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カテゴリ:Fairy Tale of Tokyo( 7 )

Fairy Tale of Tokyo 最終の銀座線で会ったスリムなスライム・サンタクロースのプライマリー・バランスの悪いヘイト・クライムな話

 
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当時、泡劇場はすでにして大団円を迎え、カーテンコール目前だった。私は30歳をいくつか過ぎて、人生の締めくくり方ばかりを考える日々を生きていた。

主たる生活の眼目はスライムで世界を驚かせたり、クスリとさせたり、突然死させることだった。まさにスライム・ライフ、スライム・クライム・デイズ、スライム中心の日々だった。

南新宿の高層泡マンションのニュー・ステートメナー2458号室の仮眠スペースにはプラント・プラネタリアンからもらった総量42kgのオッペケペー・エケベリア色のスライムが出撃するのを待っていた。

クリスマスの浮かれ騒ぎバカ騒ぎを控え、街も浮かれポンチどもも幸せそうだった。ひとの困難困窮困憊も知らぬげに浮かれ騒ぎ、幸せそうな街や浮かれポンチどもに腹は立ったが、彼らはどこか憎めなかった。そうやっていられるのもいまのうちだ。すぐに天命反転、顔面蒼白、スライム色の日々がやってくる。そう思った。

最終の営団地下鉄銀座線渋谷行き。出発駅の浅草の時点で朝のラッシュアワーなみにごった返していた。どいつもこいつも酒くさいうえに七面鳥のにおいがした。いつものように地下鉄銀座線の大猿の呪いは現象化し、車内は瞬間的に闇に包まれた。

末広町からクレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいのする男が乗ってきた。ドクターシューズを履いていた。医者だ。まちがいない。ドクターシューズを履いていて、クレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいがするのは医者と相場が決まっていると刑事訴訟法の講義のときに團藤重光先生が言っていた。鳴神上人のような貌で。

ドクターシューズを履いたクレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいのする男は私の真ん前に立ち、吊り革につかまって揺れていた。

いまだ。いまこそがスライム・タイムだ。スライムの神さまの声がした。

私は前かがみになり、だれにも気づかれないように上着の両ポケットからオッペケペー・エケベリア色のスライムを取りだした。そして、目と鼻と耳と口にオッペケペー・エケベリア色のスライムを詰めこんだ。準備が整い、私はうめき声をあげながら顔をあげてのけぞった。クリスマスを目前に控えた渋谷行きの最終の銀座線は大騒ぎ、阿鼻叫喚ともいいうる事態になった。

「医師です。三井記念病院の内科医です」とドクターシューズを履いたクレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいのする男が叫んだ。以下の顛末は細部に神が宿ったらここに記す。

これだけは言っておきたい。ドクターシューズを履いたクレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいのする男、野本椎男はいまもいい友人である。つい先日、こともなげに余命宣告をしたギミアブレイク野郎だ。

「こうなる心当たりはありますか?」とドクターシューズを履いたクレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいのする男がたずねた。

「きのう、象牙海岸から帰国しました」
「えっ! コートジボワールですね?」
「はい」

ドクターシューズを履いたクレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいのする男は「このままつづけましょう。スライム遊び」と耳打ちした。

「えっ?」
「私はスライム・サンタクロース。目的はあなたといっしょです」

ドクターシューズを履いたクレゾールとコンドームとコールドクリームとアズカパンのにおいのする男はそう言ってオーバーコートをはだけた。全身がスライムに覆われていた。


Fairytale of New York - The Pogues (Christmas in the Drunk Tank/1987)
 
by enzo_morinari | 2019-08-07 13:05 | Fairy Tale of Tokyo | Trackback | Comments(0)

偶蹄目と奇蹄目のパイドパイパーとメイベリンとエイボンとマスカルポーネをめぐる暗闘

 
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ひょんなことから手に入れた『象牙の書』の42ページ42行目を42回諳んじたことがきっかけとなって偶蹄目と奇蹄目のパイドパイパーとメイベリンとエイボンとマスカルポーネをめぐる暗闘に巻きこまれることとなった。かえすがえすもついていない。

東西南北青山42丁目にある神話レストランのCthulhu Mythosで「マスカルポーネを多めに」と言ったのがそもそものまちがいだった。メイベリンのマスカラが42個もトッピングされてきた。話はそれで終わらない。『象牙の書』を抱えた古代ヒューペルボリアの大魔道士エイボンが現れて、「なぜエイボンのマスカラをトッピングしないのだ!」と憤怒のフンババを吐きだしたのだ。

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by enzo_morinari | 2018-10-27 22:25 | Fairy Tale of Tokyo | Trackback | Comments(0)

アル・ディ・メオラがOvation Custom Legend 1769 ADIIを弾く静かで親和的で神話的な夜

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アル・ディ・メオラの弾く『Have Yourself a Merry Little Christmas』が小さな音で聴こえる静かで親和的で神話的な夜だった。

Have Yourself a Merry Little Christmas - Al Di Meola
 
by enzo_morinari | 2018-10-14 08:22 | Fairy Tale of Tokyo | Trackback | Comments(0)

Fairy Tale of Tokyo 天使と妖精と酔いどれのクリスマスに向けて#2 いつかのクリスマスの夢

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あれはクリスマス・イヴだったな。いつものことながら飲みすぎて、誰彼かまわず喧嘩をふっかけてパクられて、トラ箱で相部屋になった酔いどれのじいさんに、「今年最後のお客さんの御登場だ」とからかわれたっけ。そのじいさんが『傷だらけの人生』なんて歌を唄いだしたもんだから、思わず目をそむけたよ。そしたら、いつしか眠くなって、夢におまえが出てきたんだ。

あんときはツイてたなぁ。なんせ、ロトで18000倍の配当だぜ!「これからの人生、バラ色だ!」ってガッツポーズを決めてやった。夢の中の話だけど。「ハッピークリスマス! 愛してるよ! これからおれたちの夢が全部かなって、ゴキゲンな人生をすごせるぜ!」って、おまえにキスの嵐をクリスマス・プレゼントがわりに贈ったよ。でも、それもやっぱり、夢の中の出来事だった。

「それって部屋かよ?」ってくらい大きなリムジーンが街中を走りまわって、ライトアップされた街並みは金色に輝いていた。でも、冷たい風は痩せっぽちのおまえを震え上がらせたな。おれは自分がしていた毛羽立ちだらけのくたびれ果てたマフラーをおまえの筋張った細い首に巻いてやるのが精一杯だった。

ふたりの有り金あわせて350円。おれたちの居場所なんて、きっと、もう世界中のどこにもないんだって思ったよ。

あの年のクリスマスはすごく寒かった。東京タワーが闇に浮かぶ六本木の路上でおまえはおれの手を初めて握ってくれたんだ。小さな手だった。小さいけれどもとても暖かな手だった。そして、おまえは言ったんだ。

「あんたはまちがいなく成功街道まっしぐらよ。フォーブズの表紙にだってのるわよ! そのときのあんた、すごくカッコイイよ!」って。おまえだってかわいかったさ。東京中を自慢してまわりたいくらいだったさ。これがおれのカノジョだぜって。

サザンオールスターズの『クリスマス・ラヴ』が終わってもアンコールはやまなくて、泉谷しげるが『ジングル・ベル』を替え歌で唄えば、大勢の酔っ払いが一緒に大合唱した。街角でキスをして、そのまま朝まで踊りあかした。

「クズ! ウソつき!」
「薬漬けババア! 点滴なしじゃ生きてけねえクセに! この足手まとい!」
「ウジ虫野郎! 薄汚いんだよ! ハッピークリスマス? 勘弁してよ。もう、やめにしようよ…」
「こんなハズじゃなかったんだけどな…」
「あたしだってそうだよ! あたしはさ、あんたに初めて会ったときに夢からなにから全部あんたに持ってかれちゃったんだ。わかってるの?」
「わかってるよ。いまでも、しっかり持ってるさ。おまえの夢とおれの夢。ちっぽけなかけらでも夢は夢だ。一人じゃなにもできないから一緒にいようって。そして、その夢でお前を包んでやるって」

さて、酒でも飲もう。今夜はクリスマスが終わるまでずっとつづくようないい夢が見れたらいい。

Fairytale of New York (Christmas in the Drunk Tank) - The Pogues
 
by enzo_morinari | 2018-10-07 02:10 | Fairy Tale of Tokyo | Trackback | Comments(0)

Fairy Tale of Tokyo 天使と妖精と酔いどれのクリスマスに向けて#1

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夢はとっくの昔に粉々に砕け散った。しかし、かけらはまだ残っている。


「酔いどれずにやっていられるものか」とアスファルトに吐き捨てる。東京はそうとでもしなければいられない街だ。

東京には天使も妖精もいるがなかなか姿をみせない。彼らはすごく気まぐれで気分屋でわがままなうえに音や光の具合にうるさいので姿をあらわす条件がととのうことはまれだ。

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音と光にあふれかえっている東京は天使や妖精どもの気分を損ねつづけている。しかし、ひとたび天使や妖精どもがあらわれると人生がいくぶんか色づく。

これは天使と妖精と酔いどれと彼らのおかげでほんのりと色づいたいくつかの人生の話である。いまは秋の初めだが、クリスマスの夜まで気まぐれにつづく。おそらく酔いがさめることはあるまい。千鳥足はさらに加速するはずだ。


夢はとっくの昔に粉々に砕け散った。しかし、かけらはまだ残っている。

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背景音楽
Fairytale of New York (Christmas in the Drunk Tank) - The Pogues
Same Old Lang Syne - Dan Fogelberg
 
by enzo_morinari | 2018-10-07 01:45 | Fairy Tale of Tokyo | Trackback | Comments(0)

孔雀と背の高い豆煙突とおしゃべり豆と金波銀波と金歯婆と出っ歯の三代目三遊亭金馬とマンボ・イタリアーノと巻き舌のRで歌うローズマリー・クルーニーと甥のジョージ・クルーニー

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楽をしてつかんだものには価値がない。
本当の幸せは額に汗してつかむものである。


これらは教訓にすぎない。教訓でめしは食えない。教訓で腹はふくれない。教訓はめしの種にならない。教訓でパンとバターは手に入らない。

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Rosemary Clooney - Mambo Italiano - 1954 originals
 
by enzo_morinari | 2018-10-07 01:23 | Fairy Tale of Tokyo | Trackback | Comments(0)

Fairy Tale of Tokyo/Blue Christmas, Little Christmas

 
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赤坂で育った。毎年、クリスマスが近くなり、赤坂の街が赤や白や緑や金色で装いはじめ、街のあちこちからいろいろなクリスマス・ソングが聴こえるようになるとときめいた。いつも見なれている街がまったくちがった表情を見せるのが好きだった。細く小さな路地さえ華やいでいた。曲名はわからなかったがたくさんのクリスマス・ソングをおぼえた。

乃木神社の近くに東京タワーを眺めるための私だけの「秘密の場所」があって、イヴの夜にはかならずそこで何時間かをすごした。寒さにふるえ、かじかんだ指先に息を吹きかけながらライト・アップされた東京タワーを眺め、おぼえたてのクリスマス・ソングを口ずさんだ。宝石のような時間だった。いまでは背の高いビルに阻まれて「秘密の場所」から東京タワーを眺めることはできないが、それでもなお、私には見える。ブルーで小さな私だけのクリスマスの夜が。


世界中のすべての人々にあまねくハッピーで素敵なクリスマスでありますように。北の国の人々にもフクシマで暮らす人々にも。そして、スクルージ爺さんにも。


Blue Christmas - Celine Dion


Blue Christmas/written by Billy Hayes and Jay W. Johnson

I'll have a Blue Christmas without you
I'll be so blue just thinking about you
Decorations of red on a green Christmas tree
Won't be the same dear, if you're not here with me

And when those blue snowflakes start falling
That's when those blue memories start calling
You'll be doin' all right, with your Christmas of white
But I'll have a blue, blue blue blue Christmas

You'll be doin' all right, with your Christmas of white,
But I'll have a blue, blue Christmas

君のいないブルー・クリスマス
君のことを思うと憂鬱になる
クリスマス・ツリーの赤や緑のデコレーションも
君がそばにいなければ意味がない

憂鬱な雪が降りはじめてつらい思い出がよみがえるとき
君はたのしく過ごすんだろうな 純白の雪に包まれたクリスマスを
でも僕は憂鬱なクリスマス 憂鬱なブルー・クリスマス

 
by enzo_morinari | 2011-12-24 23:42 | Fairy Tale of Tokyo | Trackback | Comments(0)