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カテゴリ:GRIP GLITZ( 13 )

GRIP GLITZ/ヌッコロシ停滞し、ウソとウゾと甘草とも萱草とも『余は烏賊を煮て鱚と螽斯となりし乎』の鑑三とも異なるカンゾー先生ことアンゴ先生、その実、堕落本然院実在居士に別れを告げる。

 
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踊り、溺れろ。Hazzy Miccoo
I suppose it's a bit too early for a Death.
GRIP GLITZ a.k.a. Villain Scoundrel/My name is GRIP GLITZ. I am Villain Scoundrel.


3日も殺していない。ウズウズする。ハンパなく、紀文のはんぺんを肴にウゾを立てつづけに42杯あおりたい気分だ。ウゾとはんぺんと私=殺しガマン。

私にとって殺すことは日常だ。殺せないことは断腸である。であるがゆえに、荷風翁の断腸亭日乗はおもしろい。濹東綺譚も。隅田川は決壊してしまえばいい。浅草神社のお社につづく石畳のど真ん中には四角く結界があるが、三々五々、つまりは三三五五垂楊に映じて採蓮曲を謡いながら参詣する善男善女艱難汝弱肉強食焼肉定食暴行傷害ヤキ入れ低所得者には頭を大きくしてパッチギを喰らわしたい。特にいけ好かない野郎選手権王者のミミズクの恨言の居残り佐平次と井筒和幸のヘッポコスカタン木偶の坊には。

そんなこんなで、傍でクリント・イーストウッドとジュリアーノ・ジェンマが夕陽に染まる荒野で連れション・オソロオキニ・コラボしたいとクレームをつけまくっているという事情もあるし、ふたりに荒野のガマン/夕陽のガマンをさせておくわけにもいかないし、わたしのガマンの限界利益率もヤバイことになってきているのでみつくろっって殺してくる。ひさしぶりに、ラオスの反政府ゲリラの兵士のフレッシュ・レバ以来、マークのフレッシュ・レバをハンニバル・カニバル・レクター風にアレンジして啜り喰おう。

カンゾー先生こと鮟鱇の肝好きのアンゴ先生、その実、堕落本然院実在居士みなさまのお墨付き肝臓が破裂したら、だれかむさぼり喰って、サイコーの晩餐/L'ultima Cenaにしてくれ。

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Corruption/堕落 初音ミク
 
by enzo_morinari | 2019-04-01 06:39 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

GRIP GLITZ/Tropismとヘリコプターと血液凝固とタンパク質の熱凝固と死ぬには手頃な日

 
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死ぬには手頃な日にヘリコプターでヘリオスコピアを頼りにヘリコバクターを探す。人生の日々が少しばかりヘルヘッヘンドするが、すぐにヘルス・エンジェルスどもからはGo to hell!という怒鳴り声がかかり、戸来村の村人42号からはHasta la vista, baby!とLevi's 501ZXX 1954 Zipper Modelのようにこざっぱり言われる。G-G

血液凝固とタンパク質の熱凝固はその機序は異なるが、止血とハードボイルドに大差はない。血が止まらなければ死ぬし、甘っちょろい半熟なら踏みつぶされるだけのことである。G-G


「ほっといても死ななきゃ、殺しにいくまでのことだ。決めた。今この瞬間に決めた。絶対に、そう絶対に、舌に苔が生えようと野郎が自然死することはゆるさない。」とGRIP GLITZはこともなげに言った。GRIP GLITZの憤怒の熱狂あるいは悲しき熱帯が強くにおった。容赦のない殺戮の熱帯夜のはじまりだった。

その夜、7人が肉の塊りになり、直後に王水処理され、肉の塊りも生きていた痕跡も消えた。Perfect Delete. 完全消去。GRIP GLITZはまたいい仕事をし、GRIP GLITZ Job Recordsに新しいページが加わった。


Tropical Island Beach Ambience Sound
 
by enzo_morinari | 2019-03-19 17:47 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

完全消去のためにGRIP GLITZはやってくる。

 
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完全消去のためにGRIP GLITZはやってくる。


「腕利きの掃除屋は手配済みだ。完全消去用の王水はポリタンク5本用意した。最後の春休みをせいぜい愉しむがいい。」

GRIP GLITZはそれだけ言うと、電話を切った。電話の相手は直後に肉の塊りになっているだろう。そして、完全削除/完全消去。Perfect Delete. 存在の痕跡すら残さない。完全な仕事は美しい。
 
by enzo_morinari | 2019-03-03 08:50 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

「きれいごとですむなら、だれも死にはしない。狼は生き、豚は死ぬ。それが街の掟だ」とGRIP GLITZは言い、容赦なく引き金を引いた。物言わぬふたつの肉の塊が保税倉庫No.42の前に転がった。

 
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手負いの獣にとってやさしさは危険を招く罠になる。Minato No Yo-Co Aggy

愛しい人よ。もう一度振り向き、もう一度この胸で泣きなよ。Minato No Yo-Co Aggy


「この街ではね、あなたのような手負いの獣にとっては、ときどき、やさしさが危険を招く罠になるのよ」

そう言ってから、女は細くしなやかな指で私の背中に貼りついた悲しみのたぐいをそっと引き剥がした。ざらついた悲しみをやさしく抱きしめ、幾粒かのダイヤモンドの涙を流した。女の背中ごしにみえる街が夕陽の中で燃えていた。この街は明日がみえないから、せめて、夜がくるまでは女の涙を信じようと思った。

私も女を抱きしめようとしたが、女はすでに姿を消していた。すると、本牧埠頭のD突堤のあたりから「狼は生きろ。豚は死ね」という低く唸るような声が聴こえてきた。夏八木勲の声によく似ていた。

狼は生きろ。豚は死ね。遠い昔、地図と羅針盤を失った19歳の冬の山下埠頭の岸壁で聴こえた声とおなじだった。声は心なしか年老いたように思えた。私自身も十分すぎるほど年老いていた。


欲望の街 (白昼の死角/1978)
 
by enzo_morinari | 2019-02-02 19:17 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

黒い絵描きのルノワール・ファム・ファタールとドイツ表現主義とフィルム・ノワールの夜

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かつて、目黒の権之助坂の中腹に喫茶室ウエストがあった。乃木坂の喫茶室ウエストとともに、時々、考えごとをしたいときに利用していた。ドライケーキをかじりながら。

喫茶室ウエストは、いわば私の思索部屋だった。しかし、ドトールコーヒーやスターバックスやタリーズの台頭とともに昭和のにおいを残す喫茶室はみるみるうちに姿を消した。喫茶室ウエストも例外ではない。「ドライケーキのウエストでございます。 」というシンプルで美しいCMを目にすることもなくなった。

喫茶ウエストのあとはルノワールとなり、ルノワールも撤退してしばらく「空き店舗」のプレートがかかっていた。目黒駅にほど近い場所柄、すぐになにかしらの店が入ると思っていたがそうはならなかった。

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きょうの昼すぎ、除去仕事のために目黒川沿いを下見した帰り道、勝丸でラーメンを食い、ついでにポーク亭でカツ丼を食べ、目黒雅叙園で雅叙園観光の残党を除去してから目黒駅方向に権之助坂を登った。

喫茶ウェストのあったビルは漆黒に塗り替えられて「黒猫社」という看板がかかり、喫茶室ウエストのあった2階にはシノワール・シャノワールというカフェ風の店が入っていた。

シノワール・シャノワール? Chinoise Chat Noir? 支那の黒猫? 黒猫社のビルに黒猫という名のカフェ。黒幇。黒龍会。龍頭...。気分の悪くなる言葉が次々に浮かんだ。

階段を小走りに駆けあがり、マットブラックの扉を押した。店の中はムスクのにおいが充満していた。

扉を入ってすぐの壁には黒い絵描きのルノワール・ファム・ファタールとすごすドイツ表現主義とフィルム・ノワールの夜というポスターが貼ってあった。ポスターはあきらかにドイツ表現主義の影響がうかがえるデザインと色使いだった。ポスターの下隅には小さく「『マルタの鷹』『黒い罠』『暗黒街の顔役』もノンストップ同時上映」とある。

黒い絵描き。ルノワール。運命の女。甘く危険な香りのする女。ドイツ表現主義。そして、フィルム・ノワール。

私は途轍もない災厄を孕んだ運命の歯車が音もなく回りはじめ、自分が陰謀/謀略の大迷宮に迷いこんだことをはっきりと感じた。そして、左脇のホルスターに収まっているFN Browning Model 1910の銃身を指先で2度撫で、Benchmade Vallation 407のグリップを握りしめ、「Grip Glitz」と口にした。

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The Cat - Jimmy Smith
 
by enzo_morinari | 2018-09-12 18:02 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

GRIP GLITZ#9 周到な準備が勝利を招く1

 
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男は殺しの前に"Amat Victoria Curam"とつぶやく。

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1957年型のフェラーリ 250 GT LWB Berlinetta Tour De Franceが静かに停まった。美しい曲面を描くドアが開き、無駄も一分の隙もない動きで左脚が出てくる。

男が履いている靴はガジアーノ&ガーリングの黒のミッチェルTG73だ。いや、黒ではない。わずかにブルーが混じっている。ミッドナイト・ブルー。6月の梅雨の合間の青空が映り込むくらいによく磨き上げられている。足はギリシャ先広タイプ。サイズ290/ワイズEほど。フレンチ・サイズなら44といったところだ。

「1mmも動くな。動いた途端に頭が吹っ飛ぶからな」

全身が音を立てて固まる。

「いい子だ。Amat Victoria Curam. 周到な準備が勝利を招く」

周到な準備が勝利を招く。男の言うとおりだ。

「おまえのスーツの着こなしはまるでなってない。それが目下のところの一番の懸案事項だ」

言い終えると同時に男は素早い動きで車から降りた。残酷な夏の始まりを告げる男、GRIP GLITZの登場だった。

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by enzo_morinari | 2014-06-05 19:38 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

GRIP GLITZ#8 モバードとハミルトンとトロピカル

 
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クルマ。時計。靴。スーツ。自由。友情。流儀。誇り。音楽。映画。読書。長い休暇。貧者の食卓。デイヴィッド・ホックニーのリトグラフ。ラブレスのカスタムメイド・ナイフ。McIntosh MC275。フロマージュ。フロマッジオ。良妻のスープ。アボカド。檸檬。ズッキーニ。万願寺唐辛子。酒。体脂肪率一桁。そして、カネ。── 女の出番は当分ない。E-M-M


昼下がり。街の中心部の裏通り。ヴィンテージのリスト・ウォッチ専門店。看板には「Festina Lente」とある。「"悠々として急げ"だって? 洒落臭い」とGRIP GLITZは低く唸る。寝言は寝て言え。苛立ちを吐き出す。眉間の皺が強く深くなる。GRIP GLITZの機嫌が最悪のレベルに入りつつあることを示す兆候だ。GRIP GLITZはさらに呟く。

「おれは悠々ともしないし、急ぎもしない。踏みつぶし、蹴散らし、姿を消す。それだけだ」

GRIP GLITZは店の扉を右足で蹴り、傲然とした足取りで店に入ってゆく。

「モバードの腕時計をした男を捜しているんだが」
「モバード? 色は? デザインは?」
「ブルー。明るいブルー。三日月形」
「ああ。文字盤とベルトがブルーの」
「そうだ」
「もうこの街にはいませんぜ」
「どこへ?」
「なんでも、”弛むことなき前進”とやらいう集まりに行くとかで」
「弛むことなき前進 ── 。あの野郎」
「旦那、なにか混みいった話ですかい?」
「混みいりすぎて、もう3人死んでる」
「そいつは恐ろしいことだ」
「ほかになにか知ってることはないか?」
「無料の場合はここまでですがね」
時計屋はGRIP GLITZの腕をちらりとみやる。
「おや。旦那、いい時計をしてますな。HAMILTONのVENTURAとは。しかも、オリジナルだ」

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「爺さんの形見だ」
「そいつを欲しがっているコレクターがいるんですがね」

GRIP GLITZの血相が変わった。表情がみるみる曇っていく。1秒刻みで険しさを増す。

「おい。おやじ。まだもう少しは長生きして、クソまずいおまんまをそのへらず口に詰めこみたいんだろう?」

声にそれまでとはちがう凄味が加わる。数知れぬ修羅場と地獄をくぐり抜け、血が迸り、肉が弾け飛び、絶叫と悲鳴が子守唄がわりの戦場を鼻歌まじりに悠然と横切ってきた者の凄味が。

「旦那、旦那。冗談ですよ、冗談」
「はきちがえるなよ、時計屋。時計屋ふぜいがおれと駆け引きするのは百万年早いぜ。身のほどをわきまえるこった。おまえさんは時計のことだけ考えてりゃいいんだ。余計なことに首を突っ込むな。時計に余計は禁物だ。でなけりゃ、正確に時を刻めない。時計屋が余計なことに首を突っ込めば死刑がお待ちかねという寸法だ。まだ死のカウントを刻みたくはないだろう?」

時計屋の顔から血の気が引いてゆく。唇はわなわなと震えている。それまでとは打って変わって媚び諂うような表情になった。

「で、知ってることを全部話す気になったか? あん? どうなんだ?」
「もちろんですよ、旦那。知っているかぎりのことは全部話しますよ」

時計屋は洗いざらい話した。話す必要のないことまで。ほっておけば母親の浮気の現場のことまで話しはじめそうな勢いだ。

「礼を言うぜ。これはほんの気持ちだ」

GRIP GLITZは浅黒く引き締まった左腕からHAMILTONのVENTURAを外し、ショウケースの上に置いた。そして、最後通牒を言い渡した。

「おれのことをモバードの男のように話すんじゃないぜ。長生きしたきゃな。わかったな?」
「もちろんですよ、旦那。だれにも旦那のことは話しゃしませんよ」
「おれに嘘と冗談は通用しねえからな。おぼえとけ」
「肝に命じますよ、旦那」
「わかりゃいいんだ。わかりゃあな。で、いま店で一番高い時計はどれだ?」
「へいへい。お待ちを」

時計屋は奥の金庫を開け、パテック・フィリップのトロピカル・ゴブリンを恭しく取り出した。GRIP GLITZは眉ひとつ動かさずに受け取り、ケースの傷み具合、ダイアルと文字の劣化、運針音、ゼンマイの巻き上げ具合、竜頭の動きを確かめた。

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「中の機械はちゃんとしてるんだろうな?」
「バッチリですよ、旦那。文句のつけようがありません」
「歯車や雁木車やバネやゼンマイがつぎはぎだらけってことはないな?」
「ワンオーナーもので、メンテナンスは2年に一度、パテックの本社で念入りにやってきたものですよ、旦那。正真正銘、オリジナルのまんまですぜ。これだけのトロピカルにはそうそうお目にかかれるもんじゃございませんですよ」
「できれば前の持ち主の仕事が知りたいんだがな」
「なんでもペリーが浦賀にやってきたころからの老舗の御主人だそうで。ちょっと待ってくださいよ。台帳に書いてあったと思いますので」

時計屋は小刻みに指を震わせながら台帳のページをめくった。目指すページが見つかると知らぬ者のいない老舗の貿易会社の名を言った。GRIP GLITZはそれを聴くと、いかにも満足げにうなずいた。そして、再度、手にしている時計を確かめた。時計屋の言うとおり、コンディションは完璧だった。ダイアルのエナメルもいい状態だ。クラックなどこれっぽっちもないし、灼けてもいない。極上のトロピカルだ。

「いいだろう。こいつをもらおう。いくらだ?」

時計屋は大卒の初任給2年分近い金額を言った。恐る恐るだが。GRIP GLITZは「電話を借りるぜ」と言い、表通りの銀行の支店長に電話した。5分後、太った禿げ頭の男が大汗をかいてやってきた。GRIP GLITZがアゴでショウケースの上を指し示すと、デブハゲ男は札束をショウケースの上に積み上げた。GRIP GLITZはデブハゲが寄越した書類に無造作に書き込んだ。書類を受け取り、デブハゲは来たときよりもさらにあたふたしながら帰っていった。

「また来る。今度は気のいい時計マニアの客としてな。ついちゃあ、ヴァシュロン・コンスタンタンの1958年の手巻きを探しておいてくれ。ミント・コンディションのをな。ケースはトノーのピンク・ゴールド。ダイアルは黒でブレゲ数字。スモール・セコンド。カネに糸目はつけない。こいつは手付金がわりだ」

GRIP GLITZは言い、大層な厚みの札束を放り投げた。青ざめ、震えていた時計屋の顔に光が戻る。

「大急ぎでお探しいたしますよ、旦那!」

踵を返し、出口に向かうGRIP GLITZの背中に時計屋は何度も何度も頭を下げた。明るいブルーの三日月形のモバードがGRIP GLITZの若い愛人の腕に巻かれたのは3日後だ。
 
by enzo_morinari | 2013-07-22 08:07 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

GRIP GLITZ#7 ハンク・モブレーが「Work Out!」と叫ぶ夜

 
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そもそも世界に「答え」など存在しない。なぜなら、初めから世界のどこにも「問題」が存在しないからだ。「答え」が欲しいなら「問題」をつくるしか手はない。「問題」をつくりたいなら「答え」を探せ。探しているうちに「問題」は出来あがる。それがこの世界の明瞭にして精緻な「仕組み」である。 E-M-M


「で、ケムリにしたいのは何人なんだ?」
「全部で11人」
「そいつはちょいとお高くつくぜ」
「はい」
「全部まとめてがいいか? それとも一人ずつ仕留めるか? おれのところの料金表では、全部まとめての場合は逆スケール・メリットだ」
「全部まとめてでお願いします。カネに糸目はつけません」
「わかった。標的のリストを今から言うアドレスに送れ。以後、おれとは一切コンタクトを取るな。いいな?」
「わかりました」
「おれとおまえは会ったことも口をきいたこともない。互いの存在すら知らない。いいか? わかったか?」
「すべて仰るとおりにします」
「決行は9月11日。図体のデカい空飛ぶ金食い虫がニューヨークの悲劇を起こした日だ。おまえさんはその日、日本を離れていろ。いいな?」
「わかりました」
「不自然はいかんぜ。なにごとも。日本を離れる理由も辻褄が合うように今から段取りしておくんだ。わかるな?」
「はい」
「11人のお客さんの死に際の写真はどうする? 動画、音声付き音声なし、ただの画像。なんでもござれだ。ただし、別料金。音声付きの動画は高えぜ」
「音声付きの動画でお願いします」
「わかった。みるためのアドレスもあとで知らせる。パスワード付きでな。ダウンロードはできないからな。みるのも1回だけだ。おまえさんが見終わると同時にサイトそのものが消滅する。証拠の消去だ」
「了解です」
「最後にこれだけは言っておく。おれを裏切るような真似だけはするんじゃないぞ。いいな? おれは裏切り者をゆるさない。断じてだ。わかるな?」
「もちろんです」
「聞き分けのいい坊やだ。じゃあな。もう会うこともない」

雨が降り出した。痛い雨が。ラジオではハンク・モブレーがしきりに「Work Out!」と叫んでいる。ジムに行く時間だ。
 
by enzo_morinari | 2013-07-18 03:32 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

GRIP GLITZ#6 東京ハードボイルド・ナイト#1

 
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東京の街に夜の帳が降りはじめるまで Havana Club をショットグラスにダブルで2杯分ある。

「ゆうべの仕事は久しぶりにきつかった。夜の新宿の雨は痛い。特にいやな仕事のあとの夜の新宿の雨は」

GRIP GLITZの言うとおりだ。新宿の雨は痛い。どれほど小さな雨粒であっても肌に突き刺さる。特に、息の根が停まったのを確認するために近づき、肌の美しい女の死顔をみたあとの新宿の雨は。新宿の雨が痛みを増したのはいつからだったか確認しておく必要がある。

GRIP GLITZは渋谷川沿いに新しくできた Havana Club のテラスでおそすぎる昼めしのテーブルについていた。世界のだれにも晩めしとは言わせない。GRIP GLITZが昼めしと言ったら昼めしだ。たとえマイルス・デイヴィスが世界の片隅で始まりも終りもないステップを踏みはじめる真夜中であってもだ。

昼めしはいつも決まっている。ピッツァが1枚だ。極上のサラミーノ・ディ・ブッファラと良心的なフィオル・ディ・ラッテの二種類のフォルマッジオが等分に領土を分け合っているスタジオーニのマルゲリータにイベリコ豚のプロシュートとバジルをたっぷりのせたピッツァ。メニューになければ作らせる。材料がなければ調達させる。制限時間は1時間だ。料理人に有無は言わせない。是非もない。そもそも、GRIP GLITZの生きる世界に有無も是非も存在しない。なにごとも学び、努力する姿勢が世界をよくする。

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きょうのGRIP GLITZの昼めしには手頃なドルチェがついている。まだ肝心のピッツァが焼き上がらないというのに、すでにドルチェはGRIP GLITZの前で神妙な面持ちで縮こまっている。その顔は遠目でもわかるほどに青ざめている。

「下衆外道がなんの用だ?」
「申し訳ございませんでした」
「謝罪するということはおれが謝罪を受け入れると高をくくったという了解でいいのか?」
「高などくくっておりません」
「で? さっさと用件を言えよ」
「用件はきちんと謝罪したいということです」
「謝罪? その謝罪とやらにはいくら元手がかかってるんだ?」

黙り込むドルチェ。

「命を差しだす覚悟はできてるんだろうな?」

さらに黙り込むドルチェ。息づかいが荒くなる。息づかいの荒いドルチェにはそうそうお目にかかれるものではない。ドルチェはたいていの場合、柔和で甘美で穏やかな表情をみせているものだ。だが、GRIP GLITZは足首の引き締まった美人には目がないが、それ以外、息づかいが荒かろうが柔和で甘美で穏やかであろうが、ガッバーナ婆さんの焼いたタルト・タタン以外の甘いものを口にはしないし、甘口のワインなどは憎んでさえいる。

「おれがおまえさんに言いたいことはただひとつだ。のたうちまわり、もがき苦しみ、むごたらしく死んでゆけ」

はらわたがよじれるほどいい香りを辺りに撒き散らすピッツァがやってきた。ドルチェは震えながら死刑台のエレベーターに乗った。明日の今頃には天国の扉を押しているか、さもなくば、地獄の釜を覗きこんでいるだろう。打ちひしがれたドルチェをGRIP GLITZはちらともみない。GRIP GLITZにとってはありふれた日常のひとこまにすぎないからだ。GRIP GLITZが水牛チーズのほうのピッツァをひと切れつまみ上げると同時に夜の帳が深々と降りてきた。GRIP GLITZはつぶやく。

「いい昼めしが人生を楽しく愉快にする。フィデル・カストロもくたばる前にそう言うはずだ」

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by enzo_morinari | 2013-07-15 04:40 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)

GRIP GLITZ#5 クロノスの大鎌

 
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ついにクロノスの大鎌をふるうときはやってきた。待ちに待っていた。この瞬間を。この愉悦のときを。


「あのひとは必ずわたしを殺しにくる」

女の顔には深い皺と苦痛が刻まれている。アルビノのように白い肌は青黒くくすみ、眼のまわりには大きく濃い隈が張りついている。薄い唇は潤いを失って干涸び、息は猛烈に臭い。死神に見入られている者の姿だ。そして、女の最大の不運は「あのひと」がこの私であることだ。

女は私が「あのひと」であるなどとはこれっぽっちも考えていない。それどころか、女にとって私は世界で唯一、女を支え、勇気づけ、守る存在であるとさえ考えている。だが、そろそろ、クロノスの大鎌をふるう頃合いだ。

「脱げ。そして、跪け」

女はいつもどおり、私の命令に従う。服の脱ぎ方、畳み方は実に丁寧で、気品さえ漂っている。

女が跪く。そして、懇願するように私を見上げる。不調和に大きな眼と長い睫毛と乳白色の肌。渾身の力をこめて平手打ちを喰らわす。女の口から愉悦と苦痛が入り混じった声が漏れる。

「もっとお願いします。もっともっと強く痛くにお願いします。破壊しつくしていただきたいのです」
「ふん。もうお遊びはおしまいだ」

女が「え?」という表情をする。踏みつけたくなる衝動をこらえる。女の顔のかたちが変わるまでスパンキング・ラケットを振るいたくなるのも我慢する。女の肉が裂け、鮮血が迸るのをみたい衝動を抑えつける。だが、それも限界だ。最後にもう一度だけだ。
ハリバートンのゼロを開け、黒いスパンキング・ラケットを取り出す。これ見よがしに何度か手のひらを叩くと、にわかに女の表情に喜びと欲望の色が現れた。

「お願いいたします。肉が裂けるくらいに強くお願いいたしま ──」

女が言い終える前に全身を撓らせてスパンキング・ラケットをふるう。クロノスの大鎌をふるう気分で。大審問官の威厳と傲岸と不遜をもって。

裸電球ひとつの暗い地下室に大きな破裂音と肉の裂ける音が反響した。その残響はいつまでも消えない。死神の笑い声とも聴こえる。

「XYZで乾杯したい気分だ」
「え?」
「これでおしまい。おさらばってことだ」
「どういうことでしょうか?」
「私がおまえを殺しにくる”あのひと”だってことだよ」
「まさか。そんな ──」
「そのまさかだ。おまえはこの地下室で死ぬんだ。闇の中でな。娘のことは心配するな。すでに私の手中にある。そして、調教の第2段階はもうすぐ終了だ」
「やめてください! いやな冗談は!」
「右の第三肋骨にある大きな傷痕に蝋燭を垂らすとすごくよろこぶよ」
「まさか ──」
「そのまさかなんだ。おまえのことが憎くてしょうがないそうだ。早く死んでほしいといつも言っている」
女の大きな眼がさらに大きく見開かれ、大粒の涙が溢れ出す。その涙のゆくえを見届けぬまま、地下室を出た。扉を閉めるときの音はいまでも耳に残っている。4年前の春の盛りのことだ。
 
by enzo_morinari | 2013-06-17 17:18 | GRIP GLITZ | Trackback | Comments(0)