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THUGZ4LIFE/神宮前ストリート・バケーション

 
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 東京は路地と廃墟と騒ぎと痛みと怒りの街だ。E-M-M


 ホームレス・ソルジャー

 渋谷道玄坂から神宮前へ。まともには行かない。路地があれば侵入する。廃墟があれば対峙する。騒ぎがあれば見物するか騒ぎに加わってさらに騒ぎを大きくする。笑っている者がいればいっしょに笑う。歌っている者がいればいっしょに歌う。食べている者がいればすぐ横で指をくわえるか涎を垂らすか分け前を要求するか横取りする。泣いている者がいればいっしょに泣くか涙をぬぐってやるかさらに泣かせるかする。痛みに顔を歪めている者がいれば介抱するか塩を塗りこむかさらに抉るかする。怒っている者がいれば怒りの理由をたずねてみるか理由などおかまいなしにさらに怒らせる。それがオレの神宮前ストリート・バケーションだ。

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 宮下公園下をくぐり、明治通りに出る。野武士のごとき御面相のホームレス・ソルジャーに一瞥をくれてやる。腹のすわったいい面構えだ。テリトリーを示すのでもあるのか、膨大雑多な物件が植え込みに並べてある。中に真新しいキャップやスヌークなどのストリート系ものがいくつかある。黒地に白い刺繍で「STREET4LIFE」と縫いこまれたキャップを手に取る。ホームレス・ソルジャーがぎろりとオレを睨む。
「触るな」
「触られたくなけりゃ隠しとけ」
「ふん。おもしろそうな野郎だ。取って喰っちまいてえぜ」
「ふん。喰えるもんなら喰ってみな。おまえさんのやわな顎で俺様が噛み砕けるかな? おれの歯ごたえはちょいとばかりタフでクールでハードボイルドだぜ」
「気に入ったぜ。欲しけりゃくれてやる」
「おれは乞食じゃねえよ」
「おれもだ。人様に施しなんか受けない。おれは兵士だ。ストリートの兵士なんだ」
「こりゃ、たまげたぜ! 極楽とんぼばかりだと思ってた東京に兵士がいるとはな!」
「ホームレス・ソルジャーと呼ぶがいいさ」
「それならおれはストリート・ソルジャーだ」
「ほっほっほ! ますますおもしろい野郎だ」
「どうだ? これから花見と洒落こまねえか?」
「花見? どこもかしこも腑抜けどもであふれかえってやがるぜ」
「一カ所だけ誰もいない花見の特等席があるぜ。見てみな」
 オレはホームレス・ソルジャーにそう言って明治通りにかかる歩道橋を指差した。
「おお! あんた、おもしろいだけじゃなくて頭もいいな!」
「まあな」
 オレとホームレス・ソルジャーは連れ立って歩きだした。途中、セブン-イレブンに寄ってビールと日本酒とウィスキーとマイヤーズ・ラムとビーフィーター・ロンドン・ドライジン47度を買った。歩道橋の真ん中に立つと路地の奥に光のひとかけらさえも射さない小さな公園が見える。若造が3人、桜の木の下で酒盛りをしている。悪だくみもしているにちがいない。オレとホームレス・ソルジャーは手始めにビールで乾杯した。プルリングを引き上げるときの音がこれからストリートを、世界をステンシル・ステルス爆撃機で絨毯爆撃する合図とも聴こえた。
 ホームレス・ソルジャーはフラップ・ポケットから認識票をごっそり取り出し、両手の上に広げて見せた。そして、「おまえの認識票だ。好きなのを選べ」と言った。オレは「STREET4LIFE」と刻印のある認識票を取った。その瞬間からオレは本物のストリート・ソルジャーになった。すでにして戦友も一人いる。古強者の戦友はすぐ横でビールをうまそうに飲んでいる。

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 STREET4LIFE, THUGZ4LIFE

「与えられる世界は本日只今をもって終らせる。この今、この瞬間から   
 ホームレス・ソルジャーはそこまで言ってビールの残りを飲みほした。「   世界を与えられる世界から奪い取る世界に変える。おれたち二人だけでやり遂げるんだ」
「厄介そうな仕事だな」
「そのとおり。援軍も後方支援も兵站もない。あるのは孤独と空腹と寒さと熱さと嘲笑と臆病者どもの悲鳴だけだ。どうだ? ずいぶんと早いが除隊を願いでるか?」
「いや。ベテランズ・デイのミーティングに行くにはまだ早すぎる。それにおとといからいい死に場所と死ぬには手頃な日を探しはじめたもんでね。おれにはうってつけの仕事だ」
「いい死に場所? 死ぬには手頃な日? そんなもんはこの世界にありゃしない」
「なきゃつくるまでだ。話は簡単だ」
 ホームレス・ソルジャーの肉付きのいい背中にイーストン社製クロムモリブデン鋼4130の極太パイプが通った。両の眼はらんらんと輝き、獰猛な色を発している。腹を空かせたグズリの眼だ。
「兵士としてはいい心構えだが、おまえさん、それは本気か?」
「おれは冗談とデコスケと定期預金が大嫌いだ」
「本気なんだな? おれといっしょに炎の中心に立てるんだな?」
「本気も本気、炎の中心であんたのうすらでかいケツに蹴りを入れてやるよ。その証拠にこれを見てみろ」
 オレはそう言ってホームレス・ソルジャーの目の前で左腕をアーミー・ナイフで切り裂き、「STREET4LIFE」と彫りつけた。ホームレス・ソルジャーはいかにも満足げだった。そして、オレの「血の儀式」を見届けてから腰の巨大なダガーを抜き、左腕を切り裂いた。ホームレス・ソルジャーの赤銅色の腕には「THUGZ4LIFE」と彫られた。そのときくらい、2PACの『Thugz Get Lonely Too』を聴きたいと思ったことはない。精神はいくらでも昂揚し、ふやけた東京の空を真っぷたつに切り裂いて飛翔していく。

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 Hey Homies! R U Still Down Gun 4?

 焼け焦げるような深く長い夢から覚める。紫色に腫れ上がった左手の甲にソルジャー・ドッグがあごをのせて寝息を立てている。鈍く重い痛みが全身にある。周囲の状況を確認したいが頚が思うようにまわらない。動かそうとするたびに激痛が走る。仕方なく、眼球だけ動かす。
 右。ぼろ布に変わり果てた若造が3人倒れている。ふん。だらしのない奴らだ。まあ、どうということもあるまい。最悪でもみっつの死体ができあがっただけのことだ。
 左。ホームレス・ソルジャーがガードレールにもたれて座り込んでいる。いくぶんか息が荒い。着ているものがあちこち破れている。引きちぎられたようなのもあれば刃物で切られたような鋭い痕跡も何ヶ所かある。やれやれ。われわれは初戦からいきなり激戦苦戦したというわけか。状況からして生きているだけでもよしとしなければなるまい。死は手加減も容赦もないが、今回に限ってはわずかに手を抜いてくれたようだ。
 上。あいもかわらず極楽とんぼが飛び交い、腑抜けどもが見上げるのにお似合いの東京の空。どでかい手でも現れやがれってんだ。
 下。地獄。美醜大小様々取り混ざった地獄。

「起きたな」とホームレス・ソルジャーがぼそりと言った。いかにも力を失った言葉だった。
「ああ」
「生きているようか?」
「ああ。たぶんな。あんたは?」
「おれもだ。しかし、世界がジョン・ニエトの絵のように色気づいてやがる。まぶしいぜ」
「おれはバスキアとキース・ヘリングの絵みたいに32ビートで世界が踊ってる」
「へっへっへ。そいつはたのしそうじゃねえか」
「たのしいがかなり痛い」
「だろうな。おれもさ。だが、おれたちには常に痛みが必要なんだ。本物の兵士は痛みを飼いならし、友としなけりゃならないんだからな」
「で、あそこに転がっている若造3人は?」
「おぼえてないのか?」
「ああ。たいていのことは起こったそばから忘れるようにしてる。なにかをおぼえていていいことなんぞこれっぽっちもない人生だったもんでね」
「おまえさんがデブとノッポを、おれがチビを始末した。おまえさん、中々の腕っ節だったぜ」
「奴らがくたばっていないところをみると、おれも鈍っちまった。あと5歳若かったら、奴らは今頃、挽肉だ」
「ほうほうほう! そいつは見ものだったろうぜ」
「で、この犬っころは?」
「ああ、おれの相棒のソルジャー・ドッグだ。名はポルコロッソ。ミニチュア・セントバーナードの兵士だ。見た目はおとなしそうだが、戦闘中は地獄の邏卒になる恐ろしい野郎だ」
「ということは今のところ兵士は3人ってことだな?」
「そのとおりだ」
「オーケイ。とりあえず、どこかでめしを喰おう。全身にかわいらしい痛みがあるが、腹だけはへってる」
「だろうな。酒は浴びるほど飲んだが喰ったもの言えばグリッシーニを3本ずつだけだからな」
「そりゃ、腹もへるってもんだ」
 ホームレス・ソルジャーは若造3人のところに歩いていき、怒鳴りつけたあと若造どもを蹴り起こした。若造どもは恐怖に眼を凍りつかせている。ホームレス・ソルジャーがなにごとか言うと、若造どものうちのデブが脱兎のごとき足取りで走り出した。太ったうさぎの走り。笑いがこみ上げてくる。
「奴らはゲットー・ボーイズ。これからわれわれの軍隊の兵士になるための訓練をする」
「ものになりそうか?」
「おれとおまえさん相手に闘って生きているんだ。見込みはある」
「そうか。そりゃよかった。使いものにならない兵隊が100万人いたところでえられる結果はたかが知れているからな」
「まさに」
「で、デブうさぎはどこへ?」
「ああ、食いもんを調達しに行かせた」
「なるほど」
「文無しでどうやって食料を手に入れてくるのかたのしみだ」
「はっは! とんだ鬼軍曹様に見込まれちまったもんだな! あのデブうさぎは」
「この世界にゃでっけえ時限爆弾がいたるところに仕掛けてあるんだ。すべてを吹っ飛ばしちまう時限爆弾がな」
 ホームレス・ソルジャーは言って変圧機の横に転がっているビーフィーター・ロンドン・ドライジン47度の瓶を拾い上げ、親指でスクリュー・キャップを弾き飛ばすと貪るように飲んだ。
「そいつを仕掛けたのはだれだ?」
「決まってるだろうが。あいつだよ。いつも訳知り顔で世界やら人間やらをえらそうに見下ろしてやがるあの野郎だ」
 そう言うとホームレス・ソルジャーはふやけきった東京の春の盛りの空をおっ立てた中指で指差した。「まったくファックな野郎だぜ」
「あんたの予想では時限爆弾はいつ爆発するようにセットされているんだ?」
「さあな。おれにはわからない。だれにもわからない。だがな、これだけは言えるぜ。タイマーセットの時間はわからねえが、遅かれ早かれ時限爆弾は爆発する。そして、世界から人間どもは一掃される」


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by enzo_morinari | 2013-11-16 16:37 | THUGZ4LIFE | Trackback

THUGZ4LIFE#1 N.I.G.G.A.@Never Ignorant Getting Goals Accomplished

 
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 強盗人生、強盗の日々。それがオレの生き方、オレの生きざま、オレのビッグ・ゲーム。


 世界中の女どもにモテモテなうえに、冷感症の女さえヒンヒンヒーヒーよろこばせる精力絶倫男Hoochie Coochie Manの異名を持つオレ様だ。この世でこわいのはおふくろ様だけ。どう足掻いてもおふくろ様にはかなわねえ。なんせ、おふくろ様こそはオレの「拠って立つところ」「自立の思想的拠点」だからな。そして、きょうもオレ様は強盗人生、強盗の日々、THUGZ4LIFEに精を出す。もちろん、女の中には生で出す。フレッシュ・フラッシュ・ピスショットだ。
 それにしても、だ。木っ端役人の野郎どもはちんけな盗人、こそ泥ばかりだな。だがよ、やつらにやり放題させたままじゃおかねえぜ。ただじゃおかねえ。いつか、オレのやり方で、ほかの何者にも真似できないクールでヒップでホップなメソッドでやつらの首をかき切ってやるさ。やつらのシケてちんけで陰気で辛気くさい人生に特大の地獄の業火を放って火だるまにしてやる。
 焼き加減? レアもミディアムもウェルドーンもコンガリもない。全焼。完全燃焼。丸焼け。やつらのはらわたとおなじ真っ黒けっけの炭っ端だ。Fuck Jay-Z! Fuck Bad Boy Label! Fuck Bureaucrat! Fuck Kopper-Yakoonin!ってこったな。
 THUGZ4LIFE. きょうも世界は What a Wonderful World で、La Vie en Rose で、Everybody Kills Somebody Everyday で、Mobbin' Like a Motherfucker Stuck で、YEAH, No Doubt だ。きょうの手始めのバグはどんなキャッチにしてやるかな。ビッグ・ゲームになればいいが。イージー・マッチなら言うことなしだ。
 
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by enzo_morinari | 2013-10-02 03:00 | THUGZ4LIFE | Trackback