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流儀と遊戯の王国/青の時代を超えるために生涯でただ1度Turnbull&Asserで誂えたPrussian Blueのシャツを着て戦友に今生の別れを告げる紺碧の夜

 
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あなたの胸のぬくもりが恋しくて涙する私
情熱と哀しみの迷宮に消えたアラビアン・ナイト
Torah Hot Big E


ペルシアン・ブルーに染まるアラビアン・ナイトを超えて、虹の彼方で催されている青の舞踏会に手を取りあって出かけた女の命の焔がもうすぐ消えるというので、青の時代を超えるために生涯でただ1度Turnbull&Asserで誂えたPrussian Blueのシャツを着て今生の別れを告げに出かけた。

女は困難と困憊と裏切りにみちた青の時代をともに生きた戦友だった。死の床に横臥たわる女は青い骸骨だった。女にはもはや言葉を発する余力は残っていない。わずかに開かれた眼。目蓋をあけ、とじるたびに肩で息をするが、呼吸音は聴きとれないほど小さい。

「おれたちの青の時代はこれで終わりだ。おまえはよく戦った。いい兵士だった。」と私は言った。女はかすかにだがうなずいた。心なしか頬笑んだように思えた。はるか遠い昔に紺青に輝く豊饒の海を見おろす放課後の音楽室でみせた頬笑みとおなじだった。そして、女は静かに息を引きとった。やすらかな死に顔だった。音楽の女神/ミューズとともに逝け、戦友よ。

遠い日の私と女ふたりだけのアラビアン・ナイトは情熱と哀しみの迷宮に消え、永遠に止まらないはずの夢時計の針は午前零時、シンデレラ・タイムを指したまま止まっている。2度と動きだすことはあるまい。そのようにして、すべてのこと、あらゆることは動きを止め、死ぬのだ。


Kind of Blue - Miles Davis (Kind of Blue/1959)
 
by enzo_morinari | 2019-03-27 02:24 | 流儀と遊戯の王国 | Trackback | Comments(0)
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