カテゴリ:ゆるゆる王国( 4 )

ゆるゆる王国#4 軽やかな絶望と3種類のサラダと坂本慎太郎のうた

 
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 昏睡の季節、紡錘形の静寂が支配する家における軽やかな絶望と3種類のサラダと坂本慎太郎のうた

 遠い空から降ってくるっていう幸せってやつがあたいにわかるまで
 あたいタバコやめないわ プカプカ プカプカプカ
Z-K-Z


 午前中にサフラン摘みをした日の昼餐は、由良デリコが「パウル・クレーの食卓」と呼ぶホンジュラス・マホガニーの8角形のテーブルで行われる。パウル・クレーの食卓に並ぶのは決まってサフラン・ライスとチキンのグリーンカレーとサラダだ。きょうのサラダは3種類。
 フルーツトマトとリコッタチーズを野菜の森で覆い隠したサラダ。
 ルッコラとザワークラフトとリンゴと胡桃とサヴォワ地方のコンテチーズと野生のスミレのサラダ。
 ローズマリーで燻したハムとサラダ菜と湯がいたブロッコリーとチェリートマトと黒オリーヴとパルメザンチーズの薄切りにアイオリソースがかかったサラダ。
 サラダだけでお腹がいっぱいになってしまうが、パウル・クレーの食卓に並んだものはひとかけらたりとも残すことはゆるされない。残したりすれば由良デリコの一閃によって鼻か耳たぶか指先が切り落とされることになる。まだしばらくは五体満足でいたいのでどれほど苦しくてもパウル・クレーの食卓に並んだものはすべて食べつくす。由良デリコは特にサラダに関して異様なほどのこだわりと執着を持っているので、毎回、サラダはとても手のこんだものが作られる。量も並大抵ではない。サラダボウルに山盛り。しかも、きょうのように何種類も。今までで一番多かったのは42種類だ。
 孤独なオートバイにまたがり、月の滴をなめながらときどき考える。いったい死ぬまでにどれくらいの量の、何種類のサラダを食べることになるんだろうと。もちろん、答えは出ない。これもひとつの確かな絶望だ。軽やかな絶望をたのしむために坂本慎太郎の『傷とともに踊る』と『まともがわからない』を交互に聴く。それで少しは絶望のダンスのステップは軽やかさを増す。素晴らしいことだ。 食事を終えた由良デリコは『プカプカ』を口ずさみながら、涼しい顔でタバコを吹かしている。モクモク共和国のラパタータ・マニョーリア大統領を虎の門のJTビルから突き落としたことなど知らぬげに。
 
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by enzo_morinari | 2013-07-30 20:47 | ゆるゆる王国 | Trackback

ゆるゆる王国#3 モクモク共和国の逆襲

 
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 そんなわけで、出会ったその日に私と由良デリコはゆらゆらゆるゆるとシコシコすることになったわけだが、問題がなかったわけではない。由良デリコはトヨバーバの妹のユバーバの怒りと呪いを受けて右眼を名無しの眼無しに奪われていて、隻眼の真っ最中なのだ。
 由良デリコはゆらゆらしているようにみえて、その実、精神はいつも研ぎ澄まされている。ジレットとフェザーとシックが束になってかかっても敵わないほどだ。不用意に由良デリコに触れようものなら指先はすっぱりと切り落とされてしまう。由良デリコはこの現象を「象限ナイフ」と呼んでいるが、象限ナイフによって切り裂かれた傷口からはスライム色の液体がゆらゆらと滲み出てくる。この滲出はとどまることがない。内部、実体、実質がすべて外部に滲みきって露わになるまで。スライム・ジュースは微量ずつしか滲出しないので内部、実体、実質が外部に出きってしまうまでには何十年もかかる。スライム・ジュースがそこそこおいしいのでお愉しみがないわけではないが、傷口を持つ者はきわめて緩慢な死を常に現前に突きつけられた生を生きる困難を抱えつづけることを思えばよろこんでばかりはいられないのもまた事実だ。実際、由良デリコの一閃によって受けた傷が元で猛烈な勢いで脱毛し、消耗し、ついには吉岡ミノールとキダ・ミノールのアイノコにされた者は少なからずいて、彼らは一様にヅラヅラしく物事をズラしまくり、テレビ受像機の位置をズラしまくり、国境線さえズラしまくり、赤坂とお台場をズラしてTBSとフジの視聴率戦争を煙りと鬘に巻き、オヅラトモアキも脱毛もとい脱帽するほどのヅラ猛者になる。
 そのような次第で、由良デリコの神経はいつも、つねに研ぎ澄まされていて、視野視界が半分になった分、聴覚聴力は常人をはるかに超える能力を持つに至っている。しかも、精神神経がぴりぴりと張りつめているので、外部、他者、世界が発する片言隻句を聞き逃すまいとして意識を集中させるものだから、それに応じるかたちで残った隻眼がギロギロと前後左右上下に蠢く。異様な姿だ。
 南蛮伴天連寺の門前の小僧から和泉屋染物店の番頭にまで昇りつめた木下杢太郎が地獄の地下一尺にある穀倉で独立宣言し、誕生したモクモク共和国のラパタータ・マニョーリア大統領がモクモクプカプカさせて禁煙ルームに乱入してきたときも、由良デリコの神経はアスピリン錠を100錠まとめて飲んだのと同レベルのピリピリ具合であり、しかも、前の晩の私とのゆらゆらゆるゆる苦しみ遊びがうまくまぐわえなかったこともあって至極不機嫌だった。由良デリコの大一閃によって国力を半分ほどに殺がれていたモクモク共和国大統領であるラパタータ・マニョーリア女史としては、なんとしても雪辱を果たすと同時に由良デリコに一矢を報おうと虎視眈々、たんたんたぬきのキンタマだった。風が吹く。風がないのにブラブラでも風が吹く。
 
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by enzo_morinari | 2013-07-30 11:03 | ゆるゆる王国 | Trackback

ゆるゆる王国#2 由良デリコとS-F-Pのマキ・サエグーサのエンターザドラゴン

 
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 鼻行類ウォッチングのために訪れた東京都庭園美術館で偶然知り合ったアール・ヌーヴォーデコンストリュクシオン・コンセプシオンが急死して3日目。アール・ヌーヴォーデコンストリュクシオン・コンセプシオンの臼歯を形見としてもらったはいいけれども、その使い道に意識の底部がゆるゆるした。そのような生煮えの意識状況を打開するために青い心の所有者、いつかの代々木のいつかの甲本のベロべろべろを1時間ほど鑑賞してからリンダリンダ・マネーロンダリングすることにした。一人ではアレでソレでコレでメンソーレでメンソールでレーゾンデートルが危うくなってしまいそうなので、由良デリコを誘った。
 由良デリコはいつもゆらゆらしている。ゆらゆらしているけれどもゆるくはない。アスコの具合はキリキリコリコリゴリゴリキュキュである。由良デリコは裸の王様の直系血族だが、そのことは内緒にしたいらしい。由良デリコの口ぐせは Aha! All We Want! だ。

 由良デリコと初めて会ったのは代々木のルースBというシケて難破寸前のライヴハウスだった。その日のライヴはニック100万発分の憎っきゆらゆら帝国とわがゆるゆる王国との異化するタコスバンド天国合戦の最終日であって、由良デリコは隣りの席でひとりぼっちの咳をしながら乳首の席替えと隻眼の洗浄のためのサイケデリックなフラワートラベリンバンダナを頭に巻き、S-F-Pのマキ・サエグーサと一緒にゆらゆらとスインギーにジグリーシマリングスウェイしていた。タテノリともヨコノリともハコノリともフジワラノリカノリともアサクサノリともホリコシノリともちがうエキセントリックなノリ方だった。由良デリコの不思議で風変わりなユラユラノリノリに見蕩れていると、由良デリコと一緒に揺れていたS-F-Pのマキ・サエグーサがマーサー・ガーサー風な笑みを浮かべながらラ王ラオス語で言った。
「ねえねえ、新わらしべシステムにいっちょ噛みしてみない?」
「いいけど、なにかいいことあんの? その新わらしべシステムにいっちょ噛みすると」
「あるあるどころの騒ぎじゃないよ!」
「きみとメイクラヴできるとか?」
「それムリムリ! あたしには穴という穴がないから。ないというより、歌う犬どものための弦楽四重奏好きの宇宙を支配する巨大な意志の力によって封印されちゃってるんだ。あんたは好みのタイプだし、頭もよさそうな上唇と鼻腔をしてるからヤリヤリしたいのは山々なんだけどね。でもさ、ヤリヤリなんかより、もっとイケイケでハフュッフェンで偽物ボブでトヨバーバなことがいっぱいお待ちかねだよ、新わらしべシステムやると」
「オーケイ。じゃあ、大橋巨泉の分と石坂の兵ちゃんの分とシコりに向かっている途中に権田原でジコる前のビトー・タケーシの分も併せて頼むよ。いくら?」
「イクラ? 鮭はカンケーしてねーし。っつーか、ゼニカネかかんねーし」
「なにそれ? タダってこと?」
「そうだよ。新わらしべシステムは精神の空洞を埋めるための道徳律の領域に属することなんだ。早い話が心がけ。わかる?」
「うーん。生長の家とか奉仕団とかインナートリップとかとはちがいがあるわけ?」
「ちがうに決まってるジャン! ジャーン! ポリンスキー♪ ポリンスキー♪ 三枝形のヒミツはね。教えてあげないよ! ジャン!」
「えっ?」
「えってなにが?」
「いや、オチはどこにあるのかなと思って」
「オチ? ジャンがオチじゃん」
「ジャンがオチって言われてもな」
「じゃあ、これでおじゃんね。火焔太鼓の時間だから」
「めちゃくちゃだなあ」
 マキ・サエグーサは火焔太鼓を担いで舞台に駆け上がってしまった。ゆらゆら帝国とゆるゆる王国が壮絶なゆらゆらゆるゆるバトルの最中だというのに。由良デリコは我関せず不条理ゆえに吾信ずとばかりにゆらゆらとスインギーにジグリーシマリングスウェイしている。
 
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by enzo_morinari | 2013-07-30 04:36 | ゆるゆる王国 | Trackback

ゆるゆる王国#1 ぼくらはきょうもゆるゆるに空っぽです。

 
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 昼すぎ、暴走半島小湊からハコノリノリノリで意気揚々と遠征してきた勝海舟烈士が秘書の宍戸留美に申し付けて準備万端させた宍戸錠の失われた頬っぺたを机がわりに江戸城のオケツ会場の片隅でしたためた勝恵子の不倫の子の親権にかかる渾身真剣献身的な和解案である「カツレツ案」に基づいて管内の関内駅前にある勘内ビルヂングの館内放送で勝烈庵が戦艦三笠の艦内に出店する旨のゆるゆるアナウンスが流れたので、取るものもとりあえず偵察に向かったところが、三笠公園事務所にて勝烈庵の一件を問い合わせても「わかんない。わかんない。おれは稚内の出だからなんでもかんでもわかんない」の一点張り。一張羅のISSAY MIYAKEのカツレツ色のだっさいスーツを着た三笠公園事務所おやじのあまりにもなゆるゆるゆらゆらぶりにイライラしていたら、坂本慎太郎がむきだしのメイナード・ファーガソンを脇に抱えて戦艦三笠艦内に突入していった。

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 仕方ないので三笠公園脇の三笠会館別館の入口に聳え立つ全自動洗濯機付き自動販売機でキリン本搾りチューハイのカツレツ味を飲んだ。飲んだ途端に頭がゆるゆるゆらゆらしてきたので、その事態にあえて抵抗しないことに決めてなんとなく夢見心地にゆらゆらゆるゆる揺れながら歩いてやさしい動物たちといっしょに美しい語尾ライター妖精学校へ行ってきますです。

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 当分はまだ生きていると思います。こんなわたしはきっとスプートニクの恋人にふさわしい仮定された有機交流電灯のひとつの青い照明ひとつきりで宇宙を旅するひとりぼっちの人工衛星になることはできないんでしょう。だからカラダのために宝缶チューハイにあしたの朝こそ言ってやろうと思います。「おはよう。まだやろう。もっとやろう。ばかやろう」って。では、彼女のサソリに食いつかれたいたずら小僧の発光体を頼りに行ってきます。ゆるゆる。酩酊。迷彩。低迷。加納典明のバカカバチンドン屋おまえのカーちゃんデーベーソー。ムツゴロウの歯茎はノグチゴロー。

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by enzo_morinari | 2013-07-29 21:10 | ゆるゆる王国 | Trackback