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東京の午睡#12 『老人と海』の死、サンチャゴの憤怒

 
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528回目の『老人と海』を読み終えたときだった。Mac mini を起動し、メールをチェックし、何通かの返事を書き、Safariを立ち上げ、Wikipedia でメールの中にあった文言、「Judicium Difficile」を調べ、ベランダ越しに寝ぼけまなこの観音崎灯台に向かって「Ars Longa! Vita Brevis!」と大音声を発して喝を入れたのち、『東京の午睡』を開いた。1通のメッセージが届いていた。

「わたぢのおともたちが自さつしまた。ほりつにおくわしく正ぎかんのとよそうなかただだだとおももい、めせじをおるるらせていただじました」とそのメッセージは始まっていた。誤字と脱字とタイプ・ミスと誤った語法だらけのメッセージだった。しかし、読み進むうちに滂沱のごとく涙があふれてきた。

「管理者にだけ表示を許可する」を選択してポスティングされたそのメッセージにはシニア向けのSNSを舞台に繰り広げられている大がかりな「売春組織」の暗躍が赤裸々に綴られていた。ある老婦人が一度は売春に手を染めたものの良心の呵責に苦しみ、売春組織との関係から身を引こうとする。しかし、売春行為を「バラす」「言いふらす」と脅され、口止め料名目の金銭を要求される事態に至る。そして、ついには自ら命を絶つ悲劇が発生したことをメッセージの主はひらがながほとんどの拙い文章で懸命に伝えようとしていた。

命を絶った老婦人は曾孫までいるという。亡くなった老婦人はおそらくは経済的に余裕がなかったにちがいあるまい。しかし、孫や曾孫に小遣いをやり、おもちゃのひとつも買い与えたい。そして、手っ取りばやく現金がえられるとでも考えて「売春」に走ったのだろう。みずから命を絶ったという老婦人の人生はそれほど陽の当たるものではなかったろう。メッセージの主も格別の高等教育を受けてはいないだろう。いずれもつつましくおだやかに生きてきて、これからも、ただ健康で病気ひとつせず、孫や曾孫たちに囲まれて余生をまっとうすることを願っていたことだろう。涙が枯れたのちは抑えようのない憤怒が腹の底からこみ上げてきた。何者であろうと情念と憤怒の塊となった吾輩をとめることはできない。たとえ、「宇宙を支配する巨大な意志の力」であってもだ。

なぜか、イツァーク・パールマンが独奏する『シンドラーのリストのテーマ』が頭の中に鳴り響きはじめる。憤怒と情念はいやまして募ってくる。今にも噴きこぼれそうな情念と憤怒の塊を抑えつけ、吾輩は早速、くだんのシニア向けSNSにアカウントを作った。アカウントを作った途端にプロフィール上は「女性」とされる人々から山のようなプライベート・メッセージが届く。どのメッセージにも「お会いしたい」「お話がしたい」「食事がしたい」と同じようなことが書いてある。しかし、さすがの吾輩は山のようなメッセージを読みながらある共通点を発見する。「交際」を「交祭」と誤記しているのだ。なるほど。すべてのメッセージはおなじ人物が書き、それぞれのアカウントで送信してきているのだと合点する。念のため、自分のPC上に新たにフォルダを作ってすべて保存。

盛りをとうに過ぎた男やもめと妻を失った男の「性」にまつわる不遇、不全感はじゅうぶんにわかる。つらいだろう。しかし、その不遇と不全感につけ込む輩をゆるすことはできない。弱みにつけ込む輩を下衆外道というのだ。練炭による連続殺人を犯したとして一審で死刑判決を受けた女が獲物である年配のシングル男性を物色し、実際にゲットしていた「狩り場」はシニア向け、パートナー探しのSNSだった。推して知るべしということだ。

殺された被害者たちはとにかく、ただひたすら「ヤリたいから」こそ練炭連続殺人の犯人の女のような折り紙付きのぶっさいくデブに大金を渡したのだ。被害者たちは哀れきわまりないし、その魂が安らかなることを祈るばかりだが、「性」にまつわる諸問題はそれほど根が深く、厄介であるということだろう。世の老人たちのだれもが巨大なカジキマグロとの死闘に勝利し、ライオンの夢をみながら眠るとはかぎらない。

自殺した老婦人は死の直前にメッセージの主にメールで洗いざらい告白した際に売春の情報交換が行われている掲示板の存在も告げていた。掲示板に入るときに必要なパスワードもあわせて教えたといい、パスワードはメッセージの最後に付記されていた。

さっそく掲示板をのぞいてみた。「売春」の日時、待ち合わせ場所、相手の風貌、名前、携帯電話番号等の情報交換が行われているのが確認できた。また、売春の女ボスとおぼしき女は自身のブログにいけしゃあしゃあと、しかも自慢げにひと月おきの海外旅行の顛末を小学生でも書かないようなぶざまで醜悪きわまりもない文章で綴っていた。御丁寧にも画像付きで。知性のかけらもない。

ブログの内容はどこそこの高級レストランでランチをした、ホテルのスィート・ルームに泊まった、どこそこに旅行に行ったといった類いのことが自慢げに書き連ねてあるだけだ。誤字・脱字だらけ。日本語能力が完全に故障している。だが、本人はまったくそのことには気づいていないようで得々としている御様子だ。おめでたいにもほどがある。

てめえがのうのうと極楽とんぼよろしく遊蕩に耽っているあいだに人が一人死んでいるんだぞ! そのことを知ってか知らずか、極楽とんぼ女はどこ吹く風とばかりにきょうもたらたらと「生活自慢」に精を出している。とにかく虫酸が走り、はらわたが煮えくりかえった。

吾輩は亡くなった老婦人はメッセージの主に「復讐」を託したのであると理解した。「怨みを晴らして」と。掲示板の運営会社に事の仔細をメールし、さらに直接電話で担当者と話し、すべてのデータログを保存するように要請した。予想外にも相手はふたつ返事で了承してくれた。「老婦人の死」が効いたのかもしれない。あるいは彼には大好きなおばあちゃんがいたのかもしれぬ。

「売春」も「買春」も「売春」と「買春」を斡旋することも売春防止法に抵触する犯罪である。インターネット上のSNSを舞台として組織的に行われていれば組織犯罪処罰法が適用される。風営法の適用もある。また、自殺した老婦人に対して口止め料名目で金銭の要求があり、被害者から財物の交付があったなら「恐喝罪」が成立する。

財物の交付がないからと言って事は済まない。「脅迫罪」と「強要罪」がお待ちかねだ。「脅し」の手段は口頭だろうとメールだろうとブログへのメッセージだろうと関係ない。金銭の授受の存在の有無も関係ない。被害者が畏怖するだけで「脅迫罪」の構成要件は充足されるのだ。重罪である。犯情が悪ければ裁判官は初犯でも十分に実刑判決を下すだろう。ましてや、被害者の死という重大な結果を招いていることから勘案して実刑は免れないと思量するのが妥当だ。過去の事案・判例の量刑に照らして「実刑」を選択しずらいのなら、新しい判例をつくればいいだけの話しである。

奇遇にも吾輩には警察庁と警視庁、そして神奈川県警の現役幹部、OBの友人・知人が大勢いる。東京地検と横浜地検には検事正の朋友がいる。東京地検特捜部の案件ではないのが返す返すも惜しいが。いずれも、気心の知れたいわば仲間だ。もはや、吾輩が取るべき方法はただひとつ。弱者を利用し、弱者の骨をしゃぶり、弱者を苦しめ、弱者を死に追いやった下衆外道どもの退治である。退治法はいくらでもある。

あらゆる法令、あらゆる手練手管を駆使する。頑迷なる罪刑法定主義者である吾輩が下衆外道どもを黙って放っておくわけがない。告発状には疎明資料より数段劣るようなレベルではあるが吾輩の手元に現にある資料の添付でじゅうぶんだ。捜査機関はすみやかに立件に向けた内偵に入るだろう。すでに「仲間」宛にメールで事のあらましは送信済みだ。一両日中に正式に告発状を提起する。東京地検に直告するという手もある。

警察、検察の不祥事が頻発してその威信が地に堕ちた昨今、どんな瑣末な事案であれ、威信回復のために彼らは遮二無二に動くはずだ。動かざるをえない。人が一人死んでいるのだ。ささやかな幸福を享受したかっただけの老人のかけがえのない命が失われているのだ。天地人ともにゆるすはずがない。このようにして下衆外道どもに社会にはどうにもならない相手、存在があることを思い知らす。世界にはどう足掻いても太刀打ちできない恐ろしい人間がいるのだということを知らしめる。これは吾輩流の「世直し」である。

いま吾輩のこの文章を読んでいる下衆外道及びその手下ども! おまえたちは一番敵にしてはならない者を敵にしたな。運が悪かったと諦めろ。腹をくくれ。朝早いノックが鳴る日はすぐそこまで迫っている。21日+2日分の自弁代くらいは用意しておけ。高橋屋の弁当はまずいぞ。えびす屋の弁当にするんだぞ。

言っておくが、検事パイも保釈もないからな。せいぜい、震え上がりながら「その日」「その朝」を待つがいい。年貢の納め時だ。冒頭陳述は2時間も3時間もかかる。起訴状の束だけで六法全書より分厚いぞ。犯罪の実行行為者に老婦人を引き合わせ、彼女の個人情報を提供し、そばでへらへらと笑っていたボンクラ下衆外道どもには「共謀共同正犯」の成立に向けたベテラン捜査官のきっつい取り調べがお待ちかねだ。せめて事情聴取の完全録画・完全録音を主張するんだな。そのためにも人権派のいい弁護士を雇うことだ。ツテがないなら紹介してやってもいいが、吾輩が絡むとちょいと高くつくぜ。

おまえたちの選択肢はふたつ。ひとつは震え上がりながら逮捕/強制捜査の日を漫然と待つか、ふたつは潔く自首・首服するかだ。決めるのはおまえたちだ。怒れるサンチャゴはいま、ライオンの夢をみながら眠ることを日課とする吾輩とともにある。


かくして、吾輩の新しい戦いは始まり、東京は本日も「カジキマグロのステーキ、サンチャゴ風」のごとくに天下太平楽である。

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by enzo_morinari | 2012-09-25 12:48 | 東京の午睡 | Trackback | Comments(1)
Commented by ビルケンシュトック 通販 at 2013-09-17 11:53 x
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