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STAY GOLD ─ 夕焼けをみる心が黄金なんだ。

 
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Nothing Gold Can Stay. Robert Frost
夕焼けをみる心が黄金なんだ。F-F-C
夕焼けがせつないのは太陽が別れを告げながらすべてを燃やしつくすからである。1日に起こり、思い、感じ、経験したもののすべてを。E-M-M


風邪っぴきのため、体調はなはだ悪し。咳が止まらぬ。体温38度7分。平熱が35度ほどの私にはかなりしんどい。人間という生き物はきわめて狭いサーマル・バンドの中で生きていることを実感する。

ひと晩、たっぷりと休養を取ったら、体調は驚くほど恢復した。景気づけに『レオン』『紅の豚』、そして『アウトサイダー』を立てつづけにみる。『レオン』は週に一度、『紅の豚』は月に一度、『アウトサイダー』は夕焼けをみたくなったとき、それぞれみる。特に『アウトサイダー』を見終えたあとはかならず夕焼けをみにいくことにしている。名うての夕焼け屋である私はいつどこでどのような夕焼けをみることができるか常に把握している。パーフェクト・グリップ。抜かりはない。抜かりはないがたまにオマヌケな事態になる。まあ、ご愛嬌ということだ。

アウトサイダー。好きな映画だ。内容は下町の「グリース」と呼ばれる不良グループと山の手の「ソッシュ」と呼ばれるお坊ちゃんたちの戦いと傷心と痛みの寓話である。

『アウトサイダー』は『地獄の黙示録』で山ほどの借財を抱えたフランシス・フォード・コッポラが資金稼ぎのために制作したといわれている。公開当時、YA/アメリカン・ヤング・スターズといわれた若手の役者が大挙して出演している。

トム・クルーズ、パトリック・スウェイジ、マット・ディロン、C.トーマス・ハウエル、ラルフ・マッチオ、ロブ・ロウ、ダイアン・レイン、エミリオ・エステヴェスら、のちに「大物」となる役者が目白押しである。

映画評論家どもやら訳知り顔の映画通どもに貶されることのほうが多い作品だったが、映画評論家も映画通もいっさい信用しないし、認めないから、彼らが『アウトサイダー』をどのようにこきおろそうと私の知ったことではない。

1983年公開。封切り初日に横浜馬車道の東宝会館でみた。映画は1人でみるものと決めている私が『アウトサイダー』だけはガールフレンドと一緒にみた。映画が終わって立ち上がれない私の背中をガールフレンドはずっとさすっていた。彼女自身もしゃくりあげながら。夕焼けのシーンからふたりともしゃくりあげていた。夕焼けはひとの心と魂を赤むけにする。そして、夕焼けをみる心の黄金は沈黙する。

あの日から36年が経ってしまったか。36年のあいだにのちに人生の同行者となるガールフレンドは死の淵を綱渡りするような過酷峻烈な闘病を経て、幼い女の子を3人残して自らの揺るぎなき強固な意志に基づいて尊厳死を選びとって夕焼けをみる心の黄金の物語を完結させ、パトリック・スウェイジは膵臓がんでエンジェル・ゴーストとなった。トム・クルーズはハリウッドというワンダーランドで押しも押されもせぬ大物となり、エミリオ・エステヴェスの実弟のチャーリー・シーンは救いようのないポンコツに成り下がった。私の「荒ぶる魂」もなりをひそめるはずだ。ポンコツヘッポコスカタンの無礼非礼を華麗にスルーできるようになったんだからな。時間は手加減なし容赦なしに残酷だが、ときとしてひとをいい方向に変えることもあるということか。

下町の「グリース」と呼ばれる不良グループと山の手の「ソッシュ」と呼ばれるお坊ちゃんたち。単純だが永遠の「階級闘争」が『アウトサイダー』の主題である。陳腐なテーマではあるが、この図式はずっと続くんだろう。変わらないもの、変えようのないものもまたいくらでもある。

『アウトサイダー』は20世紀前半のアメリカを代表する農村詩人、ロバート・フロストの詩集『New Hampshire』中の美しい詩『Nothing Gold Can Stay(黄金は情け容赦なくうつろう)』をモチーフのひとつとしている。人間は生まれたときは黄金のように輝いているが、時間の経過とともに輝きは色褪せる。しかし、だからこそ友よ、ずっと黄金のままでいてほしいというメッセージ。そのメッセージを受け取れない者の魂は錆つき、背中は煤けていると思ったほうがいい。

『アウトサイダー』のテーマ・ソングはスティーヴィー・ワンダーの『Stay Gold』だ。『アウトサイダー』の夕焼けのシーンでこの歌が流れるといつも鳥肌が立つ。「映画の夕焼けのシーン」ランキングがあればおそらく上位にランクインするだろう。肝心の夕焼け、夕映えが一部チープな合成/作り物という無作法不調法鼻白みがあるが、おのが魂、性根、心映えに黄金に輝く夕焼け、夕陽、夕映えがあれば気にもなるまい。要は夕焼けをみる心の黄金を持っているかどうかということだ。

映画のラスト近く。主人公のポニーボーイと主人公の親友のジョニーが夕焼けに染まる丘に立ち、すべてを赤く染めながら沈んでゆく太陽をみる。ジョニーがフロストの詩を引用したあとに言う。

「Stay Gold. ずっと黄金でいてくれよ。ずっと輝きを失わないでくれ。夕焼けをみる心が黄金なんだ。」

ジョニーはまもなく不慮の事故で大やけどを負って命を落とす。病院のベッドで死の間際にジョニーはポニーボーイに再びいう。

「黄金のままでいてくれよ」


東京時代はいい夕焼けをみるのにすごく苦労した。もっぱら浅草松屋屋上のフェンス越しに上野のお山の東天紅あたりに沈む夕陽をみるか、お台場海浜公園の夕焼け広場の芝生に寝転んで夕焼けをみるかすることが多かった。

きのう、心ふるえる夕焼けにまみえた。ここ30年でもっとも沈黙せざるをえない夕焼けだった。いつか、気持ちのいい風に吹かれながら、「締め切り」やら「予定」やら「約束」やらといった鬱陶しいことどもとは遠く離れて、燃えあがる夕焼けを時さえ忘れていつまでもいつまでも眺めてみたいものだ。ついでに、魂は錆びついていないか、赤むけか、背中は煤けていないか、まだおのが魂、心に黄金があるか否かの計測も。夕焼けをみる心の黄金の物語はまだ完結していない。


Stay Gold. 夕焼けをみる心が黄金なんだ。


Nothing Gold Can Stay / Robert Frost『New Hampshire』より

Nature's first green is gold,
Her hardest hue to hold.

Her early leaf's a flower;
But only so an hour.
Then leaf subsides to leaf.

So Eden sank to grief,
so dawn goes down to day.
Nothing gold can stay.

創造の時 滴る緑は黄金に輝き すぐにうつろう

創造の時 輝く葉は花 そして瞬く間に散りゆき
やがて葉はただの葉

エデンは悲しみの底に沈み 夜明けはただの昼
黄金は情け容赦なくうつろう




Stay Gold - Stevie Wonder (1983)
 
by enzo_morinari | 2019-03-28 02:38 | STAY GOLD | Trackback | Comments(0)