カテゴリ:真実のピッツァの騎士伝説( 1 )

真実のピッツァの騎士伝説#1

 
c0109850_4204940.jpg


ピッツァイオーロたちが帰り、厨房が静寂に支配される頃、石窯、正確にはネロ・ジ・ローマ窯から真実のピッツァの騎士は現れる。真実のピッツァの騎士の手にはウンベルト1世の王妃、マルゲリータ・マリーア・テレーザ・ジョヴァンナ・ディ・サヴォイア=ジェノヴァより授かった「真実のピッツァの騎士のしるし」がかたく握りしめられている。

「真実のピッツァの騎士のしるし」は中心に19世紀末のナポリのピッツァ職人、ラファエーレ・エスポジトの肖像が描かれ、それを取り囲むかたちで緑と白と赤の縁取りが施されている。ピッツァを愛する者、すべてのピッツァに関わる者、”絶望のパスタ”を食する者でさえ、「真実のピッツァの騎士のしるし」に敬意を払い、「真実のピッツァの騎士のしるし」を持つ者、すなわち、真実のピッツァの騎士を畏敬の眼差しで仰ぎ見る。

c0109850_4211333.jpg

真実のピッツァの騎士はいましも厨房のひとつの棚をあけ、中からシェイカーとカクテル・グラスとテキーラとホワイト・キュラソーとライム・ジュースとサーレ・ディ・ロッチャ・グロッソを取り出した。ピッツァイオーロたちが真実のピッツァの騎士のために欠かさず用意しているものだ。

真実のピッツァの騎士はシェイカーの中に手際よくテキーラ1/2、ホワイト・キュラソー1/4、ライム・ジュース1/4を入れ、最期に「フォルツァ・ピッツァ!」と叫んで懐から出したバジルの葉をシェイカーの中に投げ込む。通常のレシピとは異なる点だ。

優雅さと武骨さのないまぜになった動きでシェイカーを振り、最後にカクテル・グラスをライムの絞り汁で湿らせてからたっぷりとサーレ・ディ・ロッチャ・グロッソをつける。それからおもむろにネロ・ジ・ローマ窯の前に歩み寄り、再度「フォルツァ・ピッツァ!」と叫ぶ。すると、それまで深い静寂を湛えていた厨房が俄に活気だち、ネロ・ジ・ローマ窯にいたっては熟したポモドーロ・コストルート・フィオレンティーノのような色の炎をあげた。

真実のピッツァの騎士は完成したカクテル、「真珠の滴」をネロ・ジ・ローマ窯が発する鮮やかで健やかな炎にしばしかざす。そして、叫ぶ。

CIN! CIN!

そののち、なにごとか呪文のような言葉を二言三言つぶやいてからひと息に「真珠の滴」を飲みほした。かくして、真実のピッツァの騎士の長い夜は幕を開ける。

c0109850_4214327.jpg

 
[PR]
by enzo_morinari | 2013-04-18 04:23 | 真実のピッツァの騎士伝説 | Trackback