人気ブログランキング |

東京の午睡/悲しみは東京の橋の数ほどあるが、ひとつひとつ渡るのだ。

 
c0109850_20160607.jpg
c0109850_20155335.jpg
c0109850_20153529.jpg

悲しみは東京の橋の数ほどあるが、ひとつひとつ渡るのだ。


昼下がりの両国橋。そして、夕暮れの勝鬨橋へ。
 
両国橋の中ほどあたりで欄干にもたれ、隅田川上流を眺むる。行く川の流れは絶えず、一瞬たりともとどまらない。荒川を越え、東京の下町の中心部を渡ってきた風は、五月も終わりだというのにひんやりとしている。

「東京の空の下、スミダは流るる」とひとりごち、こみあげきたるいくつものことどもをなんとかおさえつける。 
 
逝った者、生まれくる者、去る者、来る者、希望やら夢やらに胸をときめかせ、ふくらませる者、涙流るる果てに、なおも哭く者。

スミダの流れのすべてが東京に生き、生きてきた者すべての涙の総量であると思いいたったとたんに、堰は切れた。滂沱のごとく涙はあふれくる。涙は次から次へと、いくらでも、こぼれ落ちる。

悲しみは東京の橋の数ほどもあるが、ひとつひとつ渡らねばならぬ。


かくして、本日も東京は、「東京の空の下、涙流るる」がごとくに天下太平楽である。


補遺ひとつ
イムジン河の水が清いなどというのは大うそだとある友人は吐き捨てるように言った。
 
「すべてはカネと欲望と権力にまみれている。汚れきっている。」

「じゃ、おまえの生きる居場所はねえな。」と私が言うと、友人は一瞬、哀しげな眼を私に向け、それから力なく嗤った。
 
2ヶ月後の雨の水曜の朝、友人は麻布仙台坂中腹の電信柱でみずから首をくくった。
 

Bridge Over Troubled Water - Simon & Garfunkel (Bridge over Troubled Water/1970)
 
by enzo_morinari | 2019-05-29 20:22 | 東京の午睡 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://enzogarden.exblog.jp/tb/30297003
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 広告文案誂所所長、カナクギ・ロ... 悪ガキ練習帳/1970年代半ば... >>