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悪ガキ練習帳/カツ丼、鮨、天ぷら。利益誘導と叛逆児の面目

 
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他者はつねに敵である。自己と他者は永遠に交わることのない2本の平行線である。他者に好意を持つことは明瞭に敗北である。(悪ガキ練習帳シュライブ002)


「そんなにつっぱらかるなって。それよりか、腹へっただろう? 昼前からだから。めし喰いにいこう」

クマダはホトケさまのような顔で言った。

「めし? カネねえよ」
「おれのおごりだよ」
「ふん。なんだ。利益誘導か。供述の証拠価値がゼロになるぜ。警察学校で習わなかったのかよ」
「調べはこれでおしまい」
「おしまい? 嫌疑不十分か?」
「不十分じゃなくて、嫌疑なしだ」
「愚かな自白偏重主義がもたらした違法不当に拘束された3時間42分の代償は? 国家賠償法に基づいて賠償請求の訴えを起こさなきゃな」
「おいおい。もうすぐ定年のじいさんをいじめるなよ」
「負けを認めるんだな」
「ああ。おまえの勝ちだ」
「完全勝利だな。Amat Victoria Curamってことだ」
「え? なに?」
「周到な準備が勝利を招くって意味だ」
「恐れいりました」

クマダは机に額がつくくらいに深々と頭を下げた。

私とクマダは加賀町警察署を出て中華街を抜け、本町通りでタクシーに乗った。向かった先は野毛。マリン・タワーの野郎がしきりにウィンクしてきたが、華麗にスルーした。腹の虫がグーグーGoogle鳴った。クマダがクククと声を押し殺して笑った。クマダが好きになりかけていることに気づいて、少し癪にさわり、少しうれしかった。好きになったらおれの負けだとも思った。

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by enzo_morinari | 2019-05-17 12:04 | 悪ガキ練習帳 | Trackback | Comments(0)
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