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カテゴリ:コギト麦のエルゴスム・パン( 2 )

パーネヴィーナ・フロマッジオとのブレッド・アンド・チーズな日々#1 No Pain, No Gain. 痛みのパンなくして前進なし。

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No Pain, No Gain, No Life. 涙とともに食べた痛みのパンなくして前進なく、人生なし。Thug4Life Gangsta


『パーネヴィーナ・フロマッジオとのブレッド・アンド・チーズな日々』は『マカロン・パリジャンの甘くて不思議な秘密の冒険』『ジャン=ジャック・ブランヴァンのトゥールビヨン系「天使の分け前」をめぐる千鳥足の旅』とともにマンジャーレ・カンターレ・アモーレ3部作をなす。


パーネヴィーナ・フロマッジオとのコギト麦のエルゴスム・パンをめぐるブレッド・アンド・チーズな日々の話だ。

コギト麦のエルゴスム・パンはおいしく焼けるだろうか? コギト麦のエルゴスム・パンを食べるとお腹いっぱいになるだろうか? わからない。当然だ。コギト麦のエルゴスム・パンは、まだひときれも焼き上がってはいないし、食べたこともいないんだから。だが、焼き窯に薪はくべた。元気な小麦と健やかで気のいい酵母を手に入れる手はずも整っている。美しく凛としたクープのあるおいしいコギト麦のエルゴスム・パンが焼き上がればいい。多くの人々をお腹いっぱいにし、ささやかではあってもなにがしかの幸せを感じてもらえることができたらいいのだが。

ひとはパンのみにても生きる。涙とともに食べたパンは味などしない。できうれば、可能であるなら、愛する者と、気の合う仲間と、ともに「幸せ」のいくぶんかをわかちあい、祝福しあい、笑顔と笑い声と慈しみにあふれた食卓につきたい。そのとき食べるパンとチーズはこのうえもなくおいしいにちがいないし、ワインはたとえ安物のチリのサンタ・カロリーナでも芳醇馥郁として香り、舌を喉を血を肉を魂を悦ばせてくれるはずだ。そうあってほしい。さて、窯に火を入れる時間だ。

夕暮れどき。店じまいし、売れ残りの麦の穂パンともらいもののプロセッコ・ディ・コルレオーネ・ヴァルドッビアーデとフォンティーナ・ヴァレージ・ダオスタと3粒の丹波栗による早めで質素でわびしい夕食をすませ、フィリップ・ビゴがささやくように歌う『レイモン・カルヴェルの子守唄』を聴きながら42回目のフランチスク・ムンテヤーヌの『ひときれのパン』を読み終えたときだった。スイカズラの花びら型の髪飾りをつけ、藤色のアオザイを着た美しい娘が店に入ってくるなり言った。

「バイン・ミー・シルブ・プレ」

バイン・ミー? なんだそりゃ? コンバインしろじゃなくて? ボーリング・フォー・コロンバインでもなくて? ウッドバインなら山に行かなきゃないよ。「バイン・ミー・プリーズ!」と今度はものすごくこわい顔で娘は言った。

「おれはきみをバインできないよ。この街ではバインするのは禁止されているんだ」

私は苦しまぎれにそう答えた。

「???」
「No Bine, No Pain. O.K?」
「アナタ、ナニヲワケノワカラナイコトイッテルデツカ? ワタシ、バインミータベタイ。ワカリマツカ? アナタ、ハナモチデツカ?」

今度は「ハナモチ」ときやがったよ。なんだよ、「ハナモチ」って。

「アナタ、ハナモチシラナイデツカ? ハナモチナラナイヤツ!」

なんだ。「ハナモチ」は「鼻持ちならない」のことか。

「No! おれは鼻持ちならないやつじゃない!」
「デハ、ナゼ、ワタシニバインミータベサセテクレナイデツカ?」
「バイン・ミーなに? バイン・ミーわからないでつ」
「ワカラナイデツ、マチガイ。ワカラナイデストイイナサイ」

ちぇっ。自分だってさっきから「デツデツ」言いまくってるくせに。

「ハナモチサン、ナニカゴフマンアルデツカ?」
「御不満ありませんよ。バイン・ミーもありません」
「パン屋さんなのになぜバインミーがないんだね?」

お? 今度は上から目線で、しかもおれよりじょうずに日本語しゃべりやがったよ。

「このパン屋はノー・バイン・ミーのパン屋なんだ。わかりる?」
「ワカリル、ナンデツカ? 上海帰りのリルの若い頃の話かね? 変な日本語を使ってはいけません。恥を知りなさい。恥を」

娘は凛として言った。そして、「バイン・ミー」は「バインミー」というベトナム風のサンドウィッチであることを説明した。カタツムリ柄のトートバッグからiPadの最新モデルを取り出し、ウィキペディアの「バインミー」のページを私に見せて。そして、最後に付け加えた。

「何事も勉強です。パン職人ならパンのことはなんでもござれでなけれりゃいけません。わかりましたか?」
「はい」
「素直でよろしい」

このようにして私はパーネヴィーナ・フロマッジオと出会った。そして、彼女とのブレッド・アンド・チーズな日々がはじまった。コギト麦のエルゴスム・パンを探し求める旅も。

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No Pain, No Gain, No Life.

No Pain, No Gain - DJ PMX feat. ZEEBRA & MACCHO
No Pain, No Gain - Betty Wright
No Pain, No Gain - SEEDA feat. D.O.
No Pain, No Gain - Dry
No Pain, No Gain Gangsta's Paradise - Coolio feat. L.V.
 
by enzo_morinari | 2018-09-19 13:43 | コギト麦のエルゴスム・パン | Trackback | Comments(0)

DQNはDONQを辞めます 青山通りから12本目の銀杏の樹の下のベンチでAnonymous IV/第4の無名氏、ムッシュ・ソルシエ・トマテュルジュからフランスパンの神様の白洲次郎式死を報される。

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夜明け前の青山通りを曲がり、絵画館に向かって外苑通りの銀杏並木を時速42kmで疾走しているとき、青山通りから12本目の銀杏の樹のあたりでポリフォニー・リズムで追走してくる者に気づいた。Anonymous IV/第4の無名氏、ムッシュ・ソルシエ・トマテュルジュだった。

私はBROOKS GHOST10-056のバイオモゴDNAソールで急ブレーキをかけて停まり、停止地点から徒歩3秒の青山通りから12本目の銀杏の樹の下のベンチに座った。『アメリゴ・ベスプッチ大陸の鱒釣り』の42回目の死を看取ったベンチだった。ベンチの左側の脚のあたりに埋葬してあるので、噛んでいたリグレーのチューインガムを手のひらに吐き出して供えた。それとキットカットの双曲線の彼方に向かっての一蹴味を1本。毎年1月30日の明け方にはビッグ・サーの南軍将軍とアメリカの鱒釣りと西瓜糖の日々と芝生の復讐を引きつれてリチャード・ブローティガンがやってきて、青山通りから12番目の銀杏の樹の下のベンチに座る。1985年1月30日からずっとつづく神宮外苑銀杏並木の冬の風物詩だ。

Anonymous IV/第4の無名氏、ムッシュ・ソルシエ・トマテュルジュはまったく息が乱れていなかった。「おれの心拍数はいついかなるときにも42/minだ」と言ってAnonymous IV/第4の無名氏、ムッシュ・ソルシエ・トマテュルジュは胸を張った。ビミョーに薄い胸だった。肺活量は420ccくらいだろう。

Anonymous IV/第4の無名氏、ムッシュ・ソルシエ・トマテュルジュ(肺活量420cc)は私のとなりに座ると青山通りから12本目の銀杏の樹の根方をじっと見つめながら「フランスパンの神様がアポンした。"おめえには手がねえのか!"と最後に怒鳴って息を引き取った」とだけ言ってポリリズムの足踏みを始めた。

「なんの儀式?」
「儀式? ただの貧乏ゆすり。ペロティヌス風のな」
「なるほど。レオニヌスの『オルガヌム大全』のようによくできた話だ」
「それはそうとDQNのビゴがアデューしたんだけど、DQNのビゴが生涯をかけて開発したDONQのコギト麦のエルゴスム・パンとジュ パンス ドンク ジュ スィ・パンでパンパシフィックパンクチャー弔い合戦でもしようぜ。大坂"ハイチオールC"なおみも呼んで」
「そいつはいい。で? いつどこでやる?」
「そうだな。ビゴが修行したDONQがつぶれたときにDONQの本店の前でやろう。荒法師ナイジェル・マンセルにネルソン・ピケを張らせて。武器はDONQの味もそっけもないくせに値段だけは一丁前のバゲッド・パリジャンで」
「わかった。では、DONQがつぶれたときに神戸のDONQの本店の前で」
「DONQがつぶれたときに神戸のDONQの本店の前で」

言い終えるや否やAnonymous IV/第4の無名氏、ムッシュ・ソルシエ・トマテュルジュ(肺活量420cc)はスライム形状の巨大カメムシに変身し、青虫通りになってしまった青山通りに向けて猛烈な臭さで走りだした。わずかに色づきはじめていた銀杏並木は一瞬にして蒼ざめた馬のように青ざめ、青臭くなった。私は「アホくさ!」と吐き捨ててから、絵画館に向けて時速42kmでの疾走を再開した。

オリジナリティもホスピタリティもプロフェッショナリズムもチームワークもチャレンジ精神もないDONQは早くつぶれればいいのに。

今日、朝一で店長に辞表を出そう。辞表にはDQNはDONQを辞めますと書こう。

La Vie en Rose, Adieu l'ami, Aller avec Dieu!
Le temps des Cerises - Yves Montand
La Vie en Rose - Edith Piaf
Sous le ciel de Paris - Edith Piaf
 
by enzo_morinari | 2018-09-19 06:19 | コギト麦のエルゴスム・パン | Trackback | Comments(0)