午前2時。気温-2度C。風はないがしみる寒さだった。見上げる月は遠く、クールだった。
ウッドデッキからプシシェの森の気配をうかがいながら世界の終わり方について思いをめぐらせていると森の奥から2008年の春に死んだポール・デイビスの”Cool Night”が聴こえてきた。40年も前の曲。「AOR」とつぶやてみる。「Adult-Oriented Rock」とも。「なつかしき1980年代」とも。「I Go Crazy」とも。
ポール・デイビスが2回目のリフで”It's gonna be a cool night.”を”It's gonna be a ghoul night.”と歌ったところで異変は起きた。世界が不機嫌に顔を歪めるパキパキパキという乾いた音が確かに聴こえた。そして、プシシェの森の奥から墓場の屍体を喰らう悪鬼があさましいアンデッドどもを引きつれてやってきた。クールでグールな夜のはじまりだった。
Paul Davis - I Go Crazy (Singer of Songs: Teller of Tales/1977)Paul Davis - Cool Night (Cool Night/1981)