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フリフリ#1

 
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 人間が理解していることなど世界や宇宙のほんの一部にすぎない。本物の世界や宇宙というのは人類の科学の理解力をはるかに超えている。 NIJI-QUO

 薔薇の名前がどれほど美しく、香りがいくら馨しかろうと腹は満たされない。『バベルの図書館』が金輪際、人間の知性を満たさないように。 E.M.M.(VERY-LLIUM-BERRY/A-N-4)

 数分で語りつくせるようなアイデアを500ページにもわたって展開するのは労多くして功少なき狂気の沙汰である。よりましな方法は、それらの書物がすでに存在すると見せかけて、要約や注釈を差しだすことだ。この世界は「要約」と「注釈」で必要十分に記述することができる。 JBL-LE-8T(AL-NI-CO)

 古株のフリークエンシー・シークエンシー・フリーターのフリフリはきょうも日がな一日、不吉なチェレンコフ・ブルーに光る襟ぐりのフリルをしきりに弄くりまわしながら古巣の古館プロジェクトに周波数を合わせてイタズラ電話に余念がないのである。古館プロジェクトの本社ビルは古臭さ満載の鉄コン筋クリートのアーキテクチャーであって、アーキテクターの古谷綱正誤氏はアンチ丹下健三を標榜するデコンストリュクシオニストでもあって、隠れ磯崎新フリークである。「バロック、バロック」と触れまわっていた鼻持ち大王である黒川紀章の事務所のあるフラット青山には石坂浩二再襲撃、松任谷由実巡礼のために日参した経験があるので、南青山5丁目界隈は庭も同然である。

 さて、いましも、グリエ寸前のル・コルビジェことシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリをデュシャンの便器までぶっ飛ばし、ミース・ファン・デル・ローエに非在のマグリット・パイプをくわえさせ、フランク・ロイド・ライトの顔面にマッキンリー・モーガンフィールド社製DIC Colorguide No.42-シカゴ・ブルーの泥水で溶いた狂気を塗りたくったことによって俄然勢力を拡大しはじめたピーター・アイゼンマン、ダニエル・リベスキンド、フランク・ゲーリー、コープ・ヒンメルブラウ、ダニエル・リベスキンドらを中心とするデコンストラクチュアル・ギャング・スターズからの親書を手にフリフリが古谷綱正誤氏の事務所をNDCグラフィックス特製の巨大デバイダ「コンマ1mmにこだわる仕事(杉浦康平©)」を振りまわしながらスパイラル・スパイラルしたとき、青山スパイラル・ビルヂングでは「BOLTとNUTSの妖しい関係展」が始まろうしていた。千駄ヶ谷と銀座と横浜北部を股にかける中川ケンゾーはオープニング・スピーチでそのエキセントリックな髪を振り乱して言った。

「私が哲学を志したきっかけはサンドマン、砂男です」

 会場は一瞬にして静まり返った。亀倉雄策までもが東京オリンピック・セメタリーからボブ・ヘイズを従えて蘇るほどの衝撃が青山通りから麹町大通りにかけて走った。
「いよいよだ。いよいよ、中川ケンゾーは高田ケンゾーとのカンケーをカミングアウトするんだ」
 会場の隅で地軸の傾き23.4度を正確に再現しながら地下茎世界の老哲学者、「思考するカンガルー」の異名を持つ葦田博士が言った。葦田博士の口ぐせは「人間はカンガルーの葦田なのだ。芦田信介は死んだのだ。島田紳介は縮んだ知人なのだ」だが、きょうは口にしない。南青山5丁目界隈においては誰にもウケないことを察知しているのだ。周囲の誰一人として笑わないことを。葦田博士の「人間はカンガルーの葦田なのだ。芦田信介は死んだのだ。島田紳介は縮んだ知人なのだ」によって、たいていの場合、室温は2度下がり、翌日、シカゴの穀物市場は暴落する。フラット青山の向かいの超高級マンションの住人である小林桂樹にいたっては毎朝とてもうまそうにホンホッケの干物とセルフィッシュの一夜干しを食べているのだが、ホンホッケをシマホッケにグレードダウンし、セルフィッシュをフィレ・オ・フィッシュにブランド・チェンジするほどである。ことほど左様に葦田博士の「人間はカンガルーの葦田なのだ。芦田信介は死んだのだ。島田紳介は縮んだ知人なのだ」はアンチ・スピリチュアル・ユニティな I Got Rhythm 乃至は You Got a Mail である。
「街の住人たちが言うにはサンドマンは姿の見えない妖精らしい。しかし、私にはサンドマンの姿がはっきり見えた。青白い肌と肌のごつごつした様までもが。サンドマンはサンドウィッチマン砂の入ったずた袋を背負った小さな老人だ。いまの私のようなね」
 中川ケンゾーのスピーチはピクトグラム・ピープルのつぶやきのように無味乾燥につづいていた。会場の誰もが中川ケンゾーの「次の言葉」を待った。東京中のタクシーの提灯が一斉にくるくるくるくる回転をはじめ、目映く輝きだした。「言語の神話的起源」と「神の言語」および「アダムの言語」が中川ケンゾーの口から飛び出すまで1指パッチン(65刹那)だった。
 フリフリの背中に代々木公園フリマのチラシがへばりついているのを誰も知らない。「プリマハムは頑張ります!」という空虚きわまりもないキャッチコピーは Dive to Wine Jingu-Mae のフェイクキッチュ・ウッドテーブルの上の白ワイン、ジャンバルジャンヴィーノの温度を正確に42度下げた。その衝撃はソムリエのタナトゥス電信柱男が驚いて、捌いている最中のブレス鶏の黝い首を天上の高さまで引っこ抜くほどだった。

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by enzo_morinari | 2013-04-11 03:32 | フリフリ | Trackback