北風をさえぎる壁のかたちで立つイタリア・ポプラの並木の南側にブラックバカラ・ローズガーデンはある。連日の好天でいっきにブラックバカラの秋バラが花開いた。
非の打ちどころのないフォルム。妖色のドレスをまとった黒い運命の女たち。オータム・ローズを家来のように従えている。束の間の木洩れ陽が黒いファムファタール・ローズの運命を照らしだす。
秋バラを見ずにバラを語ってはならない。遠い昔の私のあやういバラの記憶のファムファタールが言った言葉を思いだす。
厳冬のペンノキ鼻で海草類と数頭のトッカリと不運な船乗りを屠って生き延びた夜に現れたファムファタール、運命の女。