カテゴリ:土曜日のトモダチ( 1 )

土曜日のトモダチは房総半島の突端からSaturdays Surfのスケートボードに乗ってやってくる。

 
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 夏の7月の第二土曜日から8月の最後の土曜日まで、毎土曜、かならず訪ねてくるトモダチがいる。トモダチの名前はスモールフェイス・ビジン・フロム・ケルムスコットアイランドだ。早い話がビッグフェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドの妹である。
 スモールフェイス・ビジン・フロム・ケルムスコットアイランド、スビフケは夏のあいだ、土曜日の朝、太陽が海とつがいながら絶妙な腰使いを始める頃にドアをノックする。スビフケは毎回、ファッションがちがう。出腹問題研究者のポコ・ロッコ・ガルシアーノや失恋美容整形評論家の山本リンダ・ロンシュタットや猛禽類学者のメルセデス・ビバリーヒルズ・イーグルスコットなどのウェストコースト系のときもあれば、ビクトリア町2丁目の栄枯盛衰系のときもあれば、カサブランカの安酒場のオヤジやブラック・マーケットの胡散臭い小ボスや歯列矯正中のイルザ・ラント嬢やシドニーの緑通りなどの時の過ぎゆくままな白い城系のときもある。一番似合っているのはリーヴァイスの深紅の豚タグ付きヴィンテージ・ジーンズ、501ZXXの1954ジッパーモデルを履いてヘインズの幻の白Tシャーツを着ているときだ。靴はもちろん、コンバースのオフホワイトのローカット・ローファット。カントリー・フードの名人、クマ北斗が作る料理のようにこざっぱりしている。こざっぱりしすぎてサッパの大群とフランク・ザッパがエオルゼアの秘法と秘儀と秘技をめぐって4の字固め変形かつ卍固め亜種の荒川修作天命反転固め合戦を始めるほどだ。
「リーヴァイス501ZXXの1954ジッパーモデルが似合うのはあたしだけよ!」と白洲次郎のようなことを叫んでベントレー・ヴァンデン・プラの運転席でふんぞりかえるのが玉にキズだが、それでもスビフケはたいていの場合、周囲を笑いの渦に引きずり込む。笑いの渦に引きずり込まれたことによる死者は百人ほどなので実害はゼロと言っていい。それより重要なのは笑いである。存在そのものを揺さぶり、おびやかすほどの笑い。辛気臭いのはごめんだ。

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 スビフケは房総半島の突端からSaturdays Surfのスケートボードに乗ってやってくる。スビフケはスケートボードの名手でもある。ビッグ・フェイス・ガジン・フロム・アプリコットアイランドがメニエール・ダンスの名手であることとどこかでつながっているかもしれない。血は争えないものだ。
 スビフケは房総半島の突端の漁師町に住んでいる。一緒に暮らしているのはパパス・アンド・ママス・ヘミングウェイこと、アーネスト・オキシキナ・トーゴー爺さんである。パパス・アンド・ママス・ヘミングウェイこと、アーネスト・オキシキナ・トーゴー爺さんは元海兵隊の無線技師の日系アメリカ人にしてキング・カメハメハの直系子孫だ。その太鼓腹は福島瑞穂や田嶋陽子や辻元清美の亡国のヘラズグチさえ噤ませる迫力である。
 第42世界に存在するファンドシエクル銃のすべてはアーネスト・オキシキナ・トーゴー爺さんが手がけたものだ。性能はそこそこだが特筆すべき点がひとつだけある。照星がヒマラヤ矢車菊色のブルーサファイアでできていることだ。ファンドシエクル銃で狙いを定めればたいていの視えない自由を撃ち抜くことができる。だから、第42世界の革命家たちはこぞってアーネスト・オキシキナ・トーゴー爺さんのファンドシエクル銃を欲しがる。ファンドシエクル銃の値段は東京メトロの初乗り運賃と連動しているのできわめて安定しているが、カスミガセキシロアリの害悪によって交付金分が上乗せされるという不条理がある。
 明日はいよいよスモールフェイス・ビジン・フロム・ケルムスコットアイランド、スビフケがほぼ1年ぶりにやってくる。房総半島の突端の漁師町からSaturdays Surfのスケートボードに乗って。熱い風とサッパの大群とフランク・ザッパを引き連れて。ついでにサンバのリズムに乗って。いまからワクワクする。wktkする。スビフケがドアを叩く変則5拍子、テイク・ファイブの音が聴こえるまでデイブ・ブルーベックをずっと聴いていようと思う。
 
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by enzo_morinari | 2013-07-12 18:03 | 土曜日のトモダチ | Trackback