カテゴリ:ガンスリンガー・ガールを探して( 2 )

ガンスリンガー・ガールを探して#2

 
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 女の亡骸を埋めてすぐに崩壊した時間を追いつづける男、蝿の王/ゴールディー・ベルゼビュートがやってきた。
「まただれか死んだのか?」
「そうだ」
「どうした? 人が死ぬのは当然だし、死ぬことなんか、この街では空き缶とおなじくらいにどこにでも転がっている話じゃないか。そんな深刻な顔になるほどのことではないだろうが」
「昔々の大昔に一緒に暮らしていた女だ」
「ほうほう。その話のつづきには崩壊した時間は登場するか?」
「さあね。ひょっとしたら、おまえさんが探し求め、追いつづけている崩壊した時間とやらがみつかるかもしれないな」
 蠅の王が身を乗り出す。
「詳しい話を聴かせてくれよ。話の続きを」
「ガンスリンガー・ガール」
「なに?」
「ガンスリンガー・ガールだ。拳銃無宿のお嬢さん」
「おもしろそうだな」
「つきあうか?」
「ああ。ここのところ、つまらぬ死体ばかりで退屈していたところだ」
「おまえさんらしいな」
「屍体はあるんだがな。死体がない。完璧な死をまとった死体が」
「これから山ほどお目にかかれるだろうさ」
 焚火にかけていた小鍋からドッグフードの空缶で煮詰まったコーヒーをすくい、蠅の王に差しだした。
「ありがてえ」
 蠅の王、ゴールディー・ベルゼビュートが相好を崩して糞まずいコーヒーを飲むのを見ながら、次の一手を考えた。まずは女の遺品をあらためることからだ。
 
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by enzo_morinari | 2013-07-15 18:11 | ガンスリンガー・ガールを探して | Trackback

ガンスリンガー・ガールを探して#1

 
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「ガンスリンガー・ガールを探して」と女は言って息を引き取った。昨夜のことだ。女は骸骨同然に痩せていた。人体の骨格標本に薄皮を一枚かぶせたような有様だった。女の唇は乾いてひび割れ、眼は黄色く濁っていた。女が口を開き、絶え絶えにうわ言のような言葉を吐き出すたびにひどい悪臭がこぼれ出た。女はすでに肉体の中心部から腐りはじめていた。どんなに手をつくそうが悪あがきしようが、もはや女の首を死神が刈りにくるのを止めることはできなかった。耐えがたい悪臭と無惨な姿。女から顔を背けるのを我慢して女を介抱した。クロノスの大鎌を振り上げる死神が間近に迫っているのは十分にわかっていたが、それがかつて愛し、深く傷つけた女への償いであるように思えたからだ。ガンスリンガー・ガールとはだれだ?
 
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by enzo_morinari | 2013-07-15 08:37 | ガンスリンガー・ガールを探して | Trackback