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真言の音楽#9『不思議の国のアリス』を解読するための地図 エリック・ドルフィー『Out to Lunch!』

 
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演奏が終わった音楽は虚空へと消え、二度と取り戻すことはできない。 E-A-D


ビッグ・フェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドと「死に場所」と「死に方」について殴り合いながら土砂降りの雨の中を歩いているとき、話題は宇宙森羅万象、ソンブレロ銀河への帰還、ステファンの五つ子の養育権におよび、とりわけて、こと「音楽」と「表現」にかかわることとなると、宇宙を支配する巨大な意志の力のやつめが異常な興奮を示し、雨はしばしば土砂降りをはるかに超えて、哲コン金クリート降りとなった。

突如、なんの前触れもなく、「エリック・ドルフィーの『Out to Lunch!』はやばい。とんでもない。しょっぱなから迷宮に叩きこまれる。脱出不能の迷宮に。クリームリンスのようなラビリンスに。能天気なフレディ・ハバードまでがすごいことをやってやがる」とビッグ・フェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドが言った。

「そうだ。そのとおりだ。重度の糖尿病で血が接着剤のようにべとべとになっていたエリック・ドルフィーは『Last Date』でバイバイをし、”音は虚空に飛び去ってゆく”と言い残して死んだわけだが、実はドルフィーは『Out to Lunch!』ですでに世界に”バイバイ短めの昼食”していたのである」

ビッグ・フェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドはゆっくりとうなずき、深々とため息をついた。そして、吐き捨てた。

「まったく! とっとと死んじまえばいいようなポンコツボンクラヘッポコスカタンどもがいけしゃあしゃあのうのうと生き残り、生きていなければならないホンモノばかりが早死にしやがる」

ビッグ・フェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドの眼をみると本来失楽園にしか降らない青い雨粒がいまにもこぼれそうに浮かんでいた。

「泣くな。まだ泣くときではない。おれたちの『不思議の国のアリス』の冒険はまだ始まってさえいない。泣くのは午後のお茶の会を蹴散らして、海亀もどきスープの中にジョニー・グリフォンを沈めてからだ」
「だな」
「地図はすでに手に入れてある」
「なんだ?」
「『Out to Lunch!』だ。ルディ・ヴァン・ゲルダーはまだ死んじゃいない」


Eric Dolphy - Out to Lunch! (1964)

【Personnel】
Eric Dolphy - bass clarinet (1 & 2), flute (3), alto saxophone (4 & 5)
Freddie Hubbard - trumpet
Bobby Hutcherson - vibraphone
Richard Davis - bass
Tony Williams - drums

Producer - Alfred Lion
Released: 1964
Recorded: February 25, 1964. Van Gelder Studio, Englewood Cliffs
Genre: JAZZ-Avant-Garde Jazz
Label: Blue Note(BST 84163)

【Tracking List】 *All compositions by Eric Dolphy
1. "Hat and Beard" 8:24
2. "Something Sweet, Something Tender" 6:02
3. "Gazzelloni" 7:22
4. "Out to Lunch" 12:06
5. "Straight Up and Down" 8:19
 
by enzo_morinari | 2013-07-06 00:57 | 真言の音楽 | Trackback | Comments(0)
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