過ぎていくのね 愛の命も 白く輝く雪がやがてとけるように
はかなく消えた昨日の夢のあとに残るはただ冷たい涙ばかり Pierre Barouh
フランス語の個人教授はマルコヴィッチ事件の容疑者だった。
彼女が逮捕される前日。私とフランス語の個人教授はパレ・グルノーブルの北側にある古いビストロにいた。2人の最後の晩餐だった。
真冬のグルノーブルのビストロでナタリー・ドロンによく似たフランス語の個人教授は別れのしるしにとConfiserie PierreのAmoureux Blancsをひとつだけくれた。
「ひとつだけ?」
「そうよ。その意味をずっと、生きているかぎり考えつづけなさい」
白い恋人たちはなにゆえにかくもせつなく甘く香しいのか? 一度きり、次も先もないからである。
La leçon particulière/個人教授 - Francis Lai13 jours en France/白い恋人たち - Francis Lai