キプロス王ピグマリオンの末裔にして象牙の乙女のオードリーは春日のあまりにもなマッチョぶりにほとほと嫌気がさして、七里ヶ浜の先の水平線にグレナディン・シロップをしこたま垂らして自分の人生を鮮烈に色づかせ、ついにはバラ色の人生を生きたあとは、仕上げにMy Fair Ladyをもう1杯飲んだ。
オードリーは思う。
「水平線までどれくらいあるの?」
なにも考えず、風の歌だけ聴いていたTCが答える。
「水平線までは5kmさ。自分の影が踏めないように水平線にはたどりつけない。追いかけても追いかけても水平線は追いかけた分だけ逃げちゃうから。1m進めば1m逃げる」
「あなたはだれ?」
「いつか君にティファニーで朝食を食べさせる冷血漢さ」
TCはそう言うとウォーホル風に乗り、1973年に向かった。もう、どこにも風の歌は聴こえない。
吹けば飛ぶようなカスに落ちぶれた春日は、さすがの銀行通帳皮肉教師のローゼンタール・ジョージ・バーナード・ショーに顔色なしである。
La Vie En Rose - Edith PiafOn the Street Where You Live - Vic Damone