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されど、われらが幻のラ・トゥール・エッフェル

 
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1987年秋。早逝した戦友を追悼するために集ったリラの花影揺れる凱旋門の近くの小さな食堂で、漂えど沈まず、悠々として急ぐ宴の締めくくりに、我々はカルバドスの満たされた杯をあげ、死んだ友を思い、魂の奥深く刻み、誠を捧げてから静かに最後の乾杯をした。そして、固く再会を誓い、それぞれの戦場へと帰還した。

ある者は中東へ。ヨルダン川のほとりへ。ある者はアフリカへ。ヨハネスブルクのポンテシティ・アパートへ。ある者は民族の血で血を洗うボスニア・ヘルツェゴビナへ。希代の独裁者が跋扈するブカレストへ。またある者は西アジアへ。ベドウィンの民の中へ。

あれから四半世紀が経つ。そのあいだに数えきれぬほどの秋やら冬やら春やら夏やらが音も立てずに過ぎていった。再会も果たされぬまま多くの友が逝き、斃れ、少しの友が残った。幻のエッフェル塔はいまもかわらず、我々の前に墓標のように屹立する。友よ ── 。

"Giuseppe Tartini: Trillo del Diavolo (Devil's Trill Sonata)"
Anne-Sophie Mutter, James Levine & Wiener Philharmoniker
 
by enzo_morinari | 2014-01-30 19:43 | 流儀と遊戯の王国 | Trackback | Comments(0)
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