カテゴリ:脚線美をめぐる三都物語( 1 )

ハナちゃんはジョン・ルイスを探して ── ハナちゃんの脚線美をめぐる三都物語

 
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脚は常に発情し、挑発し、誘惑する。E-M-M


ジャンルー・シーフの『誘う脚』に出てくるような魅惑の脚線美を持つハナちゃんは、いつも楽しそうではあるけれども悲しげにT-SQUAREの『TRUTH』のメロディーを口ずさんでいる。

「音速の貴公子が春のイモラ・サーキットのタンブレロ・コーナーの悪意に満ちたコンクリート・ウォールに激突して死んでから、世界は色も匂いもない、ただ退屈なだけの鳥籠同然よ。チャーリー・パーカーが確証を失って楽旅の最終のコンファームをしそびれて鳥の楽園から追放されたみたいに退屈で辛気くさくて陰険で陰湿。外は見えるけどなにもできない。羽ばたくことすらもね。だから、わたしはジョン・ルイスを探す旅に出ることにしました。ついでにルイス・キャロルも見つけだします。そして、海亀もどきスープを鍋みっつ分飲む。ドードー鳥の丸焼きも食べなきゃだわ。発狂お茶会では加藤ティーの頭に禁忌スープをぶちまけて、それから、それから、ハートの女王を踏みつぶして水銀中毒の帽子屋さんを助けだすわ。すべてが首尾よく運んだら、帰宅時間はゲーデルにきいてくれと言い残してお昼ごはんに出かけたきり行方不明のエリック・ドルフィーにちゃんとごあいさつをしなくちゃね。カール・ルイスと小カール君とはハドソン川に面したベンチに一緒に並んで座って、ルイス食堂特製のモンタナ急行ハンバーガーを齧ります。ホルヘ・ルイス・ボルヘスのお墓参りもする。ダニエル・デイ=ルイスにはサインをもらいます。そして、最後はモヒカン族の最後の女になる。ミラノ、パリ、ニューヨーク。ベルリンと上海も行かなくっちゃ。トーキョー? とっくの昔に死んだ街になっちゃったわ。あるのは廃墟だけ。いるのはゾンビだけ」

ハナちゃんは一気に言うと大きくて深いため息をついた。

「話はとてもよくわかった。で、なにから始める?」
「そうね。サー・ローランド・ハナ・トリオの『Skating in Central Park』を42回連続で聴いてから航空券を手配するわ。そして、春の盛りのセントラル・パークでスケートして、トリプル・アクセルとイナバウアーを分裂症のニューヨーカーどもにみせびらかしてやる」
「なにもできないけど、いい旅になることを祈るよ」
「ありがとうございます」
「ジョン・ルイスに会えるといいね」
「きっと会えるわよ」

そして、ハナちゃんはサー・ローランド・ハナ・トリオの『ミラノ、パリ、ニューヨーク ─ ジョン・ルイスを探して』をCDプレイヤーにセットした。プレイ・ボタンを押すときに呪文のような言葉をつぶやいた。

「ジャンゴ、ジャンゴ、ジャンゴ。ジャンゴの真実。ジャンゴはあきらめない。左手の古傷が痛んでも、リップ・ヴァン・ウィンクルにXYZマーダーズを喰らわされても決してあきらめない。何度でも立ち上がる」

ハナちゃんの言っている言葉がおそろしい呪文であるとわかるのは42日42時間42分42秒後だった。


Skating in Central Park - Sir Roland Hanna Trio (Recorded at The Django Studio in New York on April 1, 2002)
 
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by enzo_morinari | 2014-04-26 11:11 | 脚線美をめぐる三都物語 | Trackback