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松下竜一のあえかで宝石のような哀しみに満ちた魂

 
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神秘と血と種とクマグスに4月の空は本当に青かったのかと問う。10月の空は本当に重かったのかと問う。ある心ある言説者に

20歳だった。『豆腐屋の四季』の松下竜一から手紙をもらった。心のこもった手紙だった。『潮風の町』という掌編集が添えられていた。当時の松下竜一の近著だった。

母親を失った年の中学2年の冬に横浜野毛の古本屋で『豆腐屋の四季』を手に入れた。10円だった。『豆腐屋の四季』を読んで心動かされ、著者の松下竜一に手紙を書いてから5年が経っていた。

手紙は「お手紙、心にしみて読みました。どうぞ、若さで頑張ってくださいと言うしかありません」と始まっていた。泣きながら何度も何度も読んだ。

『潮風の町』はあえかだった。宝石のような哀しみがたくさん散りばめられていた。

当時の松下竜一は新左翼/左翼過激派のシンパとみなされて頻繁に家宅捜索を受けている。反原発運動にも注力し、先陣を切っていた。伏魔殿九州電力に真正面から楯突いていた。

会いたかったがお互いに都合がつかず、結局、会うことはかなわぬうちに松下竜一は2004年の梅雨のさなかに死んでしまった。松下竜一に野辺送りの歌をうたうことも葬列に列することもできずに15年が経つ。

『豆腐屋の四季』の舞台となった大分県中津市船場町の自宅は2016年12月に市道の拡幅工事に伴って取りこわされた。今頃、松下竜一のあえかで宝石のような哀しみに満ちた魂は潮風の町の変貌をなんとみているか。炯炯たる隻眼で。
 
by enzo_morinari | 2019-01-12 17:37 | 沈黙ノート | Trackback | Comments(0)
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