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夜明けの口笛吹きの狂気/片雲の風に誘われて漂泊の思いやまぬ夜明けの口笛吹きはそゞろ神に魅入られてLSDで心を狂わせ、百代の過客のうつろいに愕然とし、不可視の壁に向かって狂気をさらに加速させる。

 
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われらの狂気を生き延びる道を教えよ Personal Matter Bird Man O-Ken

Flow, my crazy. Follow, my cruel. Phenomenal Matter Forest Man En-Zoo

狂気を装う狂気は世界を冷徹に計測する。 Phenomenal Matter Forest Man En-Zoo

正気を装う狂気は世界を冷厳に憎悪する。 Phenomenal Matter Forest Man En-Zoo


46年前の1973年。中学3年の4月の魚の日に初めてPink Floydの狂気/The Dark Side of the Moonを聴いた。のちに東京芸大の声楽科の教授になる風変わりな女の子が「エイプリルフール・プレゼントよ」と言ってむき出しの狂気/The Dark Side of the Moonのジャケットを私の机の上に放り投げた。彼女は生徒会の副会長だった。クラスはちがった。

アルバム・ジャケットの中には∞(ウォーター・マーク)の透かしのある薄桃色のARCHESの水彩紙が入っていて、怜悧な万年筆の字で「わたしの狂気を、生き延びる道を教えて。狂気の女王より狂気の魔王へ」と記されていた。アルシュ・ペーパーの四隅にはごく小さな文字でL O V Eと。ラブレターのつもりだったんだろうが、わたしの心はぴくりともしなかった。当然だ。年下も同世代も私の恋愛対象にはならないからだ。当時の私の恋愛対象はふたまわり以上年上の成熟した女だった。さらに言うならば、私は世界には怒りと憎しみしかないのだと考えていた。愛だの恋だのは愚か者がするものであるとも。そのような念慮を持つに至ったのはシノプス・ヒプノシスが過剰に分泌されていたせいもあったろう。好き好んでションベン臭い者と快楽を共有しなければならない理由などなにひとつない。

ピラミッド型のプリズムとおぼしき物体にひと筋の光が射入し、7色に分散屈折偏光するイラストレーションのジャケットがシンプルで斬新だった。「時代の気分」のなにがしかを象徴しているように思えた。

スロット・マシンから出てくるコインのジャラジャラ音が実に効果的に挿入された“Money”、”On The Run”のどんどん接近してくるレシプロ機のプロペラ音とクラッシュする轟音、次曲の”Time”に切れ目なくつづいて、いきなり大音響の時計の鐘の音。脳みそをグラグラ揺さぶられた。

“Money””On The Run””Time”の3曲のサイコぶり、ハジけっぷりにも驚いたが、白眉はアルバムの1曲目、”The Great Gig in The Sky”だった。

静寂と絶望と熱情と狂気。私は”The Great Gig in The Sky”の中にそれらを確かに聴きとった。

あの日から46年が経つが、いまでも夜明けには世界を憎悪し、憤怒し、嘯きながら口笛を吹き、天空からは”The Great Gig in The Sky”が聴こえている。おまえの狂気を、生き延びる道を教えてやろうと。まるで、啓示あるいは福音のように。天空の女神がやってきて、”Let's Groove!”「ハジけなさい!」と言われ、実際に私自身の生き様がハジけるのは8年後の1981年のことだった。遠くで泡の弾ける音と遠い太鼓が連打される地響きのような音がして、巨大で空虚で快楽にみちた泡がハジけるのはさらにその10年後だった。

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The Great Gig in The Sky - Pink Floyd (The Dark Side of the Moon/狂気 1973)

Let's Groove - Earth, Wind & Fire (Raise/天空の女神 1981)
 
by enzo_morinari | 2019-04-30 05:35 | 夜明けの口笛吹きの狂気 | Trackback | Comments(0)
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