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カテゴリ:森の緑のカーテン( 1 )

あらかじめ失われた眺めのいい部屋からイングリッシュ・ガーデンを眺めていたときに聴こえてきたマリア・カラスの歌う O Mio Babbino Caro

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すべてはあらかじめ失われている。

眺めのいい部屋も。森の緑のカーテンも。イングリッシュ・ガーデンも。アノニマス・ガーデンも。アノニマス・レボリューションも。強い南風の吹きつける七里ガ浜駐車場レフト・サイドも。稲村ヶ崎の水曜日の朝の伝説の大波も。最終の千代田線を待つ原宿駅の42番線ホームも。うたたねの記憶も。STREET4LIFEも。沈黙ノートも。真言の音楽も。流儀と遊戯の王国も。アダージョ・ソステヌートの死も。魔の山も。間の山も。オーベルジュ・ル・リキューも。デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ議定書も。スパゲッティ・アル・ペスト・ジェノヴェーゼも。ジャンニ・スキッキの娘ラウレッタの恋も。魚のしるしを持つ者も。最後の人も。期待/忘却も。海辺の休暇も。海辺の墓地も。方法の学校も。知性の偶像も。精神の島も。水曜の午後の野毛山動物園も。人生のエアロダイナミクスも。有機的な点=尖光/ホワイトヘッド・フラッシュも。知の胎内も。動機の文法を確立するための前人未踏の思索も。人間の可塑性も。知のクーデタも。無名会社/ソシエテ・アノニムも。世界の分裂生成も。視えない自由も。視えない銃も。バンクシーのステンシル爆撃も。キクラデスの空飛ぶパンも。コギト麦のエルゴスム・パンも。DONQのジュ パンス ドンク ジュスィ・パンも。精神と精神のあいだに立ちはだかる永劫の壁も。サリンジャー・ウォールも。ライ麦畑の捕手も。ウィンダムヒル・ハンバーガーも。Finnegans Wakeの消息不明のアポストロフィも。人生も。αも。Ωも。

...そして、そこからはじまる。



無名世界を眺望/計測するのにいちばん都合のいい部屋ですごした異人たちとの夏が終わり、異人たちはろくに挨拶もせずに去って、元の世界/在るべき世界/異界/異世界/在らぬ彼方に帰還した。1指パッチン65刹那世界に。そして、無名世界を眺望/計測するのにいちばん都合のいい部屋はただの眺めのいい部屋にもどった。なにごともなかったように。あらかじめそう決められていたように。キメラ・ダンスを踊りながら。

眺めのいい部屋から眺めるイングリッシュ・ガーデンは小さな宝石のような草花や樹木がまるでガーデン・プリンセスのティアラに散りばめるように植えこんであり、First of MayとMelody Fairの聴こえる春の芽吹き/若葉の頃から、落葉/落穂/楽穂/枯葉/紅葉というタームに彩られた枯れゆく秋までをたのしめる。四季咲きのバラにいたってはローズガーデンと呼びたくなるほどだ。ロサ・ムタビリス/バタフライ・ローズの七変化。そして、秋のバラを見ずにバラを語るなかれ。

朝、起きぬけに窓を開け放し、霧にかすむイングリッシュ・ガーデンを眺める。3頭のイングリッシュ・ラフ-コーテッド・ブラック・アンド・タン・テリアを連れた19世紀のカントリー・ジェントルマンの亡霊 Gretsch 6122がバトラーを従えてゆっくりとした足取りで散歩をする姿がみえた。19世紀のカントリー・ジェントルマンの亡霊 Gretsch 6122は驚くほど白洲次郎に似ていて、履いているのはリーバイス501のヴィンテージものだった。おそらく、着ているアンダーウェアはヘインズの白いTシャツだろう。

突然、なんの前触れもなくマリア・カラスの歌う『O Mio Babbino Caro』が聴こえてきた。カントリー・ジェントルマンの亡霊 Gretsch 6122も驚いて歩みを止め、『O Mio Babbino Caro』が聴こえてきた方向に目をやった。そして、頭を数回左右に振ってから眺めのいい部屋の窓際にいる私に帽子を取って軽く会釈した。

カントリー・ジェントルマンの亡霊 Gretsch 6122の背中がデルフィニウムやルピナスやコニファーの中に消えたすぐあとにニーチップ・モコヤジを先頭にトッドンラーウト、キッキス・ニンヤジ、14世紀の無名のフィレンツェ人、タッレワラ、ヨチッヌリらが現れた。春の椿事ならともかく、これから静かな秋をたのしもうという朝に、とんだドタバタ、スラップスティック、ユイスマンスさかさま世界が始まるのはあきらかだった。アーリーモーニング・ティーさえ飲んでいないというのに。イングリッシュ・マフィンさえ焼きあがっていないというのに。ミヒャエル・ジークが演奏するガエターノ・ドニゼッティの『Concertino for English Horn and Orchestra in G』の1小節すら聴いていないというのに。

カントリー・ジェントルマンの亡霊 Gretsch 6122がステアリングを握るベントレーのヴァンデン・プラスのル・ マン仕様が森の緑のカーテンを引き裂くように走り去ると同時に影を失った者たちの足音が部屋中に響きわたった。

Anonymous IV/第4の無名氏、ムッシュ・ソルシエ・トマテュルジュに率いられた無数の亡霊どもが4声体オルガヌムを歌いながらやってきた。


O Mio Babbino Caro - Maria Callas


…そして、終わりの始まりが始まる。

ビートニク・デイズも。バラ色の人生も。ヘミングウェイ・ゲームも。伝えたい言葉も。伝えられない言葉も。ゴンザレスの南/チチリアーノの西も。星を継ぐ者の系譜も。移動祝祭日通信も。世紀末ホテルの夜も。世紀末動物園も。ラデュレの塔の秘密も。天使の厨房も。虚数船も。境界のボートも。ギラン=バレーの朝も。アール・クルー日和も。法王庁の抜け穴も。オーロックスの夜も。ホテル・カリフォルニア問題も。ハーチェクの白い城も。倦怠期ディスクールも。ココペリのコッペリアも。ペイガン・ヘイトクライムの死も。WORLD ORDERの思想も。OMEGA Pointも。甘くほろにがい記憶も。シークレット・レモンガールの憂鬱も。Campanella Expressも。彼女のパピエ・コレも。2B or not 2Bも。東京フェルメール・ガールも。アームズ・パークの子守唄も。アリス・ウォータースに恋したことも。プリマス・バラクーダの殺戮の日も。ウォンバット戦闘団も。ロンゲラップ・ピープルの悲劇も。スリーマイル豆腐も。チェルノブイリ・プリンも。フクシマこ小女子釣りも。ポンテ・アパート42階の幽霊も。ボンベイ・サファイアの夜も。ウィリアム・モリスの森も。星影のカステラも。シェークスピア・キッチンも。森とひとの約束も。8丁目75015番地の朝も。サリンジャー人形も。概念の洪水も。虹子のトランクも。ホームレス・ソルジャーも。神宮前ストリート・バケーションも。MEDLERの木箱とフシギの地下室も。ディラックの海の青いほとりも。樽犬タルティーヌも。トロンプ・ルイユ氏の眼と精神も。真実のピッツァの騎士伝説も。異世界レストランも。一億一千一秒物語も。閉じられた世界樹の記憶も。多次元ビブリオテカも。バルトの岸辺も。マシンガン・タイプライターも。千のメルドーも。コアントローポリタンの女も。トーキョー24区の朝も。クマグス・デイズも。スコブル滑稽面白半分新聞も。異形ベイビーも。ジュークの春も。バナナ革命も。料理旅団衰亡記も。酔いどれの誇りも。恐竜の中の島々も。アルトーの壁画も。鎮魂のイストワールも。鎮魂のラタトゥイユも。クセノフォーン・サクソフォーンも。バトンガの男も。ガンスリンガー・ガールを探す旅路も。ボビー・コールドウェルが泣いた夜も。ケミカルブラザース曲芸団も。スナドリネコさんからの超難問も。アルタード・ステーツの時間も。ニーチェ爆弾も。ドリーミーな意志のスタイルも。アルカポネのフルスイングも。玄妙の言葉求めて櫻花薄紅におう道をこそゆく道も。追悼する明日も。今浦 島太郎のクロノメーターも。1億1000万本の指も。THUGZ4LIFEも。「村上春樹」という名の墓標も。ソバージュネコメガエルの実存の最先端も。齢の決算書も。虹のピンチョンも。脚線美をめぐる三都物語も。記憶する指も。ムッシュウ・ジギーからの伝言も。ファントム・カフェも。荒野のダンシング・ベイビーも。モノリスの夜も。トパンガの夢も。33回転/45回転の青春も。カリガ・サロの酒とバラの日々も。彼女の愛した数式も。彼の愛した葬式も。

…そして、ものみな式で終わる。

 
by enzo_morinari | 2018-09-18 09:10 | 森の緑のカーテン | Trackback | Comments(0)