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カテゴリ:約束の地と少しの休息( 1 )

約束の地と少しの休息/疲れ果ててしまった古い友人とRoby “Big-Boy” Duke

 
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遠い昔に聴いた音楽は楽園の記憶をよみがえらせる。


1991年のクリスマス週間前。北風が身にしみる日だった。眼のまわりに濃い隈を貼りつけた古い友人と一緒だった。

「もう疲れちゃったよ」と古い友人は言った。私には疲れた古い友人にかける言葉がみつからなかった。

「ほんとにすごく疲れちゃったんだ」と古い友人は繰り返した。私は言葉をかけるかわりにオーディオ装置の電源を入れた。CDプレイヤーにRoby Dukeの”Not The Same”をセットし、8曲目と10曲目をリピート・セットした。”Rested in Your Love”と”Promised Land”. すぐにRoby “Big-Boy” Dukeが”It’s so sweat be a child…”と歌いはじめた。

古い友人とはいくつもの季節をともに生きた。そのあいだ、去る者がいて、理解を示す者がいた。多くの友だちと出会い、少しの友だちが残った。それでいい。それが人生という一筋縄ではいかないゲームのコンテンツであり、サブスタンスであり、マターであり、コンテクストであり、パースペクティヴだ。

自分の人生、日々を俯瞰的にクールに眺めながらすごすのが性に合うならそうすればいいし、私のように正面突破、My Way, My Own Styleでやりすごすのもまたひとつのゲームの進め方だ。他人がとやかく口をはさむべきことではない。

アルプスを迂回するルートも存在するし、マドレーヌ峠やラルプ・デュエズ峠に果敢にアタックするアルプス越えのルートだって存在する。両者のあいだにはなにひとつ善悪、価値の高低差などない。あるのは与えられた時間/残された時間の問題と燃費の問題と流儀、掟、スタイルのちがいとマルコ・パンターニ伝説に心を動かされるか否かのちがいだけである。坂口安吾だって言っている。人間を救う便利な近道はない。

そのような日々を送るうちにいくつもの季節がすぎてゆき、酒の味をおぼえ、酒の飲み方を学び、酒の苦さを知り、数えきれないほどの音楽と映画と書物とテクストと喰いものとガラクタのような快楽群と宝石のごとき愉悦と笑いと涙と不思議な出来事と古い友人がいつも私といっしょだった。

いい青春? さあね。私にはわからない。もっと楽しくてハッピーで和気藹々で建設的で生産的で知的でお上品でリッチでセンスのいい青春はいくらでもあったろう。だが、少なくともそれらは私のスタイル、私の流儀、私の掟に則ったものではない。おそらくは古い友人にとっても。

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サーフ天国、スキー天国、そして、AOR天国。ビル・ラバウンティの”Livin' It Up”はすごくイカしてたな。デヴィッド・サンボーンのアルト・サックスもクールでソウルフルだった。ドラムスはスティーブ・ガッドだし、パティ・オースチンもバック・メンバーにいた。ほかにも超のつく豪華なスタジオ・ミュージシャンがビル・ラバウンティの脇を固めていた。”Slow Fade””Dream on””It used to be me””This Night Won't Last Forever”なんかもグッときた。

Livin' It Up - Bill LaBounty (1982)

さらに忘れられないのがロビー・デューク。ロビー・デュプリーではなく、ロビー・デューク。惜しいことに、本当に惜しいことに2007年のクリスマスの翌日に死んでしまった。

クリスマス・イヴのライヴの最中にステージ上で心臓麻痺を起こし、二日後に息を引き取った。51歳と20日。今夜はロビー・デュークの曲で一番好きだった”Rested in Your Love”と”Promised Land”を交互に繰り返し聴きながら夜の果ての旅をやりすごすことにしよう。魂に届き、心にしみ、約束の地へとつづくメロディと声だ。ひな祭りの朝に逝った須藤薫と1991年のクリスマス・イブに逝った古い友人にも届けばいい。


「約束の地」へは涙のステップを踏みながら、少しの休息をとりながら、ゆっくりと歩みを進めることとする。急ぐ旅でもない。


Roby Duke (Dec 6, 1956 - Dec 26, 2007)
Genre: ROCK/AOR, CCM(Contemporary Christian Music)

*2007年のクリスマス・ライブ中に心臓麻痺を発症。クリスマス翌日に死去。


My own epitaph for Roby Big-Boy.
Roby Ward Duke (Dec 6, 1956 - Dec 26, 2007)
Please rest and release your heart in peace. Roby Big-Boy, You've crossed the river into the Promised Land and you'll never have a broken heart again, Never. And I pray for your sister in GOD.


Rested in Your Love → Promised Land - Roby Duke (Not The Same/1982)
 
by enzo_morinari | 2019-11-06 23:36 | 約束の地と少しの休息 | Trackback | Comments(0)