隠蔽される「世界の起源」と露出する世紀 ── アート・テロリストよ。オルセーを爆破せよ!

 
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そのころ、「世界の起源」はまだ京急700形電車の品川行き42輌編成の快速特急に揺られることで、かろうじて安定を保っているかにみえた。伊勢丹アスホールで行われる「ミレー、コロー、クールベ展/バルビゾン派の巨匠たち」を告知するステルス・ステンシル・ステッカーが京急700形電車のあちこちに貼られ、バンクシーはギンズバーグ・ケルアック・バロウズの揺りかごの中でビートニクな寝息を立てていた。

さらには、石礫を隠し持つサンダル履きのデヴィッドがチャタレー夫人のスパンキング・ラヴァーとしてゴリアテに戦いを挑んだのちの「猥せつ裁判」の証言台で「アカデミック・アート? それってうめえのか?」と雄叫びを上げ、その様子を別アングルから盗み見ていたジャン・オーギュスト・ドミニクはラ・グラン・オダリスクの豊満な脹ら脛を愛撫しつつも奴隷解放運動にうつつを抜かすクンニヨーシ・ウタガーワの謀殺計画を玄人専用クロッキーに描いていた。

よもや、40年後に『世界の起源』の前で正真正銘の「世界の起源」を露出し、オルセー美術館を震撼慄然騒然とさせるパフォーマンス・テロリストが出現しようとはだれも想像できない牧歌的な時代だった。主犯であるところのバルビゾン学校の悪童、ギュスターヴ・クールベでさえ。

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パフォーマンス・テロリストの前に立ちはだかる取りすました道徳律と価値観の甲冑を外装した黒ずくめの学芸員も、ゆうべはパフォーマンス・テロリストよりもっとふしだらであられもない姿態を曝けだしていたことだろう。今夜はさらに過激に扇情的に痴情痴態に拍車がかかるはずだ。淫蕩と淫靡と淫逸と淫怠は権威を偽装する。

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いまや、世界は「露出する世紀」のただ中にある。あらゆる事態/事象/現象は露わとなる。Facebookで。Twitterで。SNSで。YouTubeで。ニコ動で。FC2動画で。ピンからキリまで。糞味噌いっしょくたに。賢者から愚者までもろともに。アノニマス/サインの別なく。センス/ノンセンス取り混ぜて。際限なく。途方なく。のべつ幕なしに。

リアリズムと赤裸なエロチシズムは取りすました道徳律と価値観を根こそぎ木っ端微塵にする。意識しようとしまいと、そして、望むと望まざるとにかかわらず、われわれは例外なく窃視者/視姦者であり、つねに共犯関係にある。


アート・テロリストどもよ。世界中のミュゼを爆破せよ!


Performance Terrorist Does Impromptu Reenactment of "L’Origine du monde/The Origin of the World" Yes, THAT Painting.
 
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# by enzo_morinari | 2014-06-21 15:19 | 沈黙ノート | Trackback

「携帯電話税」をめぐるデクノボウ三世議員中山泰秀と悪辣官僚と腐れ電通の裏取引きと密約

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# by enzo_morinari | 2014-06-20 15:40 | 沈黙ノート

「携帯電話税」をブチあげるデクノボウ三世議員中山泰秀の電通時代の悪業

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# by enzo_morinari | 2014-06-19 18:18 | 沈黙ノート

パリの空の下のバラ色の人生 ── ラデュレのバールで「君の瞳に乾杯」したあとハシゴ酒する。

 
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ラデュレのバールで「君の瞳に乾杯」する。
遠い異国から客人が遥々やってきた。バツイチになったばかりだというその人物はインターネット黎明期に吾輩が出没していたあるチャット・ルームの常連で、当時は大学生だった。吾輩の幻惑衒学のエクリチュール・クワルテットによってコテンパンにされていたうちの一人である。

「酒は飲めるのかね?」
「はい」
「かなり飲めるのかね?」
「はい」
「ものすごく飲めるのかね?」
「はい」
「では、君の瞳に乾杯だ」

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安酒がやけにどてっ腹にしみる夜だった。
「だれにだって触れられたくない疵のひとつやふたつはある」と吾輩は言い、カルヴァドスの杯をあけた。そして、隣りにいる遠い異国から来た若者をみた。若者はうつむき、大粒の涙をぽたぽた床に落としている。

「なんの涙だね?」
「言いたくありません」
「言いたくなくても言うんだ」
「言わないとだめですか?」
「言わないとだめだ。それが掟である」
「なんの掟ですか!」
「吾輩と一緒にいるときの掟である」
「言います」
「いい子だ」
「うれし涙です」
「そうか。では、今夜は好きなだけ泣いてよろしい。いや、吾輩が泣かしてやる」

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本物の一流になることが一番大事なことなのだ。
「いいか? ここが肝心なところだからよく聴くんだぜ」と吾輩は言い、カルヴァドスをシルヴプレした。遠い異国から来た若者の眼にいつのまにか輝きが戻っている。

「今、すごく気分がいいだろう?」
「はい」
「なぜだと思う?」
「わかりません」
「考えろ」
「考えてもわかりません」
「わかるまで考えなさい」
「日が暮れてしまいます」
「もう夜だ」
「それじゃあ、夜が明けてしまいます」
「夜明けは遠い」
「うーん」
「もう逃げ場はない」
「もう死にたいです」
「仕方のない奴だ。では、教えてやろう」
「はい」
「本物の一流の場所で本物の一流と一緒にいるからだ」
「あ。なるほど」
「本物の一流になれ。いいな? 吾輩は本物の一流と本物の一流になる可能性のある者と本物の一流になろうと努力する者としかつきあわない」
「はい。でも、本物の一流になるためにはなにをすればいいんですか?」
「知りたいかね?」
「はい。もちろんです」
「どうしても知りたいかね?」
「どうしても知りたいです!」
「ロハで?」
「おカネは帰りの飛行機代しかありません」
「困ったな」
「わたしも困ってます」
「きみに困られては吾輩はもっと困る」

吾輩が言うと遠い異国から来た若者はくくくと笑った。

「本物の一流になるためにはだな ── いつも、常に、求めることだ」
「はあ? それだけですか?」
「無料の場合はこの程度である」
「飛行機代はあきらめます」
「ほんとか?」
「本当です!」
「本当の本当か?」
「本当の本当の本当です!」

遠い異国から来た若者の眼を覗きこむ。よし。腹をくくった眼だ。吾輩の眼に狂いはない。

「覚悟を決めたんだな?」
「決めました」
「どう決めたんだ?」
「飛行機代がないくらいで命を失うわけではありません」
「自分で答えをみつけたじゃないか」
「え?」
「つまりだな。いつ死んでもよし。臨終はこの瞬間、このたった今、現在のまっただ中にあるということだ」
「はあ…」
「つまりこういうことだ。アマゾンの奥地であろうとアフリカのサバンナのど真ん中であろうとマリアナ海溝の最深部であろうとアネイブル・コントロール中のV-22オスプレイの操縦席であろうとヨハネスブルグのポンテ・アパート42階の4242号室であろうとメイク・ラブの真最中であろうとめしもろくに喰えない貧乏どん底の困窮困憊の日々であろうと最愛の子、最愛のパートナー、最愛の親兄弟を失おうと、いつも、いかなるときにも、いかなる境遇にあろうとも、常に志をもって求めることだ」
「はあ…。でも、なにを求めたらいいんでしょうか?」
「ばかもの! それくらい自分でみつけやがれ!」

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世界の天井でハシゴ酒というのも乙なものだが、飲んだ酒は甲類である。
吾輩と遠い異国から来た若者は杯をかさね、ラデュレのバールのあと3軒ハシゴ酒した。

ベルモケで聴くジャッキー・テラソンの『Sous le ciel de Paris』は吾輩と遠い異国から来た若者の心にしみた。リヴェ・ドゥ・ラ・セーヌ・ア・パリを二人並んで歩き、ポン・デザールとポン・ヌフとポン・ロワイヤルを渡り、巨大な宝石、ポン・アレクサンドル・トワを1往復半して右岸に戻った。


アレクサンドル3世橋の女神たちにナンパされかかる。
4人の女神の前を通りすぎるたびに女神どもがウィンクしてきたが吾輩は華麗にスルーした。ピエール・グラネの女神だけが怒りの形相になり、闘いを挑んできたが、遠い異国から来た若者はその異変にまったく気づかない。暢気なものだ。ピエール・グラネの女神は吾輩がひと睨みするとすごすごと元の場所に戻っていった。


それにつけても、やはり人生はバラ色だ。
アレクサンドル3世橋を1往復半するあいだに吾輩は「本物の一流になれ」を3回言った。遠い異国から来た若者はそのたびに「はい」と言った。「3回目は自分に言ったのだ」と吾輩が言うと、遠い異国から来た若者がまた大声で泣いた。

「泣け泣け。もっと泣け。ここは世界の天井、パリだ。喜びも悲しみも一番最初に降りかかる」

それにしても、吾輩は本当によく人を泣かせる。天下御免の泣かせ屋一代。いまに始まったことではない。世界の天井でもなにひとつ変わらぬ。これもまた至誠一貫のひとつのかたちである。

遠い異国から遥々とやってきた若者よ。薄紅匂う荒野をこそ行け。なにはともあれ、人生はバラ色だ。

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La Vie En Rose - Edith Piaf
La Vie En Rose - Jacqueline François
La Vie En Rose - Sophie Milman
Sous le ciel de Paris - Edith Piaf
Sous le ciel de Paris - Yves Montand
Sous le ciel de Paris - Juliette Gréco
Sous le ciel de Paris - Larry Goldings & Harry Allen
 
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# by enzo_morinari | 2014-06-17 06:30 | 流儀と遊戯の王国 | Trackback

みえない世界がみえる女とダマされる人々

 
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おスピちゃん、ヒール・ピープル、エネルギー・マン、パワー・マンと呼ぶ一群の者たちがいる。彼らは例外なく「ダマされる人々」である。彼らはことあるごとに、そして、あらゆる局面場面で「スピリチュアル」と言い、「ヒーリング」「癒し」と言い、「エネルギー」と言い、「パワー」と言う。彼らは一様に物事、事象、現象、事態に対して無批判/無自覚/非論理的/非実証的である。

ダマされる人々は大抵の場合、「目に見えるもの」を信用しない。「目に見えるもの」を卑下してでもいるかのようだ。彼らが重きを置き、価値を認めるのは「目に見えるものの奥にあるもの」である。

彼らはどのようにして「目に見えるものの奥にあるもの」にたどり着こうとしているのかと言えば、彼らが言うところの「直感」に頼ってである。そして、彼らをダマしている者が見るのは銀行の預金通帳だけだ。


逗子の海の小さな入江に面した古いレストランのテラス席で昼めしを食べているときのことだ。

みえない世界がみえるのよ。 ── とても良心的で誠実で手抜きのいっさいない「良妻のスープ」を食べ終え、アボカドとトマトとバジルのパンサラダに取りかかったとき、隣りのテーブルからヒステリックにうわずった女の声が聴こえてきた。フォークを静かに置き、気取られないように注意深く声のしたほうを見た。

声の主は40代半ばの女だった。テーブルにはその女のほかに5人の女たちがいた。年代はばらばら。高校を卒業して間もないと思われるような少女。どう贔屓目に見ても70歳を過ぎているような老婦人。髪を無造作にひっつめた30歳くらいの女。いかにも生活疲れしていることが見てとれる50代半ばの太り気味の女。貪欲なカマキリのような眼をした20代後半の女。

波の音が邪魔をして、ときどき、彼女たちの声をところどころ掻き消したが、それでも会話の内容は十分に理解できる。

ドリーン・バーチュ 、ゲリー・ボーネル、バシャール、ヒーリング、ヒーラー、オーラソーマ、ゲアリー・クレイグ、エモーショナル・フリーダム・テクニック、オリバー・バークマン、フランシーン・シャピロ、眼球運動による脱感作および再処理法、あなたは特別、あなただけに、アセンション、次元上昇、5次元の地球、ライトボディ、半霊化した肉体、弥勒の世、菜食、縄文に帰る、前世、過去生、プレアデス、シリウス、オリオン、ポールシフト、フォトンベルト、波動、聖地、パワースポット、瞑想、チャネリング、天之御中主神、天照大神、天使、精霊、女神、光と闇、波動、13の月、マヤ暦、クリスタル、チャクラ、イルミナティ、オーラ、UFO、結界、ソウルメイト、ソウルグループ、シャスタ山、和の舞、EFT、EMDR

これらの言葉が次から次へとみえない世界がみえる女の口から澱みなく出る。不意に、「みえない世界がみえる女はじきになにかを売りつけるぞ」と思った。

みえない世界がみえる女が彼女たちのリーダーであることはすぐにわかった。ほかの女たちは神の言葉を待つような表情で女に視線を集中させていたからだ。みえない世界がみえる女以外の者はひと言も口をきかなかった。

みえない世界がみえるのよ。あなたもでしょう?」

みえない世界がみえる女に同意を求められたのは線の細い、悲しげな眼をした少女だった。

「みえます。はっきりと」

少女は少し間を置いてから、よく通る声で答えた。少女の答えを皮切りに、結局、全員がみえない世界がみえる女になった。「ただの同調圧力じゃないか」と思ったが、彼女たちは真剣だった。

再びアボカドとトマトとバジルのパンサラダに取りかかった。アボカドとパンをフォークに一緒に刺して口に運ぼうとしたとき、リーダーとおぼしきみえない世界がみえる女が濃いブルーのエルメスのバーキンからコバルト・ブルーの箱を取り出し、テーブルの真ん中に置いた。私は、再びフォークをテーブルに置いた。

みえない世界がみえる女1号は神殿で行われる聖なる儀式にでも臨むような芝居がかかった表情と仕草で箱の蓋をあけ、中から淡いピンクのアルシュ・ペーパーの包みを取り出した。そして、ゆっくりと「御神体」でも扱うように注意深く包みを開いた。

中身は水晶のネックレスだった。それもきわめて質の悪い水晶。中国製であることが一目でわかるほどの粗悪品だ。水晶自体の真贋、優劣を判別するのは経験と見識と高度な鑑定眼を必要とするが、台座やチェンの加工、細工の善し悪し、高低についてはそれほど難しいものではない。みえない世界がみえる女1号のネックレスはあきらかに噴飯ものの粗悪劣悪品だ。

みえない世界がみえる女1号はもっともらしい講釈を始めた。やっぱり。予想していたとおりだ。

「これでさらに上の次元に行けるのよ」

みえない世界がみえる女1号は神のお告げのように言った。

「おいくら?」

口火を切ったのは老婦人だった。

「80万円ですよ。ちょっとお高いようだけど、由緒来歴がちがいますからね。そんじょそこらのクリスタルとは」

そんじょそこら? そのひと言でみえない世界がみえる女1号の素性のあらかたが透けて見えた。私こそがみえない世界がみえる者だ。

驚くべきことに、あるいは当然、女たちは我先にと水晶のネックレスを手にし、みえない世界がみえる女1号から手渡された「契約書」に書き込みはじめた。

彼女らに「中国製の粗悪な水晶」「霊感商法」「クーリングオフ」のことを言っても聞く耳を持たないだろう。もはや、手遅れだ。行くところまで行って、つまりは、堕ちるところまで堕ち、家族を失い、信頼を失い、地獄を見てくるがいい。地獄の釜の蓋の色や亡者どもの肌の色をじかに見てくるがいい。自分で選んだ道だ。だれを恨んだところで、すべては筋ちがいというものだ。

一番年下の線の細い、悲しげな眼をした少女は不安そうな眼でちらとこちらを見た。おスピちゃんだ。

おスピちゃんの日常を想像する。

おスピちゃんは石が大好きだ。折り紙付きの意志薄弱で、意志はこどもの頃から電気グルーヴの音楽みたいに激しく脱臼しつづけているが、石が好きなおスピちゃんはきょうも日がな一日、おイシちゃんたちとの仲良しごっこに余念がない。

おスピちゃんのまわりにはおスピちゃんとよく似た人々が群がってくる。彼らが交わす会話は「すごいですね」「いいですね」「素敵ですね」「かわいいですね」以外の言葉はよく聴き取れない。これに、「エネルギー」「スピリチュアル」「パワー」「宇宙」「精神」「波動」「光」「精霊」「天使」「妖精」「前世」「次元」「超越」という単語が混じる。おそらく、ほかにもなにか言っているのだろうが、どんなに耳をそばだてても聴き取ることはできない。きっと、おスピちゃんたちの世界は「すごいですね」「いいですね」「素敵ですね」「かわいいですね」「エネルギー」「スピリチュアル」「パワー」「宇宙」「精神」「波動」「光」「精霊」「天使」「妖精」「前世」「次元」「超越」でできあがっているんだろう。素晴らしいことだ。ヨハネスブルク・キッズもコッチェビ・ボーイもチェルノブイリ・ベイビーもフクシマ・チルドレンもこれで前途洋々である。未来にはなんの心配もいらないし、ひとかけらの不安もない。

おスピちゃんはこの春から「スピリチュアル・ダイバー1級」の資格をえるためにスピリチュアル・ダイビングスクールに通いはじめた。北鎌倉の建長寺前にあるスピリチュアル・ダイビングスクールはおスピちゃんとおなじような精神構造、顔つきをした人々でたいへんな賑わいをみせている。スピリチュアル・ダイビングスクールの校長であり、創設者は「ミイラとりがミイラ殺人事件」で一躍スピリチュアル世界に勇名を轟かせたライフ・スペースの残党である。馨しき嘘臭さぷんぷんの校長、シマヅ・コーイチの口ぐせは「自分を乗り越えろ」だ。

スピリチュアル・ダイビングスクールの生徒は自己啓発セミナーを同時受講しているか、過去に受講経験を持つ者が大半である。素晴らしい。まことに素晴らしいかぎりである。よほど自分の中にダイビングするのが好きなんだろう。だが、一様に彼らには「自己」がない。付和雷同型である。危うい。世界にごまんといる頬笑みを湛えたしたたかなならず者にかかったらイチコロのはずだ。

授業開始を知らせるジョージ・ウィンストンの『Fragrant Fields』が構内に流れ、生徒たちが入学時に100万円で買った校章入りのラピスラズリのネックレスが揺れるジャラジャラという音が響きわたった。「頑張らなくちゃ。なにに頑張るのかはわからないけど、とにかく頑張らなくちゃ」とおスピちゃんは強く思った。

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おスピちゃんの愛読書は、「ナカミチDRAGON記念第42回しぶとい女世界選手権」の覇者、ジョーン・ドゥドーン・マクレーン著『Out on a Limb of Rim of World of Spiritual/The Trouble With Hurry(邦題:精神世界の外縁の端っこの先っぽ/急ぎ仕事と付け刃の災難)』だ。

『Out on a Limb of Rim of World of Spiritual/The Trouble With Hurry』にはいかなることが書いてあるかというとさっぱりである。すっからかんである。Out of Ganchuそのものである。にもかかわらず、おスピちゃんは『Out on a Limb of Rim of World of Spiritual/The Trouble With Hurry』をいつもビューティフルで潜在意識だらけでライトボディでミニマリズムかつニューエイジかつシフトなトートバッグの中に入れて持ち歩いている。そして、おスピちゃんはなにかというと『Out on a Limb of Rim of World of Spiritual/The Trouble With Hurry』をドヤ顔で取り出し、読む。ときに引用する。

おスピちゃんの言うことを聴いている者たちの表情は一様にうっとり恍惚としてはいるが、実際には彼らはおスピちゃんがなにを言っているのか、なにを言いたいのかまるっきり理解できていない。当然だ。おスピちゃんの言うことには内容、中身がないからだ。内容、中身がないのに「語られていること」を理解することなどだれにもできない。たとえそれが虹のコヨーテや呪われたアルマジロやGRIP GLITZや海を殺した女やメニエール・ダンサーのガジンであってもだ。

かつてジョーン・ドゥドーン・マクレーンは『尾行好きでアレがでかくてビューティフルな弟を持つことについて』と題した一文を雑誌『ニューエイジャー』に寄稿したことがある。それは世界中のスピリチュアリスト、スピリチュアル系、スピ者、好き者、インド屋、あっち系、こっち系、そっち系、どっち系、どっちら系、とっ散らかし系、彼岸系、平行宇宙系、5次元世界系、女神系、お天使ちゃん系、不思議ちゃん系、パワースポット系、波動信奉系、プレアデスシリウスオリオン系、フォトンベルト系、弥勒ちゃん系、パストラル系、ヴィジョンがみえるちゃん系、瞑想系、チャネリング系、ヒーリング系、木花之佐久夜毘売系、大好きな石はクリスタル系、チャクラ系、イルミナティ系、エジプト系、オーラ系、UFO系、光と闇系、タロッター系、13の月系、マヤ暦系、結界系、ソウルメイト系、シャスタ山系、和の舞い系、聖なる性系、アセンション系、光の身体者、千年紀待望者、ウィンダムヒル・マニア、ニューエイジ・ピープルの信奉を集めるガネガネ・ウソッパチマヤカシインチキ・セドナ・ストーン・コレクター、『ニュートン』の熱心熱烈な読者、「真理獲得のためには危険を冒してでも危険な枝の先っぽまで登らなければならない」が口ぐせの者たちを魅了し、虜にした。ふざけた話である。なぜなら、『尾行好きでアレがでかくてビューティフルな弟を持つことについて』はディック・トレイシー・ハイド・ウォーレン・ベイティとの近親相姦について文法上の誤謬と誤記とゴカイとイソメまみれの駄文に過ぎなかったからだ。

その愚劣愚鈍さは勘ちがい気取り屋湘南バカ夫人クラスである。ジョーン・ドゥドーン・マクレーンの当てずっぽう当て推量な「預言」どおり、メルセデス・ベンツのフロント・グリル外縁が神宮外苑銀杏並木の青山通りから12本目の銀杏の樹の下に埋められているとしても、看過できない悪辣さを『尾行好きでアレがでかくてビューティフルな弟を持つことについて』は孕んでいる。

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メルセデス・ベンツはフロント・グリルの新型スリーポインテッド・スター・イルミネーション方式に対する不法行為を理由にジョーン・ドゥドーン・マクレーンに対して損害賠償請求の訴えを起こさなければ長年のメルセデス・ユーザーとして納得できない。この夏にはベントレーのコンチネンタルSPEED GTに乗り換えるのでどうでもいいことにできなくはないが。


そんな胡乱な状況にもかかわらず、おスピちゃんは能天気極楽とんぼ丸出しできょうも『Out on a Limb of Rim of World of Spiritual/The Trouble With Hurry』に夢中、鼻高々である。『Out on a Limb of Rim of World of Spiritual/The Trouble With Hurry』の書き出しはこうだ。

Life is Life.

まいりました。<(_ _)> m(-_-)m orz〜

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# by enzo_morinari | 2014-06-16 11:35 | 沈黙ノート | Trackback