悲しみの総量を計測することはできない。沈黙するおそるべき通行人
悲しみは港の数ほどもあるが、ひとつひとつ船出するのだ。地獄の季節の幻影者
きょうもまた世界中の港で数えきれないほどの別れが繰り返される。幻視する気狂いピエロ・ド・ヴォワイヤンの千里眼
やがて、面影は薄れゆき、幻となって、悲しみにも時は流れて海へとそそいでいく。遊び戯れる民
Poncoz Bon-Cura De-Queneau Beauxのせいで移動祝祭日/世界の天井であるParisはDémenceのニパル/Nipalのように退屈で辛気臭い街になる。退屈でナンセンスで知性に欠けて痛いだけの取り澄まし/お上品ぶり/お気取りはたくさんである。幻視する気狂いピエロ・ド・ヴォワイヤンの千里眼
マルセイユのイリュミナシオン波止場で海と太陽がつがい終えるのを見届けてから砂漠の商人に別れを告げた。
世界の果てから聴こえる遠い太鼓の音に耳をすましていた砂漠の商人はクールでスマートなため息をひとつついてから「私はひとつの他者である」と吐き捨て、青いラダー・ラクダに乗った。悲しみが一気に押し寄せてきたが、どうということはない。すべてはどうということのない過程のひとつにすぎない。航路も寄港地も帰港先も未定だが、出港の時間だ。
雪月花 松任谷由実 (Wings of Winter, Shades of Summer/2003)