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鮨ネタ。呪ぬ。微風。Ceci n'est pas une pipe. スシ・ネ・パ・ジュヌ・ピプ/九龍城砦のクローンはすりきれ、トラはイマージュの洞窟の奥にひそみ、パイプは容赦なくカットされる。

 
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La trahison des images (1928–1929) 63.5 cm × 93.98 cm/René Magritte



The word is not the thing, A map is not the territory. A-K

降りしきる雨の中、トラはイマージュの洞窟の奥にひそんでいる。洞窟の奥からは繰り返し、「私はパイプではない」という呪言が聴こえてくる。E-M-M


私はパイプではない。まつがいなく、ハイソではない。ただの1度も敗訴したことはない。いつも、ソクハイのライダーはサクイ。おそらくは、私はパイポではない。私は小指を契機として馘首になったことはない。たぶん、シューリンガンでもグーリンダイでもポンポコピーでもポンポコナーでもない。七草粥をマイウーと思ったことはない。雑草喰ってよろこんでいるようなヤツはトリスを飲んでもワイハーには行けない。せいぜい、青森で泡盛の安酒をかっくらう居残り佐平治の下衆外道と懇ろになるのがお似合いだ。いつか、マウイ島が山体崩壊することを夢見る。もちろん、鮨ネタでもない。私は呪ぬ。そして、微風。Ceci n'est pas une pipe. スシ・ネ・パ・ジュヌ・ピプ。

結論。Ceci est pas une pipe. 私はパイプだ。北風はピープー吹く。

私はイマージュの裏切りを愛し、憎悪し、憤怒する。新年が来ようが来まいが知ったことではない。氷下魚はうまいが、古米はズマイ。新米はうまいが高い。ニンバイはうまいがヤバい。ガラケーは安いがショボい。ガラパゴス島で移動祝祭日/Moveable Feastと移動平均線/Moving Averageの異種格闘技戦は開催されるが勝負はつかない。手仕舞いはない。スマホは外縁化されたムーバブル大脳辺縁系/新・大脳新皮質である。スマスマはFinして清々だ。NTTドコモの旧社名はNTT移動通信網株式会社である。

冥土の旅のマイルストーンを過ぎてよろこんでいるのは頭の中にラフレシアの花畑が広がっているオメデタイ輩である。とっととパイプカットしろ!

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La Decalcomania (1966) Oil on canvas/René Magritte



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ひとつの椅子とみっつの椅子

20世紀初頭にカジミール・セヴェルィーノヴィチュ・マレーヴィチュが 79.5cm × 79.5cm のキャンバスに漆黒の正方形を描いて以来、世界は解読不能の「深層」を孕むようになった。そのことはいまも変わっていない。世界に起こることのすべてはマレーヴィチュ『漆黒の正方形』の延長線上にある。 79.5cm × 79.5cm 的世界はいまも世界のありとあらゆるところに深淵の口をあけている。勇気のある者はその深淵を覗きこんでみるがいい。私は覗きこんだ。そして、彼女と出会った。

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彼女の部屋の中央にはアイリーン・グレイの Classic Modern End Table T-701 Type2 が置いてある。ル・コルビジェの尊大で仰々しいソファがこれみよがしにあるよりはましだ。女の子の部屋にル・コルビジェの家具があったら私はすぐに退散しなければならない。死んだ父の遺言だからだ。

彼女の部屋には徹底的にモノがない。テレビがない。冷蔵庫がない。本棚がない。花瓶がない。コーヒー・カップはひとつ。グラスもひとつ。ナイフもフォークも箸もひとつ。同じシャツと同じパンツが1週間分。例外はiPadとiPhoneとiPodだ。iPadは第1世代から第6世代まで。iPhoneは初代の iPhone 1 から最新の iPhone XS まで。iPodにいたってはすべてのモデルが全色そろっている。iPadとiPhoneとiPodは彼女の「特別な場所」に安置されている。午前中、もっとも陽の光が当たる場所だ。

iPadとiPhoneとiPodはそれぞれ等間隔で並んでいる。1mmの狂いもない。そのことについて彼女は昼下がりの表参道の交差点で信号待ちしているときに大声で言ったものだ。

「人間は1mmの誤差にこだわって生きるべきなのよ」

なるほど。しかし、昼下がりの表参道の交差点で信号待ちしているときに大声で言うべきことじゃない。

彼女の部屋にモノがないのにはちゃんとした理由がある。いつでも引っ越しできるようにだ。

「モノがきらいなの。まだわたしがモノに囲まれて生きていた頃、引っ越しでひどい目に遭ったのよ。引っ越しというのは人間の本性を剥き出しにする」

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ベーゼンドルファーのグランド・インペリアル290が5台は置けそうなリビング・ルームとフランクフルト式キッチン。だだっ広い。ベッドなし。いったいどうやって寝ているんだ?

「寝ないのよ」

彼女は不眠症だ。意識して眠らないそうだ。

「眠ると死んじゃうの。ところで、あなたはいま、セックスのときはどうするんだ?って考えたでしょ?」

そのとおりだった。

「立ったままするのよ。やり方はいくらでもある。いまからする?」

私がうなずくと、彼女は表情ひとつかえずに服を脱いだ。彼女は脱いだ服をとてもきれいにたたんで T-701 Type2 の上に置いた。

「あなたもさっさと脱ぎなさい」

私は着ているものを身分証を提示するような気分で順番に脱いだ。彼女はじっと見ている。彼女の真似をして服を丁寧にたたむ。T-701 Type2 に置こうとすると彼女が制した。

「T-701 Type2 はわたし専用よ。世界中の誰もわたしの T-701 Type2 を使うことはできない」

彼女は眉ひとつ動かさずに言った。

「服の脱ぎ方で男の中身はほとんどわかる」
「ぼくはどうだった?」
「カルシウムとドラマツルギーが足りない。ずいぶんとつまらない人生を生きてきたようね」

彼女の言うとおりだった。彼女はつま先から頭のてっぺんまで品定めでもするように注意深く私を見たあと、ものすごく機械的に私の前にしゃがみこんだ。

彼女の T-701 Type2 には指紋ひとつついていない。シミひとつない。いまにも動きだしそうだ。実際に動いた。T-701 Type2 を眺めながらボブ・ディランの『激しい雨』を口ずさむと彼女がたずねた。

「なにそれ? 気持ち悪い歌」
「ボブ・ディランの『激しい雨』だよ」
「ボブ・ディラン? 知らない」

彼女がボブ・ディランを知らないことは私の彼女に関する評価を上げた。ボブ・ディランをありがたがる人物にろくなやつはいない。これは経験則だ。転がったことも転がろうとしたこともなく、七里ガ浜駐車場のレフト・サイドで強い南風に吹かれたこともないやつがボブ・ディランを聴いたところで手に入れられるのはせいぜい庭付き一戸建て住宅的な退屈きわまりない幸福だ。そして、彼らはライフ・スタイル自慢に日も夜もない日々を送る。ひとかけらの光も差しこまない穴蔵でこれまでに人間が歩いてきた道の数を死ぬまで数えているほうがまだましだ。

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Black Square, 1915, Oil on Canvas/Kazimir Severinovich Malevich


Ceci n'est pas une pipe. (René Magritte)

The Back Stabbers - O'Jays (1Q72)
 
 
by enzo_morinari | 2018-12-30 03:29 | 私はパイプではない。 | Trackback | Comments(0)
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