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STAY GOLD#1 夕焼けをみる心が黄金なんだ。

 
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 夕焼けがせつないのは太陽が別れを告げながらすべてを燃やしつくしてしまうからである。一日に起こり、思い、感じ、経験したもののすべてを。 E-M-M

 風邪っぴきのため、体調はなはだ悪し。咳が止まらぬ。体温38度7分。平熱が35度ほどの吾輩にはかなりしんどい。人間という生き物はきわめて狭いサーマル・バンドの中で生きていることを実感する。
 ひと晩、たっぷりと休養を取ったら、体調は驚くほど恢復した。景気づけに『レオン』『紅の豚』、そして『アウトサイダー』を立てつづけにみる。『レオン』は週に一度、『紅の豚』は月に一度、『アウトサイダー』は夕焼けをみたくなったとき、それぞれみる。特に『アウトサイダー』を見終えたあとは、かならず夕焼けをみにいくことにしている。
『アウトサイダー』。好きな映画だ。内容は下町の「グリース」と呼ばれる不良グループと山の手の「ソッシュ」と呼ばれるお坊ちゃんたちの戦いと傷心と痛みの寓話である。
『アウトサイダー』は『地獄の黙示録』で山ほどの借財を抱えたフランシス・フォード・コッポラが、資金稼ぎのために制作したといわれている。公開当時、「アメリカン・ヤング・スターズ」といわれた若手の役者が大挙して出演している。トム・クルーズ、パトリック・スウェイジ、マット・ディロン、C.トーマス・ハウエル、ラルフ・マッチオ、ロブ・ロウ、ダイアン・レイン、エミリオ・エステヴェスら、のちに「大物」となる役者が目白押しである。映画評論家どもやら訳知り顔の映画通どもに貶されることのほうが多い作品だったが、映画評論家も映画通もいっさい信用しないし、認めないから、彼らが『アウトサイダー』をどのようにこきおろそうと吾輩の知ったことではない。
 1983年公開。封切り初日に横浜馬車道の東宝会館でみた。映画は一人でみるものと決めている吾輩が『アウトサイダー』だけはガールフレンドと一緒にみた。映画が終わって立ち上がれない吾輩の背中をガールフレンドはずっとさすっていた。彼女自身もしゃくりあげながら。あの日から30年が経ってしまったか。30年のあいだにパトリック・スウェイジは膵臓がんで死に、トム・クルーズはハリウッドというワンダーランドで押しも押されもせぬ大物となり、エミリオ・エステヴェスの実弟のチャーリー・シーンは救いようのないポンコツに成り下がった。吾輩の「荒ぶる魂」もなりをひそめるはずだ。ポンコツヘッポコスカタンの無礼非礼を華麗にスルーできるようになったんだからな。時間は手加減なし容赦なしに残酷だが、ときとしてひとをいい方向に変えることもあるということか。
 下町の「グリース」と呼ばれる不良グループと山の手の「ソッシュ」と呼ばれるお坊ちゃんたち。単純だが永遠の「階級闘争」が『アウトサイダー』の主題である。陳腐なテーマではあるが、この図式はずっと続くんだろう。変わらないもの、変えようのないものもまたいくらでもある。
『アウトサイダー』は20世紀前半のアメリカを代表する農村詩人、ロバート・フロストの『Nothing Gold Can Stay(黄金は情け容赦なくうつろう)』をモチーフのひとつとしている。「人間は生まれたときは黄金のように輝いているが、時間の経過とともに輝きは色褪せる。しかし、だからこそ友よ、ずっと黄金のままでいてほしい」というメッセージ。そのメッセージを受け取れない者の魂は錆つき、背中は煤けていると思ったほうがいい。
『アウトサイダー』のテーマ・ソングはスティーヴィー・ワンダーの『STAY GOLD』だ。この歌の中に「夕焼けをみる心が黄金なんだ」という一節がある。『アウトサイダー』の夕焼けのシーンでこの歌が流れるといつも鳥肌が立つ。「映画の夕焼けのシーン」ランキングがあればおそらく上位にランクインするだろう。肝心の夕焼け、夕映えが一部作り物という不調法があるが、おのが魂、性根、心映えに黄金に輝く夕焼け、夕陽、夕映えがあれば気にもなるまい。要は夕焼けをみる心の黄金を持っているかどうかということだ。
 東京時代はいい夕焼けを見るのにすごく苦労した。もっぱら浅草松屋屋上のフェンス越しに上野のお山の東天紅あたりに沈む夕陽をみるか、お台場海浜公園の夕焼け広場の芝生に座って夕焼けをみるかすることが多かった。ついさきほど、心ふるえる夕焼けにまみえた。ここ10年でもっとも沈黙せざるをえない夕焼けであった。
 いつか、気持ちのいい風に吹かれながら、「締め切り」やら「予定」やら「約束」やらといった鬱陶しいことどもとは遠く離れて、「燃えあがる夕焼け」を時さえ忘れて、いつまでもいつまでも眺めてみたいものだ。ついでに、まだおのが魂、心に黄金があるか否かの計測も。

 STAY GOLD. 夕焼けを見る心が黄金なんだ。


 Nothing Gold Can Stay / Robert Frost『New Hampshire』より

 Nature's first green is gold,
 Her hardest hue to hold.
 Her early leaf's a flower;
 But only so an hour.
 Then leaf subsides to leaf.
 So Eden sank to grief,
 so dawn goes down to day.
 Nothing gold can stay.
 
 創造の時 滴る緑は黄金に輝き すぐにうつろう
 創造の時 輝く葉は花 そして瞬く間に散りゆき
 やがて葉はただの葉
 エデンは悲しみの底に沈み 夜明けはただの昼
 黄金は情け容赦なくうつろう


*下記のページの「夕焼け画像」がすばらしい。是非ともみていただきたいものだ。
 MAGIC HOUR 13.8.2013
  
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by enzo_morinari | 2013-08-13 21:28 | STAY GOLD | Trackback