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ゆるゆる王国#3 モクモク共和国の逆襲

 
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 そんなわけで、出会ったその日に私と由良デリコはゆらゆらゆるゆるとシコシコすることになったわけだが、問題がなかったわけではない。由良デリコはトヨバーバの妹のユバーバの怒りと呪いを受けて右眼を名無しの眼無しに奪われていて、隻眼の真っ最中なのだ。
 由良デリコはゆらゆらしているようにみえて、その実、精神はいつも研ぎ澄まされている。ジレットとフェザーとシックが束になってかかっても敵わないほどだ。不用意に由良デリコに触れようものなら指先はすっぱりと切り落とされてしまう。由良デリコはこの現象を「象限ナイフ」と呼んでいるが、象限ナイフによって切り裂かれた傷口からはスライム色の液体がゆらゆらと滲み出てくる。この滲出はとどまることがない。内部、実体、実質がすべて外部に滲みきって露わになるまで。スライム・ジュースは微量ずつしか滲出しないので内部、実体、実質が外部に出きってしまうまでには何十年もかかる。スライム・ジュースがそこそこおいしいのでお愉しみがないわけではないが、傷口を持つ者はきわめて緩慢な死を常に現前に突きつけられた生を生きる困難を抱えつづけることを思えばよろこんでばかりはいられないのもまた事実だ。実際、由良デリコの一閃によって受けた傷が元で猛烈な勢いで脱毛し、消耗し、ついには吉岡ミノールとキダ・ミノールのアイノコにされた者は少なからずいて、彼らは一様にヅラヅラしく物事をズラしまくり、テレビ受像機の位置をズラしまくり、国境線さえズラしまくり、赤坂とお台場をズラしてTBSとフジの視聴率戦争を煙りと鬘に巻き、オヅラトモアキも脱毛もとい脱帽するほどのヅラ猛者になる。
 そのような次第で、由良デリコの神経はいつも、つねに研ぎ澄まされていて、視野視界が半分になった分、聴覚聴力は常人をはるかに超える能力を持つに至っている。しかも、精神神経がぴりぴりと張りつめているので、外部、他者、世界が発する片言隻句を聞き逃すまいとして意識を集中させるものだから、それに応じるかたちで残った隻眼がギロギロと前後左右上下に蠢く。異様な姿だ。
 南蛮伴天連寺の門前の小僧から和泉屋染物店の番頭にまで昇りつめた木下杢太郎が地獄の地下一尺にある穀倉で独立宣言し、誕生したモクモク共和国のラパタータ・マニョーリア大統領がモクモクプカプカさせて禁煙ルームに乱入してきたときも、由良デリコの神経はアスピリン錠を100錠まとめて飲んだのと同レベルのピリピリ具合であり、しかも、前の晩の私とのゆらゆらゆるゆる苦しみ遊びがうまくまぐわえなかったこともあって至極不機嫌だった。由良デリコの大一閃によって国力を半分ほどに殺がれていたモクモク共和国大統領であるラパタータ・マニョーリア女史としては、なんとしても雪辱を果たすと同時に由良デリコに一矢を報おうと虎視眈々、たんたんたぬきのキンタマだった。風が吹く。風がないのにブラブラでも風が吹く。
 
by enzo_morinari | 2013-07-30 11:03 | ゆるゆる王国 | Trackback | Comments(0)
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