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Do The Hustle! ── That's the Way (I Like It)

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その意気さ。そんな調子でいきゃいいんだ。そんな生き方が気にいってるんだってのよ。AHA AHA KC
ある種の音楽は人間のからだに潜む導火線に火をつける。IM


「プロコル・ハルムの『A Whiter Shade of Pale』はなんかキナ臭いし、面倒くさいから好きじゃない」とメリージェーンは言った。プロコル・ハルムがゼニカネにまつわることですったもんだの訴訟沙汰になるのはずっとあとのことだった。

「プロコル・ハルムより、おバカなKC&ザ・サンシャイン・バンドのほうがよっぽどいい。”そんな調子でいきゃいいんだ。これがいいんだ。”ってね」

そう言ってから、メリージェーンは本牧のPXの映画館で映画をみることを提案した。『イージー☆ライダー』『明日に向かって撃て』『俺たちに明日はない』の3本立て。

メリージェーンがIDカードを見せるとチェックポイントのゲートはすんなり通ることができた。セキュリティの海兵隊員はとても愛想がよかったが、M16ライフルは鈍く光っていて、銃口は瞬きもせずにこちらを睨みつけていた。その銃口から飛びだした弾丸はいったい何人の人間を撃ち抜き、何リットルの血を吸い、殺したのだろうかと思った。

ポップコーンおばさんに溶かしバターをたっぷりかけてもらったバケツ1杯分のポップコーンを食べながらだだっ広いPXの映画館で映画をみた。あちこちでヘビーペッティングやらヘビーネッキングやらディープキスをする音が聞こえた。

メリージェーンは『明日に向かって撃て』でブッチ・キャシディとザ・サンダンス・キッドがボリビア国軍に突っこんでいくラストシーンのストップモーションで「Come on! Let's go! Let's Groove! Just a Rock 'n' Roll!」と叫び、『俺たちに明日はない』のラストシーンでボニーとクライドが蜂の巣にされて殺されるところでしゃくりあげながら泣いた。

「7UP飲みたい。最後の7UPを。それと、あんた、あたしのクライドになってよ。あたしはあんたのボニーになるからさ」
「オーケイ。たった今から俺たちはボニー&クライドだ。手始めになにをする?」
「とりあえずは最後の7UPを飲みほして、それから小港橋の欄干からドブ川に飛びこんで、そのあとヘドロまみれで山手警察署を襲撃するのよ!」
「すげえな! 俺たちは無敵だ。怖いものなしだ。正真正銘のボニー&クライドだ! NBKだ! Natural Born Killersだ! しかも、俺たちに明日はないけど、蜂の巣にもならない!」

しかし、実際にわれわれがしたことは映画館の玄関脇にエンジンがかかけられたまま停まっている新聞屋のHONDAのスーパーカブのイグニッション・キーを抜いてゴミ箱に捨てることと新聞を3部盗むことだった。

映画を見終わってからTeens Clubに行き、7UPを飲みながら伝説のビリヤード台鯨で8ポケットをやった。

メリージェーンはエプロンに尻を乗せて、みごとなキューさばきでコーナー・ポケットに8ボールを沈めると、こともなげに「あたしはファスト・メリージェーンよ! ...先週、一番上のブラザーがHamburger Hillで死んだんだ」と言い、キューをビリヤード台に放り投げてから私に抱きついた。私にはかける言葉もなかった。私はメリージェーンを抱きしめ、背中をさすることしかできなかった。メリージェーンの髪の毛からポーチュガルのヘアトニックのにおいがして、鼻の穴の奥がヒリヒリした。

私たちはTeens Clubを出て、「Have a nice day!」と声をかける海兵隊員には目もくれずにPXのゲートを通りぬけ、無言で夏の盛りの太陽が照りつけるフェンスの向こう側のアメリカ通りをいつまでもいつまでも歩いた。夏の盛りの太陽は残酷で容赦なく、私の中のなにもかもを灼きつくそうとしているかに思われた。

ボリビア国軍に真っ正面から突っこんでゆくブッチ・キャシディとザ・サンダンス・キッドのストップ・モーションが繰り返し繰り返しどこまでも青い夏の空の中に大写しで見え、『Raindrops Keep Fallin' on My Head』のリフが頭の中で鳴りつづけた。ボリビア国軍に真っ正面から突っこんでゆくブッチ・キャシディとザ・サンダンス・キッドのストップ・モーションから永遠に逃れられないような気がした。

ウォーターゲート事件の裁判で判決が下ろうが、鉛管工一味が口封じで消されようが、ディープスロートがだれだろうが、安保が粉砕されようがされまいが、永田洋子がバセドー氏病だろうが、重信房子がどこにゆくえをくらましていようが、カンボジアのKilling Fieldsでポル・ポトとクメール・ルージュによってどんな大虐殺が行われていようが、田中角栄がピーナッツをむさぼり食おうが、小佐野賢治の記憶があろうがなかろうが、児玉誉士夫邸に神風特別攻撃隊が突っこもうが、沖縄が本土復帰を果たそうが、鉄の女マーガレット・サッチャーが保守党初の女性党首に選出されようがどうでもよかった。

ブッチ・キャシディとザ・サンダンス・キッドのストップ・モーションが次のストップ・モーションに切りかわるたびに、私は私の手の中で冷たい汗をかき、みるみるぬるくなっていく7UPを飲んだ。そのようにして、私は私の最後の7UPを飲み終えた。無性に狭くて暗い部屋でメリージェーンを抱きしめながら、ミニー・リパートンの5オクターヴ半の『Lovin' You』のサビを聴いていたかった。

O Kay, That's the Way I Like It!

That's the Way (I Like It) 1975 - KC and the Sunshine Band
Born to be wild/ワイルドでいこう 1969 - Steppenwolf
Raindrops Keep Fallin' on My Head/雨にぬれても 1969 - B.J.Thomas
Lovin' You 1974 - Minnie Riperton
 
by enzo_morinari | 2018-08-30 04:00 | 呪われた夜を超えて | Trackback | Comments(0)
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