語ることと語られることのあいだには、いかなる冒険者であろうとも征服しえない深い闇が広がっている。すべてに都合よく終/了/The End/Finは用意されてはいない。人は皆、途中で死ぬものだ。語りつくせぬことについて沈黙するかぎりにおいて、沈黙は金である。語ることと語られることのあいだには、いかなる冒険者であろうとも征服しえない深い闇が広がっていて、その闇に光をあて、暴きだし、あらわにすることが言葉の祖国に帰還するためには必要だ。その意味において、"沈黙は金、饒舌は銀" なる言葉は語ることができない者の免罪符にすぎない。彼らは永遠に言葉の祖国には帰れない。
語れ。まず、語れ。なによりみずから獲得した言葉で語れ。沈黙の話はそれからである。
誰も知ることのない秘密の入江で、風に吹かれ、風の歌に耳を傾け、RARE HAWAIIANのオーガニック・ホワイトハニーをたっぷりとかけた悪魔のフォルマッジオ、カッチョ・マルチョを肴にエコール・ノルマル・シューペリウールの1958年を飲み、アルチュール・ランヴォのいくつかの詩編を諳誦し、風向きにあわせてモーツァルトの『狩り』を口ずさみ、仕上げに極上の自家製贅沢オムレット・ライスを食す。これ以上を望むのは世界への宣戦布告である。
悼饒舌漢を装いつづけた古き悪しき戦友の勝谷誠彦よ。舌をたたみ、口にチャックをして、ただ静かに眠れ。深い沈黙を知るおまえの『ディアスポラ』の続編、完結を読めなかったのはかえすがえすも残念だ。しかし、すべてに都合よく終/了/The End/Finは用意されてはいない。人は皆、途中で死ぬものだ。
帰らざる日々 (マルコとジーナのテーマ)/久石譲