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空っぽの心をかかえ、記憶もなければなにもない風の道を歩く。 ── 遠く去った"Get back in love" in 1988

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寒かった1988年の夏が終わり、3度目のRadio Daysが始まろうとしていた。人生のアジムスと日々のノイズ・リダクションと水平線を超えることとクロスオーバー・イレブンとジェット・ストリームと「人間分子網目の法則」に彩られ、「僕の中の少年に捧げる」とつぶやく日々だった。モヤシ君とコペル君がいつもそばにいた。

周囲にいる善良な人々は、愛することのやさしさと信じることのぬくもりがみつからずに傷ついているように思われた。すべてはいつか二度と取りもどせない思い出にかわるのだとも知らずに。

鎌倉山のブーランジェリー・クープの石焼き釜の上に置かれたBOSE 101-MMGからはいつも山下達郎の『Get Back In Love』が聴こえていた。時代はアナログからデジタルに容赦なく変わろうとしていた。もう少しで愛に変わるはずだった恋は二度と取りもどすことのできない場所に去った。「思い出にしたくない。」と言って姿を消したきれいなクープのパン・ド・カンパーニュをとてもじょうずに焼くショート・ボブの女の子のゆくえは知れず、風の便りもない。

空っぽの心をかかえ、薄明かりのガラス窓をつたう雨のひとしずくのゆくえを数えきれないほど見送ってきた。今は、記憶もなければなにもない風の道をただ歩いている。


Azymuth - Fly Over the Horizon(Light As a Feather/1979)
山下達郎 - Get Back In Love(僕の中の少年/1988)


by enzo_morinari | 2022-06-29 19:31 | RADIO DAYS | Trackback | Comments(0)
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