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料理旅団衰亡記#1

 
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ひとつの独創的な料理は千のつまらぬ食料よりも価値がある。 E-M-M


料理旅団旅団長のシェフ・ド・キュイジーヌにしてスメラミコトの料理番、トクーゾー・マンクーゾー=アマヤーキは両手にスペシャリテ・カルテの束をきつく握りしめ、力なくはためくフィナンシェ・トリコロール旗の下の熱く灼けた巨大銅鍋の淵をゆっくりと廻りながら、ただひとつのことを考えていた。

「ピコ・ ココット・アッシュ・ミュエ・アンシェヌマン・パルマンティエの奴めが率いるストウブ戦闘集団とアクサン・シルコンフレクス・コンプレックス特殊戦グループを完全殲滅することが当面のもっとも重要にして喫緊の課題だ。そのために必要なのは本当に優秀な戦闘料理人、勇猛果敢にして底なしの食欲を持つフード・ファイター、キュイジーヌ・ソルジャーだ。こんなとき、奴がいれば。たった一人の料理軍隊、ノボル・クロックムッシュ・カツマータがいてくれれば」

しかし、このとき、大めし食らいとして名高いジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン帝国の尼将軍、ギャル・ソーネ率いる特殊部隊、テレトーチャンネル第12戦闘集団ワタナベシンミサ・エンターテインメント・パッケージ・アザブダイ18105Fの精鋭部隊ギャルルソンヌ・ド・キュイジーヌが背後に迫っていることをトクーゾー・アマヤーキは知る由もなかった。

ベルナール・パコー将軍の先鋒としてオマール戦車隊を陣頭指揮したマーサオ・サーイスがコート・ドール・クー・ド・ブフ・プレゼ英雄料理人勲章を受章した激戦、料理戦史に残る「オーベルジュ・オー・ミラドー・タイユヴァンの丘の戦い」の幕がまさに切って降ろされようとしていたのである。

料理旅団の野営地、シテ・デュ・タン中にソス・ヴィアンドゥの悩ましくも蠱惑的な香りが漂いはじめた。ノボル・クロックムッシュ・カツマータはモン・ハコーネ山中の西洋菩提樹の巨木、オー・シザーブル・ティユールに吊るしたハンモックで午睡中である。
 
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by enzo_morinari | 2013-06-09 10:44 | 料理旅団衰亡記 | Trackback