恥を知る純白のパンダを従えた水曜の午後の動物園はいつものように独特のリズムでドアをノックした。サリフ・ケイタとユッスー・ンドゥールのウガンダの虐殺をめぐる闘争の果てに誕生したポリリズムと高熱のためにポール・デスモンドが参加していないデイヴ・ブルーベック・クワルテットの変則5拍子を融合したような、聴く者に不定形な不安をもたらさずにはおかないノックの音。
ミス・ファット・モー・ツォートンが部屋の隅で身をよじり、天空に向かってケンツしている。さらにはミス・ファット・モー・ツォートンの対極にいるミセス・ボニー・ピンク・コーセーはわれわれを指弾し、ついには全裸になってエドはるみよろしく「ググググーッ!」ときたもんだ。門田頼命はいまどこで踊っているんだ? 門田頼命の夜明けは遠いのか?
突然、ビッグ・フェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドが『現代思想の100人』をあやしながら宣言した。
「ネットワークは黄金の大鉱脈だ。無数の宝が眠っている」
「なんだよ、急に」
「重要なのは速度感、スピードだ。クラックだ。チョコだ。ヘロだ。コークだ。スカンクだ。フラワートップだ。アカプルコ・ゴールドだ」
「すべてについて同意する」
そのとき、天狗鼻がへし折れ、酷寒のミル・プラトーに立った島田雅彦がポッテリくちびるの今夜が山田詠美の巨大なインカクをディベルティメントしながら南向きの窓から登場した。
「あ。嬉遊曲野郎! 一体全体どういう料簡だ!」
「まあまあ。今夜が山田詠美あげるから仲良くしてくれよ」
それを聴き取ったビッグ・フェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドが憤激した。
「てめえ! 島公! おれよりふたつも年下のくせしやがってため口きいてんじゃねえ!」
「そうだそうだ! シマゲジ野郎! ここで会ったが百年の孤独の野郎めだ! ただ置かねえから覚悟しやがれ!」
「キング・アルマジロ呼ぶぞ! 異形の王権の復権だ!」
島田雅彦が逆上して叫んだ。
「呼べるもんなら呼んでみやがれ! こっちには呪われたアルマジロと虹のコヨーテと冬眠を忘れた熊とソバージュ・ネコメガエルのエクリと苦悩するビーバー・カモノハシとルイスウェイン・キャットと森のひととテンギャン・クマグスがついてるんだ。初版も捌けなかったキング・アルマジロなんぞトーハン・ニッパンに即行で返本だ! 最初はグータン・ヌーヴォー・クリティーク! ジャンケンポン!」
島田雅彦はチョキを出した。われわれはツー・プラトン・アリストテレス・ソクラテス・ディオゲネスでパーを出した。
「10本対2本でおれたちの勝ちな」
「ひでえ!」
島田雅彦の天狗鼻が萎れ、今夜が山田詠美の巨大で真っ黒けっけなインカクはハーレム・タワーほどに屹立し、潮吹きは亀戸天神に慈雨を降らせた。かくして、島田雅彦はわれわれの軍門に下った。「不細工な男は髪を染めるセオリー」の典型である東浩紀がヒットラー・ユーゲントのコスプレで角の加藤のタバコ屋でゴールデン・バットを1カートン買って高笑いしている。