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日々の異言/ダイナスティナ・グロソラリア語とマドレーヌ現象(自動書記/自動発語)とヂサフィナードゥの女。そして、Pole pole, ndiyo mwendo.

日々の異言/ダイナスティナ・グロソラリア語とマドレーヌ現象(自動書記/自動発語)とヂサフィナードゥの女。そして、Pole pole, ndiyo mwendo._c0109850_02165420.jpg

『サイコパスの肖像』を描きあげ、与那国島の暴風域まみれの鼻行類世界に迷いこんでから3日目。名うてのインセクト・マイスターであるヨーロー教授は私の耳元で「ギシギシギシギシ」と言った。まちがいない。ヨーロー教授は「ギシギシギシギシ」と言った。2回。あるいは3回。あるいは4回。

鼻行類世界の最西端に位置する場所の暴風域圏内においては、まちがいなく「ギシギシギシギシ」としか聞こえなかった。「ギシギシギシギシ」としか聞こえないのはヨーロー教授が「ギシギシギシギシ」としか言っていないからだが、いささかなりともダイナスティナ・グロソラリア語を聞きとれる者にはヨーロー教授が世界認識、世界解釈を根本からひっくり返すほどのことを言ったのがわかる。

「あーむ。君のマドレーヌ現象のことだがね。あれは異言だよ。異言。」
「やっぱり。」
「異言がどこから来ているのかと問うてはいけないよ。」
「そりゃまたどうしてですか?」
「問いにいつでも答えが用意されているとはかぎらないからさ。」

平行植物世界のコパカバーナの海岸には「ギャングの時間」が訪れていた。やけにさびしそうな夕暮れどきだった。もうすぐ、ヂサフィナードゥの女が調子っぱずれに『ナコソシレソイワキ音頭』を歌い、踊りながら現れるはずだ。「ヨナグニジマノボーフイキバーディギャーマンズコマデスマダギャー」と呪言を吐きだしながら。通奏低音は呆阿津怒哀声で。


ヨーロー教授はヘラクレス・オオカブトムシにメタモルフォーシスし、与那国島の暴風域まみれのハマボウフウウの酢味噌和えを貪り喰っている。


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時間とベケットとラマヌジャンとメタモルフォーシス
ガジンと並んで大きなラピス・ラズリに腰かけ、きわめて加算的付加的なインド音楽のリズムでサミュエル・ベケットを待っているあいだ、時間は普段よりずっと間延びし、のっぺりとした貌をみせつづけた。

私とガジンの前をラヴィ・シャンカール色のタクシーがひっきりになしに通りすぎた。ガジンは私が制するのも聞かずにラヴィ・シャンカール色のタクシーのナンバーからラマヌジャン・タクシー数1729を91個みつけた。

「悪魔が来ちゃうじゃないか。」と私はガジンに言った。
「あんたが悪魔だろう?」
「なんだ。知ってたのか。」
「そりゃね。知らなきゃ、伊達や酔狂で酷寒のミル・プラトーの頂上で2年もデジタルべジタリアンとしてデジタル・デバイド・バイトの日々を引き受けたりしない。」

そのうち、「間の山」のほうから『浜辺のアインシュタイン』と『屋根の上の1000台の飛行機』と『水素のジュークボックス』と『めぐりあう時間たち』と『メタモルフォーシス』が聴こえてきた。

「もう一日待とう。明日ベケットがこなければ首を吊ろう。」

私が言ってもガジンはもはや私の言葉を理解できない怪物に変身していた。フィリップ・グラスの『メタモルフォーシス』の作品5が終わると同時にガジンは蒼穹に向かって急上昇し、小さな点になり、消えてしまった。「明日ベケットがこなければ首を吊ろう。」と思った。
by enzo_morinari | 2021-09-20 05:01 | 日々の異言 | Trackback | Comments(0)
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