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カテゴリ:No Leaf, No Life.( 1 )

No Leaf, No Life./凍った森、ジョージ・ウィンストンのThanksgivingがしみた夜

 
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沈黙ノートの最後のページを閉じ、DEAP-4200でみつけた暗黒物質を放った森は瞬時に凍った。瞬間冷凍。すべては暗礁に乗り上げた。

No Leaf, No Relief. No Leaf, No Believe. No Leaf, No Belief. No Leaf, No Lief. No Leaf, No Life.


ジョージ・ウィンストンのThanksgivingがしみた夜
1982年の冬。24歳の誕生日に元妻1号がプレゼントしてくれたのはジョージ・ウィンストンのDecemberだった。

私も元妻1号も痛いくらいに若かった。手づかみで赤むけで無垢だった。時代は軽佻浮薄上っ面上っ調子におぼつかない足取りで突っ走っていた。泡劇場の開幕が間近に迫っていた。

どいつもこいつも、頭の中にオガクズかオカラが詰まっているように思われた。実際、そうだったんだろう。なんとなくクリスタルな風に吹かれ、ジョシダイセーなる珍妙奇天烈なイキモノが街を肩で風を切って歩いていた。どこもかしこもジョシダイセーがわがもの顔でのさばっていた。

私の部屋で私と元妻1号はずっと無言だった。話すことがないからだったか、話すほどのことがなかったからか。あるいは、話すまでもなかったからか。いずれにしても、私も元妻1号も口をきかず、ジョージ・ウィンストンのDecemberを1音も聴きもらすまいと耳をそばだてていた。世界にも。

Decemberの1曲目のThanksgivingが5回目にかかったとき、元妻1号が口を開いた。

「これで、もう思い残すことはありません」
「うん。おれもおなじことを考えてたよ」
「ありがとう」
「こちらこそ。で、いつにする?」
「すべてあなたにおまかせします」
「そうか。計画立案が済むまでここにいるといい」
「そうするわ」
「Suicide Noteでは生々しすぎるから、Sound of Silence. 沈黙の音…。そうだ! 沈黙ノートにしよう。1ページ目はおれ、沈黙ノートの最後のページはおまえ。OK?」
「もちろん、OKよ。でも、真ん中の空白のページはどうするの?」
「そうだな。生き残ったやつらが勝手に埋めりゃいい」
「なんだか、それは癪にさわるわね」
「じゃあ、こうしよう。沈黙ノートで交換日記。ページが全部埋まるまで」
「それ! ステキ! イカす!」

ツバメの大学ノートの表紙に油性ペンで沈黙ノートと書き、連名で名前を記した。かくして、沈黙ノートの1ページ目と最後のページ以外のページを埋める日々が始まった。トリスの安酒とジョージ・ウィンストンのThanksgivingがやけにしみる夜だった。


George Winston: December - Full Album (1982)
 
by enzo_morinari | 2019-09-02 20:27 | No Leaf, No Life. | Trackback | Comments(0)