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カテゴリ:サルーのうた( 1 )

サルーのうた/森の漫才師サルーの死と再生

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ジカングスリが効かない失われし日々の病もある。生きた数だけある。星の数ほどある。処方箋は虹の領分に属する。E-M-M


森の漫才師サルーは小学校の入学式後のクラス編成のときに私のすぐうしろの席だったことが運のつきだった。以来、森の漫才師サルーは長いあいだ暴風雨の中を雨具もレインシューズも風雨をやりすごすための軒もない日々を生きることとなった。

森の漫才師サルーは先祖代々横浜南部エリアで知らぬ者のない大金持ちの嫡男だった。いずれ、0の数がいったいいくつになるかもわからない気の遠くなるほど莫大な財産をすべて相続することが約束されていた。

学習成績も運動能力も腕力もなく、風采も上がらないが、唯一、森の漫才師サルーに他者より傑出したものがあるとすれば、それは破壊的なほどの人の良さだった。

「おれは生まれてからただの一度も人間を疑ったことがない。おれは世界のすべてを信じきって生きてきた。これからもずっと死ぬまでね」

そして、本当に世界のすべてを信じたまま森の漫才師サルーは死んだ。肝臓がん。森の漫才師サルーが死んで世界は純粋無垢なるものを2パーセントくらい失った。世界が嘆き悲しむ声が確かに聞こえた。

これからここに書きしめすのは森の漫才師サルーとの50年の日々だ。ゆっくりと。噛みしめながら。少しだけ泣きながら。あるいは涙をこらえて。さらには大笑いしながら。サルーのうただ。サルーにも届けばいいが。届いて、私が鳩尾に叩きこんだ42回のアッパーカットの痛みを思いだせばいいが。


テルーの唄 - 手嶌 葵
 
by enzo_morinari | 2018-10-17 00:03 | サルーのうた | Trackback | Comments(0)