カテゴリ:概念の洪水( 1 )

概念の洪水#1

 
c0109850_4295298.jpg

 天命は人間再生のために何度でも反転する。

 ギリシャ大使館のある坂道の途中で天命反転ビルヂングの概念工事に出くわして以来、吾輩の大脳辺縁系ならびに大脳新皮質は概念の洪水で溢れかえっている。概念は次から次へと溢れてくる。養老院孟司博士に相談したが答えは実に素っ頓狂なものだった。

「天命反転だ。諦めるしかない。漱石は諦めて則天去私居士となった。そして、『吾輩は猫である』を書いた。君は『吾輩は犬である』を書けばいい。ディオゲネスの犬でもある君にはぴったりだ。素晴らしい整合性だよ。そんなことより、ザザ虫のいいのが手に入ったんだが、今夜あたり一杯どう? 羅生門で」
「羅生門って南麻布のですか?」
「いや、そうじゃなくて。お酒の羅生門。紀州の」
「ああ。あれはいい酒だ。ぜひ」

 そして、吾輩と養老院孟司博士は薄暗く黴臭い研究室を出て天命反転シティの概念工事42工区の視察に向かった。途中、青山1丁目交差点で流行通行止めに遭い、Uターンしたときに荒川修作の死を知らせるメールが入ったが、もはや心はピクリとも動かなかった。当然、涙も出なかった。「これでやっと荒川修作は阿修羅になれたんだ」と思った。意味のメカニズムをまとった切っ先鋭い紡錘形が世界を貫き、薙ぎ倒してしまえばいいとも思った。天命反転シティ概念工事の遠い太鼓とも弾ける泡とも重金属の大洪水とも思える音が少しずつ近づいてくる。

c0109850_4404986.jpg
c0109850_4312826.jpg

 
[PR]
by enzo_morinari | 2013-03-30 04:32 | 概念の洪水 | Trackback