヴィン指揮 ロンドンSOのラフマニノフ Op. 18が聴けたら申し分ないんですけどね。」
「いい選択だ。ジメルマンとオザワ/ボストンSOのラフP-C No.2, Op. 18だと言ったら躊躇なくトリガーを引いていた。」

私はこともなげに言い、フレーム、銃身、スライド、弾倉のフィールド・ストリッピングとクリーニングを終えた38口径 FN ブラウニング M1910をホルスターに収め、ホルスターヘの収まり具合とホルスターから抜き出すときの滑らかさを確認し、再び、FN ブラウニング M1910をArflexの机の上に音もなく置いた。それから、ゆっくりとした動きでフィルターを外したソブラニーのブラック・ロシアンに火をつけた。深々と固形物のような烟りを吐き出すとヴァージニア葉の甘く濃密な燻香が部屋中に広がった。あとは未開封の箱の中の380ACP弾に瑕疵がないかひとつひとつ確認する作業を残すだけだ。

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FN ブラウニング M1910。私の長年の愛用銃にして、決して裏切ることのないよき相棒がポリッシュ・ブラックのArflexの机の上で鈍い輝きを放っている。

嘘とごまかしと裏切りと変節と手のひら返しは断じてゆるさない。親兄弟、女、こども、友人であってもだ。手加減なし容赦なし。逃げても無駄だ。草の根をわけても探しだす。そして、長い時間をかけ、ゆっくりと、考えうるあらゆる種類の苦痛を与える。もがき苦しませ、のたうちまわらせ、むごたらしい死、アダージョ・ソステヌートの死をお見舞いする。それが私のModus Operandiだ。

眉間にくっきりとS字の皺がよる。カービング・ナイフで彫りつけたようなS字のしるし。眉間のS字の皺の刻印は断固たる決意のあらわれだ。そして、私の冷酷と残虐の象徴。過去も現在も未来も変わらない。時制も時相も時法も問わないし、意味を持たない。場所もだ。

宇宙を支配する巨大な意志の力によってもたらされた私の理力はスカラー量もベクトル量もテンソル量も無化する。それが私のやり方、Modus Operandi. 私の意志の中心はメタルだ。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの歌うクロード・ドビュッシーの歌曲集『Cinq Poèmes de Charles Baudelaire/シャルル・ボードレールの5の詩』をターンテーブルに乗せ、FN ブラウニング M1910の銃身を長く細く白い指先でゆっくりと繰り返し撫でる。シャルル・ボードレールの『悪の華』の中の詩の一節を暗誦でもするように。

「今夜のマークは女だ。それもとびきり美人のな。彼女はこれからファム・ファタールを気取って犯した数々の悪事悪行の贖罪をする。彼女は物事をアレグロ・アッサイに進めすぎた。人生はアダージョくらいでちょうどいい。漂えど沈まず、悠々として急ぐことも必要だがね。"夢魔世界の悪霊がユグドラシルさえ真っぷたつに切り裂く残酷にして冷徹な憤怒と憎悪の鉤爪を立てて汝を絶望と恐怖に彩られたモスケンの大渦巻のただ中に引きずりこむ。余は汝の呪われしアルビノの血がパストラーレの小川のようにファートゥムの瀑布のように軽快に激烈に流れ滴ることを熱望する" ということだ。」

言い終え、私はジャン=フランソワ・パイヤール室内管弦楽団が演奏する『アルビノーニによる2つの主題のアイデア及び通奏低音に基づく弦楽とオルガンのためのアダージョ ト短調』をかけた。

マークが "とびきり美人の女" と依頼主から聞いて少しだけ胸の奥が疼いた。しかし、ほんの少しだけだ。どうということはない。すべては過程のひとつにすぎない。

『アルビノーニのアダージョ ト短調』が終わり、再び、フィッシャー=ディースカウの正確無比、精緻明晰、ノイズ・ゼロのクリアな発声法に基づく威厳に満ちた声が部屋中に響きわたった。つづいて、マーラーの『交響曲第5番 第4楽章 アダージェット』とラフマニノフの『ピアノ協奏曲 第2番 第2楽章 アダージョ・ソステヌート』が交互に繰り返し流れた。

アダージョ・ソステヌートの時間が永遠につづくように思われた。それが逃げ場のない死のダ・カーポの始まりにすぎないことを知るのはまだ先だ。


S. Rachmaninov: Piano Concerto No. 2, Op. 18, 2nd mov. "Adagio sostenuto"
V. Ashkenazy, André Previn & London Symphony Orchestra (LSO)
Krystian Zimerman, Seiji Ozawa & Boston Symphony Orchestra (BSO)
V. Ashkenazy, Bernard Haitink & Royal Concertgebouw Orchestra (RCO)

S. Rachmaninov: Symphony No. 2 in E minor Op. 27, 3rd mov. "Adagio"
André Previn & London Symphony Orchestra (LSO)
Mariss Jansons & St. Petersburg Philharmonic Orchestra
Gennadi Rozhdestvensky & London Symphony Orchestra (LSO)
Pablo Castellano & Teresa Carreño Youth Symphony Orchestra of Venezuela

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by enzo_morinari | 2019-03-23 14:24 | 静寂は殺しのサイン | Trackback | Comments(0)

静寂は殺しのサイン/沈黙の響きと沈黙ノートのページをめくる音

 
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夜の闇の静寂の中で耳をすませば沈黙の響きと沈黙ノートのページをめくる音が聴こえてくる。 E-M-M

積み荷もなくゆくあの船は海に沈む途中 魚の目で見る星空は窓に丸い形 Hinault Yossy


昼下がり。赤坂氷川神社境内。澄んだ静寂があたりを支配している。人の気配はない。社務所に人影はみえない。

二礼二拍手一礼ののち、心の中で天津祝詞を奏上。体の中心部が小刻みに振動する。大銀杏に目をやる。人影がみっつ。気配を消し、こちらを窺っているのがわかる。

靴紐を結びなおすふりをして左足首に巻きつけてあるホルスターのナイフを隠し持った。大銀杏に背を向けた途端に足音が立たないように速いすり足で近づいてきた。よく訓練された者の動き。プロだ。ナイフを握る手に力が入る。

ふりむきざま、白刃が鼻先をかすめる。ナイフを持つ手をめがけてナイフを一閃した。3本の指が赤坂氷川神社の清浄な境内にぱらぱらと散った。鮮血が男の指先から迸りでる。男の喉元にナイフを一閃する。真一文字に切り裂かれる男の喉元。一瞬、時間が止まったかと思われた65刹那後、鮮血が吹きだした。鋭い虎落笛の音がして、男は膝からすとんと崩れ落ち、こと切れた。残りは二人。

男たちは二手に分かれてこちらに迫ってくる。定石通りだ。背の高い男の顔をめがけて境内の砂をかける。怯んだところを一気にふところに飛びこむ。喉笛をかき切る。最初の男よりやや低音の虎落笛。残るは一人。

依頼主を吐かせるために生け捕ることにした。男を見るとわずかにふるえている。

「道具を捨てろ。そして、両手を頭のうしろにまわして組め。跪け。」

男のうしろにまわり、髪の毛をつかんで口にハンケチをねじこむ。さらに強く男の髪の毛をつかんでうしろに引きたおしてから、一旦、顔面をかかとで踏みつける。鼻骨がひしゃげる音。男を腹這いにし、両方のアキレス腱を一気に切り裂く。うめく男。待ち合わせていたPが速足で近づいてくる。Pは瞬時に状況を察すると言った。

「車を鳥居の前にまわす。掃除屋にも連絡する。」

私はうなずき、胸ポケットからフィルターを切り落としたソブラニーのブラック・ロシアンを出して火をつけ、固形物のように濃密な烟りを深々と吸いこんだ。

どこかしらから、沈黙の響きと沈黙ノートのページをめくる音が聴こえてきた。


The Sound of Silence - Simon and Garfunkel (1966)
 
by enzo_morinari | 2019-03-22 17:19 | 静寂は殺しのサイン | Trackback | Comments(0)