人生は束の間。時間はすべてを手加減なし容赦なしで奪っていく。Seikilos
失われた世紀の最後の週末、酔っ払いセイキロスが亡き妻エウテルペに捧げた酔いどれのうたを大声で歌いながら薄汚れた粗末なエクソミスをからだに巻きつけた男はやってきた。男はディオゲネスの犬と名乗った。
青山通りの青学の赤煉瓦の壁にもたれかかり、座りこんでいるディオゲネスの犬の前に立つと、ディオゲネスの犬は眉をしかめ、口をひん曲げて不機嫌そうに言った。
「太陽がさえぎられちゃうじゃないか! そこをどいてくれ!」
私が右にずれて太陽の光がディオゲネスの犬にあたるようにしてやると、ディオゲネスの犬は息を止める修行を始め、すぐに息をしなくなって死んだ。ディオゲネスの犬が吐きだした最後の息はウゾとタコと犬の肉球のにおいがした。
Épitaphe de Seikilos/Song of Seikilos/セイキロスの墓碑銘 (B.C. 200)