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憂國の夢 草莽に果つるとも/英霊の聲に耳をすまし、不逞の輩のたぐいの一切合切を斬奸始末するための北一輝レッスン

 
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言多きは退くなり 野村秋介

しき嶋のやまとごゝろを人とはゞ朝日にゝほふ山ざくら花 本居宣長

かくすればかくなるものと知りながら やむにやまれぬ大和魂 吉田松陰

憂國の夢草莽に果つるとも 松の雫は久坂に宿り 花は桂の枝に咲く Philosophy Starfield


Ultra-Nationalismへの招待
英霊の聲に耳をすまし、不逞の輩の一切合切を斬奸始末し、『日本改造法案大綱』+『國體論及び純正社會主義』を解読するための北一輝レッスン


午前2時42分。ただならぬ気配に呼ばれて帝都東亰に向かった。カー・ナビゲーションは使わずにマドレーヌ・ドライビングした。

着いた先は目黒不動尊泰叡山瀧泉寺。所要時間24分。平均速度は150km/hをゆうに超えている。横浜横須賀道路と第三京浜で覆面パトカーを計3度ふりきった。闇を切り裂く漆黒のLamborghini Aventador LP770-4 SVJ。横浜横須賀道路では300km/hオーバーを記録した。無視した信号の数は54個。道路交通法に抵触する行為はやっつ。ただならぬ気配はさらに強くなっていた。

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車を道路の中央に斜めに停め、1度2度3度とゆっくり深呼吸してから沖縄剛柔流の外気呼吸法/息吹を行った。ただならぬ気配はさらに強くなり、実体さえともなっているように思われた。このとき、私は私を呼んでいるものがなにものであるかについてほぼわかっていた。確信した。それは北一輝である。北一輝は私の生物学上の父親の生物学上の父親である。つまり、私の生物学上の祖父だ。もちろん、会ったことはない。北一輝は二・二六事件の首魁として国家転覆罪と叛乱罪に問われ、昭和12年8月19日に刑死している。

北一輝は北一輝碑の前に立ち、緩慢に冥動していた。ときどき、上方に伸びた。大川周明の筆になる碑文にちらと目をやった。

「大川の愚文劣文醜文など読まなくてよろしい。命惜しさに狂人のふりをする腑抜けなんぞにかかずりあうのは時間の無駄だ。憎い東條のほうがまだましだ。銃の扱いすら知らないから死に損ねた間抜けだがね。日本男児、益荒男たる者が首を吊られて死ぬなどは恥も恥だ。それより、私がきみを呼んだ理由はわかっているのかね?」
「おおよそは。」
「そんな曖昧なことを聞きたいのではないがね。」

そこで、北一輝は目を冥じた。

「このまま、不逞の輩をほっておくのかね?」と北一輝は言った。
「ほってはおかない。」
「いつやるんだね?」
「決行時期についてはまだ決めていない。」
「決行時期が決まっていないというのはやらないのと同義だ。それとも、マルが足りないのかね?」

私は首を横に振った。

「ならば、きみの心的な問題か?」
「そのとおりです。」
「それは厄介だな。ともかく、座ろうじゃないか。」

私と北一輝は碑に背を向けて座った。夜明けまではまだ間があるのに暁闇が一転、東の空一面が朱の暁光に染まった。禍々しく不吉な色だった。黎明とも春暁ともちがう。悪意と憤怒と憎悪に満ちた暁天だった。ヴァーラーナシーを流れるガンガーの畔に屹立する暁の寺が仄見えた。手弱女の化身であるジンジャンが透きとおった声で囁くように歌う『死地への誘い』さえ聴こえた。死んで四大に還る者たちの幽けき足音がジンジャンの歌の伴奏だった。

「あれは?」
「うん。野中四郎、香田清貞、安藤輝三らの二・二六の靑年将校たちがここにやってくるしるしだ。それと三島由紀夫と森田必勝と七生報国セブンティーン政治少年の山口二矢と西田税と松本健一もね。これから汚れた雪を跡形もなく消し去る。いわば、世直しの雪掻きというわけだ。きみも一緒にな。ただし、甘ちゃんの澤地久枝に出番はない。観察者記録者に諸行無常屋の武田泰淳を呼んである。おっつけ来るだろう。」

生唾があふれた。胃が強い力で捻られているようだった。からだがかたかたと小刻みにふるえた。

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尾形大作 吉田松陰 (敬天愛人~ 幕末青春グラフィティー/1989)
 
by enzo_morinari | 2020-12-20 21:05 | 憂國の夢 草莽に果つるとも | Trackback | Comments(0)
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