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切り裂きバロウズ#3 奇妙な味の南国果実を賭けて第二次世界大戦のエース・パイロットと戦う

 
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ロアルド・ダール劇場でイヨネスコの『瘤』へのオマージュを見てから全共闘Cことゴミアクタ・マサヒコを踏みつぶし、第二次世界大戦のエース・パイロットだった老人と「奇妙な味の南国のフルーツ」を賭けてポーカー・ゲームをやって散々な目に遭った週末の出来事の話だ。


悪辣きわまりない湯気をあげるカット・アップされた42オンスのTボーン・ステーキをカミソリのごとき切れ味のナイフでど真ん中から切り分けると、地獄の釜で煮立てたような肉汁の香りが猛烈な勢いで立ちのぼってきた。めまいがしそうなほど濃密なにおいだった。実際に激しいめまいがし、同時に数日前の出来事があざやかによみがえった。「第二次世界大戦のエース・パイロット」というふれこみで紹介された老人にポーカー・ゲームで散々な目に遭った週末の出来事が。

落成記念公演中のロアルド・ダール劇場で丹古母鬼馬二が極秘裡に出演していたウジェーヌ・イヨネスコの『瘤』へのオマージュの壮絶なアングラ劇を見終え、舞台監督/演出家/脚本家にして学生結婚自慢野郎の全共闘Cことゴミアクタ・マサヒコを切り裂きバロウズ、J-M-P-Dことプイグのウタダ・オートマティックな取扱説明書男とともに文武両道軒・三島由紀夫の敵討ちがわりにさんざっぱら踏みつぶして大いに溜飲を下げた。そして、愚か者どもの罵声で騒然とするロビーで、切り裂きバロウズから「第二次世界大戦のエース・パイロット」というふれこみで一人の老人を紹介された。その老人は指揮者のエフゲニー・アレクサンドロヴィチ・ムラヴィンスキーに驚くほどよく似ていた。

長身痩躯。青白い貌とおぼろに揺れる瞳。世界の森羅万象を見抜き、射抜く猜疑心の塊りのような金壺眼。老人に見つめられると背筋が凍りついた。実際に右の第5肋骨のあたりが凍ってぺきぺきと音を立てた。

老人はドライケーキの銀座ウエストのウェイトレスのおねいちゃんの尻を熟練の手つきで撫でまわしながら、「奇妙な味の南国フルーツ」を賭けることを提案した。ポーカー・ゲームで。

今から思えば、ドライケーキの銀座ウエストでオスカー・ピーターソンの『In Tune』などをリクエストしたのがそもそものまちがいだった。夏の気配を孕んだ春の盛りにオスカー・ピーターソンの『In Tune』を聴く凡庸をこそ恥じるべきだ。しかも、ドライケーキの銀座ウエストで。アンナミラーズでならまだしも。あるいは神宮前Wine Vin Vinoでなら。問題の核心はそこにある。
 
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by enzo_morinari | 2014-05-12 11:12 | 切り裂きバロウズ | Trackback

切り裂きバロウズ#2 プイグのウタダ・オートマティックな取扱説明書男 ── 亡き王女のためのパジーナス

 
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J-M-P-Dことプイグのウタダ・オートマティックな取扱説明書男はテーブルにつくなり、「亡き王女のためのパジーナス」と言い、やや間を置いてから、蜘蛛女とベーゼしすぎて赤く腫れた唇をきわめて滑らかに動かして、次の13の文節を立てつづけに発した。

始まりの歴史。ガチョウの紹介。オーロラの伝説。ビリー・ジーンの最期。出会いの時。愛から芸術へ。ヴェーロ・ヴェーロの愛。静寂の徒弟たち。単純にありえること。黄色いページ。真実の愛。繰り返される歌。七つの顔の歌。

これらの13の語にはリタ・ヘイワース色の翼が生えていて、プイグのウタダ・オートマティックな取扱説明書男の蜘蛛女とベーゼしすぎて赤く腫れた唇から吐き出されるや否や嘆きのベルリン天使の恥部に向かって飛び立った。

「さて、そこだ」と切り裂きバロウズが余裕しゃくしゃく(シャクユミコ整形シスギ)で言った。そして、額ポケットからニノチカ色の「グレタ・ガルボオの堀口大學オギノ式眼球」を42個取り出した。「おれは一瞬にしてこの店を椿姫が暗躍するグランド・ホテルに変えることだってできるんだぜ。殺し屋のライフの野郎を使ってな」

まったく、この世界ときた日には、「奥様は顔がふたつ」という寸法だ。
 
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by enzo_morinari | 2014-05-10 05:58 | 切り裂きバロウズ | Trackback

切り裂きバロウズ#1

 
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Maldición eterna a quien lea estas páginas.
このページを読む者は永遠に呪詛されやがれ。
J-M-P-D

Eternal Loose on the Ripper of These Pages.
このページを切り裂く者は永遠に弛緩しやがれ。
E-M-M


切り裂きバロウズが「裸のランチ会」をしようと言うので、メイン・ディッシュはなにかとたずねた。

「そりゃ、おれたちがこの季節に喰うとなりゃあ、42オンスのTボーン・ステーキをカット・アップしたものだろうさ。レーゼシナリオどおりにな。そうとも。すべてはレーゼシナリオどおりにな」
「だな。あんたの言うとおりだよ、切り裂きバロウズの旦那。で、カット・アップした42オンスのTボーン・ステーキは一体全体どこでありつけるんだ?」
「暗闇坂のてっぺんにある『ラ・セレスティーナ』さ。樽の坊や。だれがなんと言おうと、カット・アップした42オンスのTボーン・ステーキはあの店にかぎる」

早速にわれわれは暗闇坂を登りきったラベンダー畑の中央、眼下に古刹を見下ろすロハス食堂『ラ・セレスティーナ』に向かった。蜘蛛女とベーゼしすぎて唇を赤く腫らしたJ-M-P-Dがやってきたのは、われわれが『ラ・セレスティーナ』に到着して15分ほど経ってからだった。
 
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by enzo_morinari | 2014-05-09 14:26 | 切り裂きバロウズ | Trackback