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カテゴリ:The True Trout Story( 2 )

The True Trout Story 鱒の真実の物語/Trout All Stars

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世界中のドロシーは虹の彼方にたどりつけたのか?
世界中のアリス・リデルは逆さま世界から帰れたのか? E-M-M

六本木高校のコンクリートの壁面はチェシャ猫と箱猫とシュレディンガー・キャットの踊り場である。Diogenez Doggz


『鱒の真実の物語』には多くの鱒どもが登場し、誕生し、消滅し、生滅し、夢二女を口説き、ヴァンドンゲン・ウーマンをシャトワールと交換し、運命の女を死の葉っぱまみれにする。


現在の段階で判明している鱒の真実の物語世界に生存する鱒ども/Trout All Starsは次のとおりである。


鱒の王/King of Trout
ドグラ鱒
マグラ鱒
メクラ鱒
アクメ鱒
アクマ鱒
サクマ鱒
サクイ鱒
クサイ鱒
イクサ鱒
ソウザ鱒
ダウト鱒
ダウソ鱒
タウソ鱒
ウッチャソ鱒
ナッチャソ鱒
ラクト鱒
レシチ鱒
レンチン鱒
レジン鱒
レンジ鱒
マグソ鱒
マグサ鱒
モグサ鱒
トラウト鱒
モアモア鱒
トラウ鱒
トラヌ鱒
トランプ鱒
ランプ鱒
プラン鱒
アンノン鱒
エディット鱒
ピラフ鱒
イヴ鱒
モンタ鱒
ヒポポタ鱒
オカダ鱒
ドロシ鱒
リデル鱒
デス鱒

ところで、世界中のドロシーは虹の彼方にたどりつけたのか? 世界中のアリス・リデルは逆さま世界から帰れたのか?

by enzo_morinari | 2018-10-12 18:49 | The True Trout Story | Trackback | Comments(0)

The True Trout Story 鱒の真実の物語 『アメリカの鱒釣り』の死

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釣りの極意? 消すことだ。自分も世界も宇宙もなにもかも消しちまう。そうすりゃ大物、大漁まちがいなしだ。名もなき釣り師K-K

私が釣り竿を垂れているのは目に見える海や川ではない。私がまだ見ぬ大物を釣り上げるために釣り竿を垂らしているのは星の海と天の川のど真ん中である。E-M-M


これは銀河系宇宙にあまねく存在し、スプラッシュをあげて跳ね、飛翔し、泳ぐ鱒どものための物語であり、ゴア殺しの犯人、キルゴア・トラウトをFish Onし、オーパする物語である。教訓も慰めもないがそこそこ獲物は大きいはずだ。絶滅種のヒポポタ鱒とデス鱒が主要な役まわりを演じる。愚かな河の馬と丁寧な死の舞踏だ。


午前5時14分。南青山1丁目ツインタワー前。徹夜明けの朝、こわばった心をほぐすために青山通りで跳ねる百万匹の鱒たちの黒ずんだ背びれを眺める。彼らはすべて、『アメリカの鱒釣り』から抜け出してきた誇り高き鱒たちだ。

『アメリカの鱒釣り』でリチャード・ブローティガンのことを知ったとき、彼はすでに世界とオサラバしていた。短銃自殺。1984年の秋のことである。私の知らないうちに私の知らない小説家が私の知らない土地で銃で頭を撃ち抜いていたという事実は私を少しせつなくさせた。

『アメリカの鱒釣り』を読み進みながら、私は生きることや死ぬことやそれらにまつわる馬鹿馬鹿しさや哀しみについて考えていた。読み進むうちに、生きることや死ぬことやそれらにまつわる馬鹿馬鹿しさや哀しみは輪郭がとてもくっきりしてくるのだった。3ページ読むと3ページ分のリアリティが加わった。

『アメリカの鱒釣り』を読んでいる間、私の心の中には『アメリカの鱒釣り』のための清冽で目映いばかりの川が音もなく流れつづけた。魚たちの跳ねる音や澄んだ空気や川岸のコロラドビャクシンのブルーヘブンやアンドロポゴン・ウィルギニクスやウォーター・バターカップや立金花や鱒の黒ずんだ鰭やほんの少し湿り気をおびた風が私と一緒だった。

アメリカの鱒釣り。
リチャード・ブローティガン。

私は小説を読み、小説家を思った。 
 
なぜ『アメリカの鱒釣り』はリチャード・ブローティガンによって書かれ、なぜリチャード・ブローティガンは『アメリカの鱒釣り』を書いたのだろう。そして、なぜ『アメリカの鱒釣り』を書いたリチャード・ブローティガンは短銃自殺なんかしたんだろう。もちろん、いくら考えても答えはでなかった。それらのことについて考えていると胸の真ん中あたりがパリパリと乾いた音を立てて割れてしまうような気がした。

この世界に確実なことなどなにひとつないが、これだけは言える。もしもアーネスト・ヘミングウェイが生きていて、リチャード・ブローティガンと出会っていたら、二人とも自殺なんかしなかったということだ。そして、今頃は『アメリカの鱒釣り』のための清冽な流れに二人並んで釣り糸を垂れたり、ヒッコリーの木にもたれて釣竿の自慢話をしたり、やまゆりの匂いをかいだり、風の歌に耳を傾けたりしていただろう。だが、二人は出会わなかった。そして、一人は猟銃で、一人は短銃で、それぞれ自殺した。

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ピアノ五重奏曲 イ長調 『鱒』/フランツ・シューベルト
 
by enzo_morinari | 2018-10-12 14:04 | The True Trout Story | Trackback | Comments(0)