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星を継ぐ者の系譜 跳ねるロゴスの男

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ハッパフミフミ
クサ喰えば
マンチーキタコレ
コークでキメキメ


『出ジパング記』と中野サンプラザと解放区、無法地帯。ヤーマン、ラスタマン、ラスタファリアン、ドレッダー、レゲエ野郎ども。イケナイケムリ、スモク、巨大な凡愚。

『Rasta Man Chant』が大音量で流れる中、「ラスタ・マン! ちゃんとしろ!」とヤーマンは怒鳴った。


1979年4月、『出ジパング記』を記す景気づけとバビロン行きのバスに乗るためボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ東京公演の会場である中野サンプラザまで出かけた。東京公演の2年後、ボブ・マーリーはJAHの導きにより天国に召されたため、最初にして最後のジパング降臨であった。

そのころの世界はフラワートップな1970年代に別れを告げ、なんとなくクリスタルな1980年代を迎えようと鼻持ちならない空気にみたされていたと記憶する。吾輩の鼻がきくのは一部でつとに知れわたっていて、ほどなくタナカヤスオという鼻持ち大王、ボンクラのスットコドッコイがヘッポコ文学賞を受賞してジョシダイセーなる珍妙奇天烈な生き物どもをのさばらせる下地をつくる。 

(カタログ小説だあ? ミンダナオ島でタガログ語でも勉強してきやがれ! チュパイマコ野郎! うさん臭いことこのうえもない「脱ダム宣言」ぶっこきやがってよ! てめえのごとき外道には「きみのココロにダムはあるかい?」なんぞとはけっして問わないが、せいぜい、そのふやけた脳みそにココロのボスの鼻毛でもつけあわせてやりたいぜ! 脂肪お遊戯のヤスオちゃん元知事さんよ! スーツの襟元、ラペルに張りつけた気色の悪い物件をとっとと外しやがれ!)

自画自賛になるけれども1979年春の段階で吾輩はこれら一連のスカの主犯どもの登場と悪辣ぶりをほぼ正確に嗅ぎあてていたのだ。

ソムリエ世界一を鼻にかける鼻持ち野郎のタサキシンヤやら全日空エンタープライズ(旧全日空商事)の取締役におさまって御満悦鼻高々のタカハシトキマルやらお家の一大事で青息吐息、赤坂プリンスのトリアノンでトリュフ探しにやっきになりすぎたポルクよろしく若い衆にブイブイブーブー、ブーたれるカツヤマ某やらの鼻より、吾輩の鼻のほうが数段きくし、華もあると鼻を大きくふくらませて言っておく。

ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの東京公演は、吾輩が経験したあまたのライヴ、コンサート、リサイタルの中で文句なし、堂々のダントツ第1位である。いまもその評価はかわっていないし、永遠にかわることはない。とにかく、ひと目ボブ・マーリーを見ようというヤーマン、ラスタマン、ラスタファリアン、ドレッダー、レゲエ野郎どもで中野サンプラザはごったがえしていて、どいつもこいつもあたりまえのようにぶっといアレをスモクしまくっていた。

「これはただごとではない。やばいんジャマイカ?」とがらにもなく動揺したことをおぼえている。なかにはお手製の巨大な凡愚を持ちこむ剛の者までいた。あちらこちらからジョイントがまわってきた。スカンクのにおいにヤラれて吐くやつが続出した。吾輩はこのままソリッド&コンクリメントなチョコレートを貪り食いながらアカプルコ・ゴールド・コーストにすっ飛んでいきたい気分だった。花の頂上が吾輩の鼻の穴をコークコークくすぐりまくっていた。

その日の中野サンプラザはまさに解放区、無法地帯、地上の楽園だった。吾輩はとなりにいたすごい美人のおねいちゃん(10歳ほど年上にみえた)と人目もはばからずにネッキングし、激しく舌をからませあい、ペティーングし、さらには、その場でメイクラヴにまでおよんだ。吾輩はその美人のおねいちゃんとつながったまま彼女をかかえて雄叫びをあげ、そこいら中を走りまわった。それは吾輩に限ったことではなくて、いたるところで起こっている「あたりまえ」の光景であった。 

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跳ぶ男/LOGOS JUMP

「おれの名はロゴス。宇宙の果てまでだってジャンプする」

男は言うとその場で軽く2、3度ジャンプし、首をまわし、肩をまわし、膝と肘をまわし、足首をまわし、屈伸し、開脚した。そして、おもむろに天空に煌々として馥郁と輝くグレープフルーツ・ムーンを見上げた。深呼吸。もう一度深呼吸。さらにもう一度。男のからだが徐々に輝きだす。まばゆいくらいになる。「JAH   !」という雄叫びをあげたと同時に男のからだは宙空に浮かび上がり、宙空で一瞬停止したかと思う間もなくものすごいスピードで天空に向けて、宇宙の果てに向けて上昇していく。

「さらばロゴス。さらば跳ぶ男」

かたわらの観る男がつぶやく。

「コギトよ。考える男よ。こんど跳ぶ男に会えるのはいつだろうな?」
「われわれはもう二度と跳ぶ男に会うことはできない。われわれの世界はロゴスを失ってしまったのだ」
JAHの、つまりは『宇宙を支配する巨大な意志の力』のお導きなのだからしかたあるまいな」
「そのとおりだ」
「これからどうする? 考える男」
「そうだな。なにはともあれ、疾走しよう」
「うむ。それが一番だ。疾走するのが。われわれに残されたのは疾走することだけなんだからな」
「疾走しているうちになにか別のことが必ずみえてくる」
「観るのはおれの仕事だ。考えるのはおまえに任せる」
「わかった。わたしは考えよう。答えが出るまで考えつづけよう」
「たのんだぜ。わたしは観つづける。そして、すべてを見届ける」

わたしと観る男は疾走する。疾走するわれわれの正面に跳ぶ男のはにかんだような笑顔が次から次に浮かび、通りすぎ、そして遠ざかってゆく。

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40年以上を経た今でも不思議でならない。1974年の春、E.クラプトンの『461 Ocean Boulevard』が世に出る3ヶ月前のことだ。4月。高校の入学式の翌日、登校途中の朝、後ろからそれまでに聴いたことのない不思議なリズムの歌が聴こえてきた。しかも、驚くほどの大声で。振り向くとドレッド・ヘアの男がいた。もちろん、当時は「ドレッド・ヘア」という言葉すら知られていない時代だ。いま思えば、歌は『I Shot the Sheriff』だった。ただし、「I Shot the Sheriff」のところを「I Shot the Police」とかえて男は歌っていた。そのときは、吾輩はまだボブ・マーリィのことも『I Shot the Sheriff』のことも知らなかった。

鋭い眼光。褐色の肌。引き締まった体。切れ味のある身のこなし。あきらかに黒人だ。身長はゆうに180cmを超えている。吾輩は180cmだがそれよりアカプルコ・ゴールドみっつ分、スカンク5匹分、パナマ・レッド3本分、フラワー・トップスひと握り分は大きかった。しかも、真新しい制服を着ていた。前の金ボタンはすべて外されていて、制服の中から鮮やかな緑色の葉が描かれたTシャツがのぞいていた。メアリー・ワーナーのイラストだった。メアリー・ワーナーの葉っぱのイラストの下には「Get Up, Stand Up! Don't Give Up the Fight!」の文字があった。

「ヤー・マン!」と満面の笑顔で男は言った。口元からのぞく歯はエクストラ・ウルトラ・スーパー・トニー・ジョー・ホワイトくらい白くてまぶしかった。ヤー・マン? なんだ、そりゃ? 吾輩が不思議そうに男を眺めていると、男は「ヤー・マン。サボろうぜ」と言って肩を組んできた。

「サボってなにするんだよ」
「逗子の森戸に太陽が海に沈む秘密の場所があるんだ。行こうぜ」
「太陽が海に沈む秘密の場所ならよく知ってるよ」
「そんなら話は速えや」
「ところで、さっき歌っていた歌は?」
「レゲだ」
「レゲ?」
「くわしいことは逗子の海で教えてやるさ。とにかくだ、Time Will Tellだけど俺たちにゃ、時間がねえ」

そして、吾輩と星を継ぐ者、跳ねるロゴスの男はその場でジャンプ・ダンピング・クイック・ターンで360度回転し、さらに180度向きをかえて学校に背を向け、駅に向かって踊るように走りはじめた。腹の底からエネルギーが溢れてくるような気分だった。それは跳ねるロゴスの男もおなじだったはずだ。吾輩はおぼえたての言葉を叫んでいた。

「Hoka Hey! Ya Ta Hey!」
「なんだって? なんて言ったんだ?」と跳ねるロゴスの男がたずねた。
「戦うにはいい日だ! 死ぬには手頃な日だ!」
「ヒャッホウ!」
「アヒェヒェ!」

われわれはゲラゲラと大声で笑いながらオーバー・ドーズ全開で疾走した。ジミ・ヘンドリックスより、ジム・モリソンより、ジェフ・ベックより、ジョン・レノンより、クリフォード・ブラウンより、ボブ・ヘイズより、カシアス・クレイより、カール・ゴッチより、ルー・テーズより、スプートニクより、アポロ13号より、アメリカより、ソ連より強く速く。何倍も何十倍も何千倍も何万倍も何百万倍も強く速く。登校中の高校生どもが驚きの表情を浮かべてわれわれのために道をあけた。吾輩と跳ねるロゴスの男との星を継ぐための日々のはじまりだった。

 I Shot the Sheriff - Bob Marley(Studio Recording)
 I Shot the Sheriff - Bob Marley (Live) *B.マーリィが完全にぶっ飛んでいる。

さて、ラスタマン・ヴァイブレーションでバビロンまでひとっ飛びだ。エクソダスの日はちかいぞ! ナッティ・ドレッドの兄弟たちよ!「その日」に備えてがっつりバックバクに炎をつかんでおけ! 一度つかんだ炎は絶対に離すなよ。幸運、チャンスの女神の前髪といっしょなんだからな! アチッ! またくちびるをヤケドしちまったぜ。まったく齢はとりたくねえもんだ。ジョイントひとつまともにできやしねえ。もうちょい、きつく巻いてくれよ、兄弟。

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Third World - Lagos Jump

(JAHの導きがあればつづく。)
 
by enzo_morinari | 2018-09-28 16:11 | 星を継ぐ者の系譜 | Trackback | Comments(0)
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