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カテゴリ:モノリスの夜( 1 )

モノリスの夜#01

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今思えばまことに不思議不可解不条理で、きわめてリスキーな夜だった。モノリスにのしかかられているような大仰で物々しい気分が夜明けまでつづいた。発端は尻尾を日傘にする者と尻尾の影に座る者とZIPPOのオイルライターをシャキンシャキン鳴らす「20歳がひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせない」というのが口ぐせのポール・ニザンによく似たビロードアラヤカワイカワウソに化けた群馬県太田市出身で爆笑問題の太田が大きらいな借金で首がまわらない太田さんとZiplocにリアル・シットを封入して送りつける者と儲け話がポシャってシャポーを脱ぐ者と軍鶏を杓文字と銀の匙で追いまわす者と柳葉魚の偽物(カペリン= アレクサンドル・カペリン=魚類最強の干物/塩干物にして田舎者)を叩き売る者の戦いだった。

その夜、元麻布の秘密クラブ『モノリス』では、コペンハーゲン解釈に関するどっちつかずのことが語られ、リス広場とシカクヒロバリスとスクワール・イストワールとスクワール椅子とW杯についての議論が肉体言語付きで白熱し、パラダイム・シフトとストックホルム症候群がほぼ同時に生起し、ストックホルダーとステークホルダーの醜悪な罵りあいが酸鼻をきわめ、『Listen To The Music』と『Stay』と『The Road』と『時代』と『Grapefruit Moon』と『Danny Boy』がカンタービレされ、プレーリードッグ/マーモット/ジリスの穴倉栗鼠軍団V.S.シマリス/モモンガ/ムササビの「いじめる?」軍団のモノリス戦略に基づく戦いの火蓋が切って落とされた。早い話が狷介/剣呑で瑣末で猥雑で百科全書で犬儒派でFin de SiècleでFluctuat Nec MergiturでFestina LenteでDisséminationでAs Time Goes Byで出口なしの状況。1秒でもはやく家に帰ってモロッコ・ケヅメリクガメのカサブランカのシームを撫でたかった。

リスト・カットの名手を名乗るファム・ファタールが仲裁に乗り出すまで店内はリスどもの雄叫びやら唸り声やら息づかいやらで騒然とした状態だった。穴倉栗鼠軍団のプレーリードッグ司令官にいたっては『大きな栗とリスの歌』をバリストンで歌いだす始末だった。

『大きな栗とリスの歌』をバリストンで歌うプレーリードッグくらいやかましいものはない。田嶋陽子が金輪際似合わない土留め色のロングドレスを着て歌う『蝶々夫人』ほどではないにしてもだ。それにつけても、リスカールのチーズ味は手首が切れしまうほど切れ味鋭くうまいし、ビル・パクストンがパス・アウェイしたのはかえすがえすも残念である。「ほんとのウソ」だとツイスターしてくれよ、ビル。

「プレーリードッグの友情論」を卒論のテーマにして大深度地下の可能性と未来について論じ、コマツから「大深度地下プロジェクト」のアドバイザー就任のオファーを受けたプレーリードッグ・シンパの私でもうんざりだった。これでミーアキャットがいたらまちがいなく地球は割れる。さんまがいたらビッグバンはなかったことになる。マツコ・デブダルマが映ったらチャンネルをかえる。

リスどものラッダイト騒動のあいだ、『モノリス』にはフランツ・リストの『パガニーニの「ラ・カンパネッリス」と「ヴェリスの謝肉祭」の主題による大幻想曲』が小さな音でずっと流れていた。

演奏しているのはジョルジュ・シフラことリスト・インカーネイト、高血圧の農夫にして超高速疾走者/豹柄のラクダであるキリンのゲオルギオス本人である。弾いているグラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテはα線とβ線とγ線が不規則に配合され、憤怒と憎悪と絶望の埃が堆く積もったディアパソン DR-500。

by enzo_morinari | 2018-06-11 17:35 | モノリスの夜 | Trackback | Comments(0)