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Do The Hustle! ── 16小節の恋の手ほどき

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16小節のラヴソング。16小節ですべてを語り、真実を告げる。世界に告げる。君に夢中だって。H-L-G-D-W


多国籍乱闘のあと、私と呪言師ジュゴンは元町のフライング・ソーサーの脇の路地で目をさました。夜明けだった。本牧埠頭か山下埠頭に停泊している貨物船が出港の霧笛を鳴らしていた。

私も呪言師ジュゴンも『紅の豚』の終りちかく、乱闘のあとのポルコ・ロッソとアメ公飛行機乗りのカーティスみたいに顔がボコボコだった。青たん赤たんコイコイコイ。頭は瘤だらけだった。二人して顔を見合わせ、大笑いした。笑うと体じゅうが痛んだ。

ユニオンの開店まで港の見える丘公園で時間をつぶした。呪言師ジュゴンと横浜港を出入りする貨物船についてああでもないこうでもないと他愛ない話をし、ひっきりなしにタバコを吸った。なぜかLARKとKOOLとCAMELとゴールデンバットがあった。どれを吸ってもまずかった。

ユニオンでクアーズの6本パックを2Packとキャマンベール・チーズとキャベツとセロリを買った。レジの若い女が私と呪言師ジュゴンの顔をみて必死で笑いをこらえていた。「心配するところだろ、そこは」と思った。ふざけた女がいたものだ。まったく世界はどうかしてる。しかし、一番どうかしてるのは私と呪言師ジュゴンであることはたしかだった。

再び港の見える丘公園にもどって、ビールを飲み、キャマンベール・チーズを食べ、キャベツとセロリをかじった。体じゅうの痛みはかわらなかったが、みるみるうちに気力がみなぎってきた。フェンスの向こう側のアメリカの街、本牧のベースまでだって全力疾走できるように思えた。そして、私の16小節の恋の手ほどきの相手が現れた。メリージェーンだ。

「あたしにもちょうだいよ」とメリージェーンは言い、私の横に座った。ポーチュガルのヘアトニックの匂いがした。

メリージェーンは16歳だった。Sweet Sixteen. Nile C Kinnick High School(YOHI/ヨーハイ)の生徒だ。イタリア人とアイルランド人とユダヤ人とフランス人とドイツ人とバイキングとフィンランド人とノルウェイ人とウェールズ人とスコットランド人とスペイン人とポルトガル人とモロッコ人とチュニジア人の血がコンフューズしていることをたのしそうに話した。「あたしは人種の坩堝よ。自分のアイデンティティとルーツがなんなのかどこにあるのか、まるでわかりゃしない」とメリージェーンは言って笑い、少しだけさびしそうな表情をみせた。

Sixteen Bars/16小節の恋 (1975) - The Stylistics
 
by enzo_morinari | 2018-08-29 15:30 | 呪われた夜を超えて | Trackback | Comments(0)
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