
その日の朝、間にあわなかった紙ヒコーキは哀しみの噴水の前で踊る踊り子ジャマイカに最初で最後の別れを告げた。
「大洪水がやってくる。お別れだ」
踊り子ジャマイカは泣きじゃくる。
「おねがい。お別れの前に噴水の水の上でわたしを強く激しく揺すぶってちょうだい」
間にあわなかった紙ヒコーキはうなずき、ジャマイカの両肩にそっと手を置くと、激しく強く揺すった。ジャマイカの瞳から大粒の涙がいくつもこぼれ、哀しみの噴水に落ちた。哀しみの噴水の水はオハイオの空のような澄んだ水色にかわった。
かくして、ふたりの旅は終わり、遠くから聴衆の拍手と歓声が聴こえてくる。
「オーケイ。もうちょっとだけここにいておくれ。なんの心配もいらない。ユニオンなんか気にしなくていい。ここにいるだけでいいんだ」
間にあわなかった紙ヒコーキはそう言い残し、私の眼医師の制止をふりきって、孤独なランナー専用道路を西に向かって走りだした。あとには踊り子ジャマイカとアダムに贈る歌が取り残され、ただ風に吹かれている。
Late for the Sky - Jackson Browne (1974)